クリヤ・マコトさん アレンジャー コンポーザー「音楽・・・それは、解放の瞬間」
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クリヤ・マコトさんプロデュース“さかもと未明3rdアルバム『Moulin Rouge』”発売記念ライブ
由結:本日のテーマは『稀代のジャズミュージシャン、クリヤ・マコト氏の感性の源に迫る』というタイトルでお送りしたいと思います。本日のご出演、まずはさかもと未明さん!
さかもと:はい。よろしくお願いします。
由結:はい。そして、クリヤ・マコト先生!
クリヤ:はい。よろしくお願いします。
由結:さあ、10月23日、もうご公演が迫っておりますけれども、いかがでしょうか。クリヤ先生からお聞きしましょうか。
クリヤ:10月23日、さかもと未明サードアルバム『Moulin Rouge』発売記念ということで、新宿の紀伊国屋サザンシアターで大々的にコンサートをやるっていうこと。すでにソールドアウトになってしまって。
さかもと:スーパーミュージシャンが集結です。私はともかくとして、もう本当に私なんかのバックやってもらって申し訳ないんですけど、クリヤ先生を始め、納浩一さん、藤井学さん。
クリヤ:そして、オンラインの出演として、ミシェル・ルグランの息子さん、バンジャマン・ルグラン!
世界に通用するグローバルミュージック
由結:もう錚々たる面々の登場!あっという間にソールドアウトということなんですけれども、先ほどお聴きいただいた『チュニジアの夜』。新しいアルバムの収録曲ですが素晴らしいですね!
さかもと:この『チュニジア』はスーパーヒットでしたね!先生どうですか。出来がわりといいって言っていただいたんですけど。
クリヤ:いやもう…とにかく人に受け入れられようと思って何かをやるってことは僕はしてないので、それよりも、とにかくこう、楽しんでもらうために何かを作っていこうとしか思ってないので、たまたま人と同じだったらそれはそれでいいけど、大体は違うものがアウトプットされますね。人間みんな違うわけですから、当然アウトプットは違って当たり前だと思うんですけど、やっぱり僕には僕のそういう音楽を作る。まあ、アメリカにずっと長かったんで、その経験から。で、最近は未明ちゃんもそうですけど、グローバルに活動してますからね。今はたまたま日本から発信している、と。
さかもと:世界に通用するグローバルミュージック!
クリヤ:うん。よく、あなたにとって音楽はなんですかとか、ジャズとはなんですかとか聞かれるんだけど、とくにジャズっていうものはやはりカテゴライズすることではなくて、やっぱりなにかこう、自由な音楽であるとか、グローバルな音楽と言えるんじゃないかな。
そういう意味では非常にボーダレスというか。僕は、元々ボーダレスなことをやっているし、今コロナで大変ですけど、平時のときは海外にいるときもかなり多いですからね。公演をやったり、いろいろ製作をしたりとかいうことがあるんで、そういった部分で、本当に未明ちゃんと芸術に対する感覚が似てるんだよね。
さかもと:光栄です。
クリヤ:自由に向かっていくという部分。それがやっぱりなかなかこういう資本主義の中で、マーケティングでアウトプットされてるところでは、なかなか見えにくかったりするんですけども、そういったことをやっぱり根本的に変えなきゃいけないって思うんです。僕は元々生活が困難で社会の底辺にいる、主に黒人及び有色人種の方々とともに、音楽を全く無学無教養のベーシックなところでやってきてましたから…。
さかもと:そう。クリヤ先生は、アメリカで、言語学のために留学されながら、ジャズピアニストとして、本当の友だち関係の中で体で獲得されて帰ってきた方なので、やっぱりスピリットが違うんですよ。
由結:なるほど。
何度も作り直した曲
さかもと:今回の『チュニジアの夜』に関しても、全てのアレンジがそうなんですけど、今まで誰も聞いたことないようなのを作ろうねっていうことで、この『チュニジアの夜』に関しても、ほかの曲に関しても、何回か途中まで作って「全部やめよう、作り直し」って言ってゼロに戻した曲、いっぱいありますよね。
クリヤ:うんうん。そういうのもありましたね。
さかもと:この『チュニジアの夜』なんかも、何回も何回も、「もうちょっと違う、もうちょっと違う」って言って作り直して、最後出てきたのが、「先生、これしゃべれないですよ」っていうぐらい早くて、いじめ?みたいな感じで。でも私は認めてほしかったから、私、先生が絶対びっくりするぐらい練習して、これ完ぺきにこなそうって思ってたんで、先生はリテイクのためにスタジオもう1日押さえてたんですよ。でも私1回で意外と早く済んだでしょ。
クリヤ:うん。ものすごくスタディしてくるっていうか、まあ、未明ちゃんと僕の製作における関係性っていうのはやっぱりシリアスなところにあるから、それぞれが命張って、体張って、命と交換にしてやるぐらいのつもりでやってこなきゃいけないっていうところがあるので真剣勝負ですよ。そういうリクエスト、いちいち口うるさくリクエストなんかしないけど、ちゃんと今回のレコーディングでは応えてくれたしね。これで3作目なんですけど、歌も声もどんどんブラッシュアップしてきてるし、本当、手前味噌ですけど、今回のアルバム、今日もまた聴いてみて…
さかもと:すごくよくできたと思う!
クリヤ:うん。手前味噌ですけど、馬鹿みたいにいいですよ、これ、本当に。
由結:素敵!皆さんに手に取って頂きたい!
さかもと:はい。一番最初のアルバムは、「私なんかが歌っちゃってごめんなさい。先生に下駄履かしてもらって作らせていただきました」って感じなんですけど、今回は自信を持って皆さんに聴いていただきたいです。
クリヤ:うん。
命を懸けて真剣勝負で臨む
さかもと:私たちも5年っていう時間をかけて、納得いくまで作りましたから。でね、実は先生は怖いんですよ。
クリヤ:その話になるかな(笑)
さかもと:1回目のとき、もう私がスタジオのとき忙しくて、歌詞覚えてこれなかったんですよ。見ながらいいやみたいな感じで行っちゃったら、怒られちゃって。「俺がどれだけ真剣にやってると思ってんだ。今だって世界中で天才と呼ばれる人たちが素晴らしい音楽作ろうと思ってみんな命を懸けてる。そういう仲間に入ろうって言うんだったら、そんな中途半端で来るんじゃない!」とか言って怒られちゃった。
クリヤ:(笑)。
由結:ああ、それは。胸に刺さったでしょうね。
さかもと:そのぐらい真剣にやってくれてるんだと思ったとき、私も応えよう。だから今回の『チュニジアの夜』も先生がボールを投げてくれたとき、私試されてると思って、でも先生は本気でボール投げてきたって思ったから、私も本気のバッティングで返して、ちょっとびっくりしてもらおうと思って、すごい練習しました。
クリヤ:もちろんそうしました。でもね、お互いを試しあうことが目的じゃないんだ。
さかもと:そうそう。
クリヤ:意地悪をすることでもないし、あとは人と違うものを、作品を作るからって、別に奇をてらったものを作ることも、そういう特異なことをするわけではなくて、そこにはバックボーンになってるものがある。
影響を受けたアメリカでの黒人との生活
僕の場合はアメリカでの黒人との生活。昔から分断されたアメリカなんですけど、負のアウトプットであり、かつ、それがアメリカが世界に誇るジャズ、ブルース、R&B、ヒップホップ…全てなんですけども、そういった中にある生命力かな。やっぱり彼らは彼らで命と引き換えに真剣勝負でやっている。例えば、ラッパーもね、誰だって楽器ができなくたって、そういうラップやってるような人たちも一生懸命やってる。それがやっぱり彼らの苦しい人生の解放の瞬間になるわけですよ。
僕はそこを通じて、10代からそういう音楽人生歩んできたから。僕自身、音楽大学出てないし、今はオーケストラもすべて作りますけど、それも全部独学でね。「できますか」って聞かれたら、「多分できますので頼んでください」それから勉強しはじめる。何か本読んだりね。
さかもと:私も同じですよ。まずやりたいって気持ちがあって、だから私のこと受け入れてくれたと思うんですけど、私も未だに楽譜とか読めないですし、自分が歌ってる曲が、キーなんなの?って言われても、えっ、わかんないみたいな人なんですけど、でもそういうことよりも、ハートを持って、その歌詞をアウトプットできればそれでいい。芸大出てるとか音楽学校出ましたっていうことは…。
クリヤ:関係ない。
さかもと:そんなことよりもっと大事な本質的なことで音楽に関わってくれれば、僕は支えになってやるよっていう、先生はそういう方。
クリヤ:そう。
曲作りにあたって心掛けていること
由結:いや~本質を常に追求しているお二人。これからの発信がますます楽しみです!クリヤ先生は物事を革新しながら、作品をずっと作り続けていらっしゃいますが、例えば曲作りにあたって心掛けていらっしゃることはどんなことですか。
クリヤ:まず一つに、直感を働かすことですよね。心掛けるっていうのはね。その直感っていうのは、今の自分の姿そのものなので、直感を働かすためには、あらゆる経験が必要。要するに、さっき自由って言いましたけど、音楽は解放の瞬間であり、自由に対する欲求みたいな部分でなきゃいけないと僕は思ってるんです。そういう路線から外れるものっていうのは、僕からすると音楽じゃないんです。
要するに、結果的に売れたって音楽があるけど、売る音楽ってのもあるし、売るための音楽ってのもあるし、それももちろん必要。僕もテレビの番組いろいろやってるので、日本の歌謡曲、ポップスもいろいろやってきたし、作曲もやってきたけど、最後に残るのは、100年聴けるアルバムです。そういうものを作らないと駄目ですよ。僕はそう思う。
だから考えなくても直感で出てくるぐらい、常に自分を磨いておく。磨くってのは、別に、スポーツ的なことじゃなく、もちろん音楽もスポーツではあるんですけども、なんかこう、常にアンテナを張ってね、そういうセンシティブにやっていくこと、ミュージシャンの場合も、本当に未明ちゃんの作品、個展開いたらもうすぐ買いに来て、いろんな著名な方がすぐ買いに来る。もう本当に評判いいんですよ。
さかもと:ありがとうございます。真剣にやったときって、絶対みんな応えてくれますよね。先生ともマーケティングありきじゃなくて、我々はどうしても伝えなきゃいけないこと。死ぬときにこれやっとかなきゃっていうことをとにかくやろうって。それが相手に伝われば一番幸せですし、ましてこういう時代じゃないですか。学校行けないとか、お金がないとか、出会いがないとか、いろんな苦しさの中にみんないると思います。でも本気でやったら必ず何か返ってくるし、恐れることはないし、学歴とか親の力とか、全然関係ないですね。
クリヤ:その通り!
さかもと:関係ない。我々はアーティストとして、そういうことをみんなに伝えていける。元気を皆さんにお伝えしたい!
クリヤ:そうだと思います。
由結:強い信念!魂の言葉を聞かせていただきました。素敵なお話ありがとうございます!さあ、ということで、10月23日の公演、とても楽しみです。いろいろ配信もしていかれることと思いますので、楽しみにしております。
クリヤ:ありがとうございます。
さかもと:ありがとうございます。
由結:ありがとうございました。
クリヤ・マコトさんのプロフィール |
ウェストバージニア大学にて言語学を学ぶ傍らアメリカ各地で活動、多くのジャズの巨匠と共演。これまでに20枚のリーダー作を発表。現在は自己のリーダーユニット「アコースティック・ウェザー・リポート」を中心に活動。常にワールドワイドな活動を展開している。 While studying linguistics at West Virginia University, performed across the U.S. with many famous jazz musicians. He has put out 20 albums with bands as the lead artist. He currently is performing primarily with his own band “Acoustic Weather Report” and is active across the globe. |