アーグネス・フスさん ハンガリー出身の陶芸家 IAC国際陶芸アカデミー会員展 大賞受賞「Enchanting Spiral Art – 魅惑のスパイラル・アート -」
銀座ロイヤルサロン1週目
由結: さぁ、それでは本日の素敵なゲストをご紹介致します。陶芸家のアーグネス・フスさんです。アーグネスさんはオリジナリティ溢れる作品で有名。日本国内のみならず、世界的に高い評価を受けていらっしゃいます。アーグネスさんよろしくお願い致します。
アーグネス: よろしくお願いします。
由結: はい、アーグネスさんはハンガリーご出身でいらっしゃり、陶芸家の道を歩まれているわけですが、これに至るまでのきっかけをお聞きしてよろしいでしょうか?
アーグネス: そうですね。陶芸家になりましたが、最初は彫刻家を目指していたんです。ハンガリーでは美術高校には彫刻のクラスがなくて焼き物の選択をし、この道に入りました。でも素晴らしい彫刻家の先生がいらしたので、間違いなかったですね。
由結: とても幸運だったと言うことですね。その後どうなったんですか?
アーグネス: そうですね。大学のほうもやっぱり美術工芸大学の焼き物のクラスを選びました。その時代の焼き物のいわゆる現代陶芸やオブジェなども凄く盛んだったので、ハンガリーの場合もヨーロッパの場合もその時代の彫刻より何か焼き物のほうがオブジェ作りの世界はもの凄く自由だったんですね。それを私も見てやっぱり彫刻家になるには環境が大事だと思い、美術大学より美術工芸大学でも良いかなと思ってそちらのを選択したんですよ。やっぱり焼き物と言うと、海外では日本の現代焼き物も凄く評価が高くて、よく皆さんが日本に勉強なさるように来るんですけれど、私の場合は日本人のアーティストとハンガリーで知り合って、そのきっかけで結婚を機に日本にいたんですよ。
由結: 実はアーグネスさんのご主人様は大変有名な方で、信州版画協会の会長でもいらっしゃり、そして版画家でもいらっしゃる若林文夫さんですよね。お二人は普段はどんな感じなんでしょうか?
アーグネス: そうですね。家にスタジオが両方あって、私のスタジオと主人のスタジオが両方ありますので、真ん中がバトルスペースなんですよ(笑)。
由結: きっと楽しいご家庭なんでしょうね(笑)。お二人がアーティストと言うのはどんな感じなんでしょうね?
アーグネス: そうですね、凄くいい組み合わせだと思いますよ。主人がハンガリーの版画スタジオに招待作家として呼ばれて…銅版画・シルクスクリーンです。版画の色んな種類の今木版画がでもやってるんですね。それで彼がハンガリーのスタジオで制作してる時に、私は他の陶芸のスタジオでシンポジウムに参加していて、彼がそのスタジオに訪ねてきたんですね。そこで出会ったんですね。
由結: まぁ!何か運命をお感じになったんでしょうか?
アーグネス: 私の場合は面白かったんですよね。日本人の作家が展覧会の案内状を持ってきて、私に差し出して、自分を紹介しながら写真を撮ったりして…!私の場合は「仕事したいんですけれど、ほっといてください」と言う感じだったんですけれど(笑)。
由結: ご主人様がアーグネスさんにゾッコンだったと!
アーグネス: そうなんです。1990年のことです。それで、それから彼は毎年ハンガリーに来て展覧会やったりして、それで私はその展覧会に呼ばれて、オープニングなどに行って。そうやって何回も会ったんですね。
由結: そういう素敵なご縁があったんですね!今は活動の拠点が長野でいらっしゃるんですよね。長野での作品作りはいかがですか?
アーグネス: そうですね。自然に囲まれて、長野と言うとハンガリーと気候もかなり似てて、私はハンガリーで大きな川がドナウ川と言うの知ってる思うんですけれど、その川沿いにあるモハーチの生まれで、それで日本には長野でも千曲市にある温泉町に住んでて、山があって川があってとてもいいところですね。
由結: わぁ、素敵ですね。そんな環境もきっと作品に反映されてるんだと思うんですけれども、アーグネスさんの作品は一度見たら忘れられない、独特の世界観がありますが、どうやってお作りになってらっしゃるんですか?
アーグネス: これもまた凄いきっかけでした。1993年に日本に来て、もうその時既に有名なヨーロッパのオランダにある“ヨーロッパ陶芸ワークセンター”で私は作品を三ヶ月間作成しました。その時、独特の技法に気付いて、そこから作り上げた”渦巻きの世界”なのです。
由結: “渦巻き”ですね。この帯状のものが何層にも重なってとても流線的な美しい姿をしてるのですけれども、何か作る時は普通とは違う作り方なのですか?
アーグネス: そうですね。想像しやすく言うと、うどんを手で振って伸ばしてるような感じなのですね。帯状に幅広く板状に作った土を必要な幅に切って、それを手で持って振ってテーブルの上にまた落とすと言う感じです。そうすること粘土の中の構造が変わって、凄く弾力がありながら長くて細くて丈夫な160cmぐらいの長い土の帯になるんです。
由結: 160cm!
アーグネス: そう。手で持てるくらいの。もっと長くできるんですけれど、一応手で持てるぐらいの長さは150~160cmぐらいですので、それが形を作るベーシックなのですよ。それがベースにあってそこから形作りに入るんですね。
由結: なるほど。随分変わった作り方だと思うのですが、このような技法は、何かインスピレーションで湧いてきたんですか?
アーグネス: そうですね。実はこの伸ばしてる時に土の表面が凹凸が自然に浮き上がって、それでこの技法の時点では、昔から結構使われている表面の構造に使われてる技法なのですけれど、このザラザラ凹凸があって、これが凄く斬新なものなのです。これをその形のベースになることが私の発見です。これが長い帯にして既にこの色と模様があって、そこから形を作るのが私の独特の技法ですね。
由結: なるほど。きっとリスナーの皆さんも「見たい」と思ってらっしゃるかた多いと思うんですけれども。アーグネスさんの展覧会がありますよね?それについて教えて頂けますか?
アーグネス: そうですね。東京でも日本全国色んなところでやりますけれど、一番近いのは今年の12月13日から一週間、「長野東急・4階の美術サロン」で私の個展があります。それで更に来年東京・新宿の「柿傳ギャラリー」でなんと七夕の時、7月7日。覚えやすいでしょう?
由結: 7月7日だそうです。来年ですね。西洋と東洋のものの感覚が融合されている素晴らしい作品、ぜひ皆様ご覧になって頂きたいと思います。ではアーグネスさん、もう一言最後にリスナーの皆さんに向けて何かありましたら教えて頂けますか?
アーグネス: そうですね。よく私の作品を初めて見る人によく言われるんですけれど、「これは何ですか?」と。「これは土ですか?」「皮だと思った」「紙だと思った」「布だと思った」とかと言われてるんですけれど、土でつくったこのような作品を皆さん見たことがなくて。ところがこれは本当に土でしかできない、土でならではの独特な発想なんです。是非生で見て手に取ってもらいたいですね。
由結: 実は来週もアーグネスさんに出て頂けると言うことですので、更に深いお話を伺っていきたいと思います。本日はありがとうございました。
アーグネス: ありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン2週目
由結: さぁ、それでは本日の素敵なゲストをご紹介致します。陶芸家のアーグネス・フスさんです。アーグネスさんには二週目ご登場頂いております。アーグネスさんは最近ですけれども、素晴らしい賞をお取りになってらっしゃいますね。ご紹介してよろしいでしょうか?
アーグネス: はい。お願いします。
由結: IAC国際陶芸アカデミー会員展の、なんと大賞を受賞されたと言うことなんですが。この“IAC国際陶芸アカデミー”と言うのはユネスコ唯一認可していると言う素晴らしい団体ですよね。この賞を取られた時のご感想はいかがでしたでしょうか?
アーグネス: いやもう本当に驚きました!こんなステージで大賞を取れるなんて本当に夢にも思わなかったですね。
由結: アーグネスさんはいつも作品を作るときにどんな想いを込めてらっしゃるのですか?
アーグネス: そうですね。日用的な作品から大きなオブジェまで皆作っていますので、例えば、器で言えば、季節感や用途を考えたり、酒器や花器、茶器であったりなど様々な器の種類があります。どんな人がどんな時に、どんな用途で使うのか…それを考えながら作っていますね。
由結: なるほど。アーグネスさんは多岐にわたる作品をお作りになっていらっしゃるんですが、先程茶器と仰ったのですけれども、茶道の様々なお道具も作ってらっしゃいますよね。
アーグネス: はい。茶器とか水差しとかお茶碗とかも作ってます。“現代茶陶展・織部の心”という、多治見でよく企画されている展覧会に、実は日本に来て次の年から私は作品を送り、ほとんど毎回参加しています。かなり大変な展覧会で入るのも難しいのです。おかげさまで、最近の何回か賞もらったことがあって、とても嬉しいことですね。
由結: そうですね。先程水差しと言うふうに仰ったんですけれども、水差しも茶道の家元の方がお認めになって実際にご購入なさったりされてるそうですね。
アーグネス: はい。おかげさまで。水差しと言うと二回も賞をもらってるんですけれど、その中の一つの”波紋水差し”。これは私がまさに私の今の作風の原点になった”渦巻き”のオブジェを是非この世界にどうにか表現したいと言う気持ちがあって、この2016年に賞もらったんです。この“渦巻き”の、オランダで作った直径1mの渦巻きの出番だったわけです。
由結: へー!そうなんですか。直径1m!
アーグネス: 大きなオブジェの作品をお茶の世界に表現しようと思って、“波紋水差し”を作りました。水差しの上の部分が“渦巻き”になっているんです。
由結: これは斬新ですね。
アーグネス: 林屋晴三先生が現代茶陶展の審査委員長務めた時の作品が賞もらって、そのあとでその先生が自分でも買い求めて茶会に実際に使われたんです。
由結: アーグネスさんの作品は、“西洋”と“和”の文化が融合されたものだと思うんですけれども、最近の作家さんと言うのは“和の文化”と言うところに系統してる方も多いのでしょうか?
アーグネス: そうですね。今回賞を頂いたきっかけで参加したIAC国際陶芸アカデミーの、台湾・台北で行われた国際会議のテーマが、まさに“今の東洋の影響”でした。この時のメンバーが参加した大きな展覧会があって、その時私はこの波紋の大きな作品、直径50cmのオブジェを改めて作って、このテーマに合わせて作った作品が賞もらったんです。
由結: 素晴らしいことですね。そしてアーグネスさんご自身は、この国際会議でもプレゼンテーションなさったのですよね。
アーグネス: そうです。私を含めて他の3人。全部で4人のハンガリー人の作家さんがこのプレゼンテーションで紹介しました。その皆さんが日本に来られたことがあって、日本に影響された作品が現れているんです。こうやって日本の文化が更に世界中に広まっているんです。
由結: 素晴らしいことですね。アーグネスさんはその他にも数え切れないほどたくさんの賞を受賞されてらっしゃり、作品も様々なものがあると思うのですけれども、心に残っていることはおありですか?
アーグネス: 私は日本に来て25年。この素晴らしい日本の焼き物の文化の上でその他の”茶道・華道・酒器”などそれぞれの文化の中で、手作りの焼き物が使われて、凄く豊かな世界なんですね。私も日本に来られてとても恵まれていると思っています。
由結: 実際に手に取ってみたり、あるいはお家に飾ってみたり、公共の場などでアーグネスさんの作品を見た方は、どんな感想をお持ちなのでしょうか。
アーグネス: 例えば花の飾り方が、日本とヨーロッパとではかなり違います。日本で一番感じたのは、例えば一輪挿しやその自然の土で作ったその花瓶。日本の和室では、一輪挿しを置いておくだけで、自然と調和していることを感じることが出来る…それが本当に体に染みるんですね。
由結: そうですか。アーグネスさんの作品からは、何かそういった自然とか宇宙観とかそんなものを何となく感じるんですけれども。
アーグネス: 嬉しいですね。
由結: そういう感覚をアーグネスさんご自身もいつもお持ちなのでしょうか?
アーグネス: そうですね。そういうこと意識しながらやってるわけではないですけれど、やはりプロセスが凄く大事なんです。だから焼き物が、特に私の作り方だと、繰り返し粘土を帯状にして長い帯作ってそこから形作りに入ること。まさそのプロセスがとても重要なんですよ。しかも土の発想が凄い自然に現れて、その中に私が作業しながら”自分が宇宙の中に存在してること”を実感しながらできるので、そういう感じなんですね。
由結: 「プロセスが大事」と今仰ったのですが、”多摩美術大学”の美術館でも催しがあったそうですね?
アーグネス: そうですね。今年は色んなことが凄くあって、どこから話したらいいか本当に長いのですけれど、この多摩美術館でやったきっかけと言うのは、ムオグラフィーと言って見ると素晴らしい実感ができるのですが、このきっかけで私がそこでインスタレーションを作ったんですね。そのインスタレーションの時、作品があってその横にスライドショーが流れて作曲家さんに私の作品の作業の音を録音してもらい、そこから音楽を作って頂き、その音楽がそのインスタレーションの時に流れながら、私が更に現場でも作品を作り続けたんです。
由結: 凄い。その空間全てがアートと言う…!
アーグネス: そうなんですね。
由結: もうお客様は皆さん感動なさってたんじゃないでしょうか?
アーグネス: そうなんですね。もう間近でどういうことが起こるのかと。凄く感動なさったのですね。
由結: その模様も動画などで見ることは出来るのでしょうか?
アーグネス: はい。YouTubeにアップしています。
由結: 是非皆様ご覧になって頂きたいと思います。アーグネスさんのこの情報と言うのは一番何で検索して頂くと出てきますか?
アーグネス: そうですね。ホームページもあるんですけれど、長い間ご無沙汰してて、そこはあんまりいじってないですけれど、FacebookとかInstagramとかYouTubeに結構フレッシュな情報が出てますので。
由結: では是非皆様チェックなさってみてください。それでは最後にアーグネスさん、何かもう一言ありましたらお願いできますでしょうか?
アーグネス: そうですね。日本では手作りの焼き物が色んな分野に出てますので、それは是非大事にしてほしいです。それで毎日手作りの焼き物を楽しんで頂けたら、とても生活が豊かになると思います。文化を大切にしてほしいですね。
由結: 素敵なメッセージをありがとうございます。アーグネスさん、2週にわたりましてご出演頂き、有難うございました。
アーグネス: こちらこそ、有難うございました。
プロフィール |
ユネスコが唯一認可しているIAC国際陶芸アカデミー会員展で大賞受賞! 1990 モホリ = ナジ国立美術工芸大学陶芸科修士課程修了/ハンガリー、ブダペスト |
新着情報【止め石プロジェクト/アーグネス・フス】
止め石は茶の湯の世界では道標の役割を果たしています。
止め石が道に置かれると、先には進んではいけないという意味になり、
茶席に招かれ た人々は別の道を進みます。
止め石は拳大のただの石なのですが、その石に十文字に棕櫚縄をかけることで、まったく異なる意味を持つよう になります。 石は大きなものではありませんけれど、静かに訴えているのです。この先に行って は駄目よ、と。
私は止め石を敢えて大きなサイズで作りました。あたかも化石に太いロープ を巻きつけたような形で。小さな止め石が禅の庭にあれば、 気が付く人は 多いでしょう。
しかし日常の世界に小さな石があっても、気づく人はおそらく いないのです。
私は止め石の持つ意味を世界に広げたい。形は大きく、秘められた 叫び を多くの人に 訴えます。 止まれ!
このプロジェクトを2019年から始めました。
しかし2020年に 思いもよらないことで すべての 発表が不可能になりました。
イメージしてみましょう!