プロカメラマン ムトー清次さん「控えめに図々しく」
目次
銀座ロイヤルサロン1週目
控えめに図々しくをモットーに
由結:さあ、それでは本日の素敵なゲストをご紹介いたします。プロカメラマンのムトー清次先生です。よろしくお願いいたします。
ムトー:よろしくお願いします。
由結:ムトー先生、本当に今日お会いできますこと楽しみにしておりました。ムトー先生はカメラマンとしての歴史が本当に長く、ムトー先生のカメラマンとしての歴史がそのまま日本の芸能史と言えるような先生でいらっしゃいます。25歳で集英社の別冊明星の契約カメラマンとしてスタートして多くの雑誌に関わり、そうそうたる芸能人の方々を撮影してこられました。本日はそのお話を伺っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
ムトー:よろしくお願いします。
由結:ムトー先生にお会いすると、本当にいつも笑顔がまず印象的だなという感じがするのですが、何か心がけてらっしゃることがあるのですか。
ムトー:いや、やっぱり大した顔じゃないから笑ってるほうがいいんじゃないかという(笑)。
由結:もう本当に錚々たる著名人の方々を撮影していらっしゃる先生ですが、例えば立川談志師匠の多くの写真を、ムトー先生がお撮りになっていたとお聞きしています。
ムトー:いやいや。もうほかの人もたくさん撮りにきてますし、いろんな人の中で同じ生まれ年ということもあるし同年配ということで心許してくれたのかなとも思っております。
由結:そうですか。いつもお撮りになるときにその方と本当に深いところまで入っていくような、そういう印象を持っているんですけれども、それに関しては何か心がけていらっしゃることはあるんですか。
ムトー:いつも言うことですけれども、タレントさんと1対1で写真を撮るときには、やっぱり控えめに図々しくという、これをモットーに撮ってきたかなという感じはします。
由結:そうですか。控えめにと図々しくというのは真逆ですよね。
ムトー:これは両立しないんですけれども、それを両立させながら撮ってきたつもりです。
由結:そうでしたか。両立させるのは難しい気がしますが、どうやってそのバランスを取るのでしょうか。
ムトー:やっぱりここ一番撮らなきゃなんないという瞬間があったときには、もうなにがなんでも遮二無二撮るという、そういう心がけは持ってたほうがいいんじゃないかな。それでなんでもないところは流して静かにしてたほうがいいかなというね。
由結:どうしても人間は相手に気に入られたいという気持ちがあったりすると、ちょっと相手に媚びてしまったりみたいなところもあったりすると思うんですが、そういうところは先生はどのようにお考えなんでしょうか。
ムトー:まず媚びず、ヘラヘラせずお付き合いしたほうがいいんじゃないかなと僕は感じます。
由結:多くの芸能人の方々が、先生と裸のお付き合いをされていたそうですね?
ムトー:まあ、それは裸のお付き合いできれば一番いいんだけれども、男優さんなんかの場合、男のタレントさんの場合は一緒にお風呂に入れる仲になるほうがとりいいよっていうのは僕は感じております。
由結:そうなんですね。でも一緒にお風呂に入るってかなりハードルが高いような気がするんですが。
ムトー:ええ。なかなかそういうチャンスがないんだけれども、例えば俳優さんなんかだったらロケーション行ったりしたら、ロケ宿かなんかで一緒になるわけですから、「一緒に風呂入ろうか」っていうぐらいの感じでいたほうがいいなという。
錚々たる著名人とのエピソード
由結:なるほど。先ほどご紹介した立川談志師匠も本当にこう気持ちを許していたというようなことをご著書でもおっしゃっていますね?
ムトー:まあ許してくれる風を装ったのかもしれないしね。それはわかんない。
由結:そうですか。例えばほかにもたくさん、渡哲也さんですとかお名前出てくるんですけれども、石原裕次郎さんに関してはいかがでしたか。
ムトー:裕ちゃんっていうのは、これはやっぱり全てのタレントの中で一番心の広いというか、心の大きい人だなというのを感じました。
由結:どういう点でそんなふうに思ったのでしょうか。
ムトー:まず人の悪口は言わない。それで「ここは嫌だ」
とかそういうことも言われたことはないな。写真を撮ってて「ここやめといて」なんていうのはあんまりなかったですね。
由結:じゃあ本当に自然体でずっと撮られるままみたいな感じだったんですね。
ムトー:そうですね。自由に撮らせてもらえたような気がします。
由結:そうでしたか。逆に言うと、タレントさんにとっては、いろいろ「ここは撮らないで」ですとか、注文がある場合もあるんですね。
ムトー:一番あれなのは、テレビ局でひばりさんを撮ってたんですよ。そしたら急にカメラの前が真っ暗になるんですよ。そしたら大マネージャーのお母さんがカメラの前に手をスッと出してるわけ。だからここはひばりさんにとってはいい顔じゃないよっていうのをお母さんがよく知ってるんですよ。だからちゃんとカメラマンの動きを見ながらコントロールしてたんだなと思います。やっぱりこんなマネージャーはそうはいないですよ。
由結:もう絶妙なタイミングで手が入ったんですね。
ムトー:そうですね。
由結:なるほど。そういうケースもありつつも、裕次郎さんの場合はもう自然に撮らせてくれていたと。
ムトー:そうですね。もらったような気がします。
由結:ちなみに、渡哲也さんはどうだったんでしょうか。
ムトー:渡さんも裕ちゃんとの付き合いの中での渡さんですから、もう渡さん自身は裕ちゃんにいろんな意味で絶対服従的な感じの方ですから、裕次郎さんと親しい人だということだけで全てを許してもらえたような気がします。
由結:そうですか。やはり石原裕次郎さんを「裕ちゃん」
と呼ぶところがまずすごいなと思います。
ムトー:ええ。僕、一度、石原プロができてからは、裕ちゃんにみんな「社長」っていうんです。だから「僕もやっぱり社長って言ったほうがいいかな」って裕ちゃんに言ったら、「いや、今まで通りでいいじゃないか」っていう返事はいただいたつもりです。
由結:そうなんですね。やはりそこではもうずっと培ってきた絆というものがあるんでしょうね、きっと。
ムトー:そうですね。今やっぱり裕ちゃんって言える人はあんまり世の中でいなくなったかなっていう気はしますけどね。
由結:そうですよね。その時代の先生が歩いてこられたことがひしひしと感じられます。ほかの役者さんとも、石原裕次郎さんや渡哲也さんのように近しい間柄だったのですね。
ムトー:そうですね。僕はスタートが『明星』という雑誌でしたから、都はるみさんなんかはまだ未だに「明星さん」って言われる。
由結:そうなんですか。「明星さん」、『明星』の代名詞というような感じだったんですね。
ムトー:そうですね。『明星』っていうのは芸能誌ですから、とにかくその当時の売れてる方は皆さん撮影の対象になるわけですから、いろんな歌手の方とか、ほとんどの人を撮らせていただきました。
由結:例えば、渥美清さんも特集を組んで撮られていると思うんですが、なんでも渥美さんの珍しい写真などお撮りになったとか。
ムトー:はい。渥美さんはどっちかっていうとプライベートは撮らせたくないというお気持ちがある方のようでしたけれども、僕にはいろんな場面を平気で撮らせてもらえたなと思います。体に傷があるんですよね。ですから、お風呂の場面なんかは撮られたくないっていうのが多分あったと思うんですけれども、それも一緒にお風呂の場面も撮らせてもらったりしてました。
由結:自分がちょっと気にしてるところなども撮らせていただけるってすごいことですよね。
ムトー:そうですね。それをもう見せてもいいわという覚悟というか、そういうのを感じて撮らせてもらえたっていうのはカメラマン冥利に尽きるという気はします。
由結:そうですか。やはりいろんな方々にお会いしても、やはり普通の表面上ではなくてグッと奥まで入り込んでいくという、これはもう先生ならではですね。昔からそうだったのですか。
ムトー:はい。僕はできるだけ格式ばったお付き合いじゃなくて、なんていうのかな。平気でなんか玄関開けちゃうというかね。
由結:えーっ。それはすごいことですね。
ムトー:はい。そんな感じで撮らせてもらったような気がします。
上皇陛下とのエピソード
由結:芸能人の方だけではなく、上皇陛下とも二人きりの空間があったとお聞きしましたが。
ムトー:はい。上皇陛下が皇太子時代に、まだ美智子さまとお付き合いしてる段階のときにお話をさせていただきました。それでマイクロニッコールができた当座でハゼの脳みそを撮りたいっていう話がありまして、それでハゼの脳みそを撮るのにどうしたらいいだろうというようなお話がありまして、東宮御所へお伺いして、一時間二人きりでお話をさせていただきました。
由結:一時間も!どんなお話の展開になったんですか。
ムトー:それで僕なんかはとにかく国体に行ってご挨拶するだけの方みたいな、そんな印象を持ってお伺いしたんですけれども、とにかくそういう予算的なことだとか、そういうことを丹念に丁寧にご説明されました。だから今年度の生物学の予算では、当時で40万円予算があるんでプレパラートだとか、それからハゼを飼ってるためのハゼのお金だとかそういうのを年度前に予算化するんですって、そういうことまできちっと説明されました。僕たちはそういうお金のことなんて、そんなことを聞けるなんて思ってなかったんだけれども、それをきちっとご説明いただきましたね。
由結:そうなんですね。費用についてももうきちっと把握してらっしゃったということなんですね。
ムトー:はい。だから帝王学というか、そういうのは我々なんかのしつけなんかを超えたすごい教育をされてるんだなというのを感じましたね。
由結:なるほど。そういったお立場の方に、そもそも先生がお若いころにそこに行くことができたというのは、何かきっかけがおありだったんですか。
ムトー:ええ。それは近所のカメラ屋さんがちょうど東宮御所の近くに富士写真カメラっていう写真屋さんがあったんですよ。そこへ殿下の写真だとかなんかをDPEっていう現像するのがあるでしょ。それを頼まれてたんです。そこの親父さんがそういう説明してくれないかなと言われてて簡単に引き受けたんだけれども、いざ皇太子さまとお話する段になったら、「ちょっと俺行けないからお前行ってこい」って言って、それで行かされたわけです。
由結:まぁ!自分が行けないからというので、それを若き日の先生に振ろうという、そういうふうに見込まれたということですよね。
ムトー:それもその親父さんに信用されたのかなという気持ちもあってお伺いしました。
由結:緊張しませんでしたか。
ムトー:僕あんまり緊張しなかったですね。
由結:そうなんですか。へえーっ。
ムトー:全然緊張しないってことはないですよ。生物学研究室っていうのは東宮御所の中にあるんですけれども、その中へ入っていくときなんかはやっぱり緊張したけれども、なんか殿下の洋服にフケが溜まってるのを見て、「あー、人間っぽくていいな」なんて感じました。
由結:なるほど。かなり冷静に周りを見渡していたという感じですね。
ムトー:そうですね。そのとき、本当はそれこそ図々しく「一緒の写真を撮らせてください」というのをお願いしようと思ってカメラを持って行ったんですけれども、言えない雰囲気を見せつけられました。
由結:なるほど!そこはちょっともう先生でも入り込むことができないくらいのなにかあったんですね。オーラというものが。
ムトー:そうですね。
由結:いやー素晴らしい。こうやってこういったすごい方に堂々と面会をされたというご経歴がある先生ですが、そのあと政治家の方、例えば麻生太郎さんの撮影なども行ってらっしゃいますよね。
ムトー:はい。これは九州電力の役員の方が「麻生さんの口の曲がらない写真を撮ってよ」って注文があって、「僕そんなことできるかな」なんて話をして撮らせていただいたことがあります。
由結:そのときはいかがでしたか。
ムトー:それは自然の中で撮らせていただいたんですが、麻生先生にも写真としては喜んでいただけたような気がしております。
由結:なるほど。政治家にとってはポスターですとかああいった写真ってもう命だと思うんですよね。では、もうそこでの評価というかが上々だったので次につながっていくというか。
ムトー:そうですね。それで麻生先生のおかげで鴻池先生やほかの先生方も撮らせていただくようになりました。
由結:そうなんですね。先生、ご自分のお力で自ら切り開いてこられてすごいですね。
ムトー:切り開いたというわけなんじゃないんだけれども、自然とそういう転がされ方をしていったのかなという。
由結:自然体にそれを引き寄せている感じですね。
ムトー:そうですね。
由結:ありがとうございます。ぜひその秘訣を次週も伺っていきたいと思います。本日はムトー先生、本当にありがとうございました。
ムトー:どうもありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン2週目
取材しにくい人の方が好き
由結:さあ、それでは本日の素敵なゲストをご紹介いたします。プロカメラマンのムトー清次先生です。よろしくお願いいたします。
ムトー:よろしくお願いします。
由結:2週目ご登場いただいております。ありがとうございます。先週も素晴らしいお話を聞かせていただきました。例えばなんですけど、被写体として、いろんな方がいらっしゃると思うんです。先生のご著書の中にもあったんですけれども、そういう中でも気難しい取材しにくい人のほうが好きだったという言葉があったんですが、それはどんな感じなんですか。
ムトー:それはやっぱりカメラマン仲間で「あの人は気難しいから撮りにくいよね」とかそう言われる人がスターにありがちなんですよ。そういう人を撮るほうが、そういう人と仲良く写真を撮らせてもらうようになるところにカメラマンとしての喜びを感じながら撮らせてもらったような気がします。
由結:なるほど。つまり、カメラを撮る技術の前にその方の心を開いたりですとか、距離を近づけるみたいな、そういう工夫といいますか、それを自然になさっていたということでしょうか。
ムトー:そういうことだと思いますね。
由結:なるほど。立川談志師匠のお写真をたくさん撮ってらっしゃいますけれども、立川談志師匠もなんとなく気難しい感じのイメージがありますが…。
ムトー:外からのイメージだと気難しい方とかおっかない人っていうようなイメージがあったと思うんですけれども、そんなことなくて、とてもやっぱり談志師匠っていうのはやさしさにあふれた人だと僕は感じます。
由結:なるほど。先生がお出しになってる『談志写真帖』ですね。こちら拝見していると、すごく談志師匠の本当におやさしい柔和なお顔がたくさん出てくるなという印象なんですけれども、これがまさに引き出された表情ということなんでしょうか。
ムトー:うん。結局撮ってるうちにそういう顔を自由に見せてもらえたような気がしますね。
由結:そうなんですね。先生は談志師匠にずっと張り付いてというか、お写真…。
ムトー:ええ、張り付いてっていうか、それほど密着していったわけじゃないんだけれども、寄席があるときには楽屋にお伺いしたり、高座があるときは高座を撮らせていただいたり、それからどこか田植えに行くとかそんなときには一緒についてって撮らせてもらったりしたことはあります。
由結:田植えの様子を撮ったりするんですね。
ムトー:はい。自分で田んぼを借りて田植えしてましたから。
由結:へえーっ、そうなんですね。いろんな面をお持ちなんですね。
ムトー:そうですね。「自分の飯くらいは自分で作ったほうがいいよ」なんていう話を本人もしてましたしね。魚沼のほう行って田植えしたんです。
由結:そうですか。そういった様々な面をお写真に収めてらっしゃるということなんですね。
ムトー:そうですね。
由結:なるほど。談志師匠が海に行ったときにムトー先生も海にお入りになって。
ムトー:それで、その当時、僕が泳げないんですよ。「いや、師匠、僕泳げないんですよ」って言ったら、「よし、俺が教えるから」って言うんで、シュノーケルを持ってきて非常に浅いところでシュノーケルの使い方を教えて、ちょっと教えてもらっただけで、5分ぐらい教えてもらっただけで、ちょっと沖まで自分の腕に抱えながら沖まで連れてって、ものすごい深いんですよ。それで天下の談志師匠に連れてこられたんだからここで溺れて死んでもいいやという気持ちになりましたね。それで魚を見ながら「あれが鯛だよ」とか「あれがなんだよ」とかってちゃんと魚の説明までしてくれるんですよ。だけど自分の気持ちはもう泳げないんですから、もうビクビクなんですよ。そんな連続でした。
由結:泳げない恐怖と、師匠と腕を組んで海に潜ったという喜びと両方あったという感じですね。
ムトー:そうですね。
由結:すごいですね。でもそのあとどのぐらい潜るというか泳いでらっしゃったんですか。
ムトー:結構長い間、2時間ぐらい沖のほうでその魚の説明やらなんやされながら、「陸に上がるときはこうやって上がれ」とか教えられながら戻りました。
由結:いやーいいですね。本当に温かい方なんですね。
ムトー:そうですね。それから泳ぐように習いました、僕。
由結:そうなんですね。今はでも泳げるんですか。
ムトー:泳げるようになりました。
由結:そうだったんですね。すごい。
ムトー:これも談志師匠のおかげですね。
由結:すごいですね。なんでも本当にだから談志師匠は本当にご著書にもありましたけど、「デスマスクを撮ってもいいですか」って言ったら「いいよ」っておっしゃったなんていうエピソードがありますよね。
ムトー:はい。その約束を談志師匠とはしたんですけれども、やっぱり亡くなったときに息子さんとかお嬢さんとか「談志師匠と約束をしたからデスマスクを撮らせて」とは言い出すことができなかったですね。
由結:そうですね。でもそのぐらい、談志師匠が信頼を置いていたということなんでしょうね。
ムトー:そうなのかもしれませんしね。
人間は等しくみんな同じという意識で
由結:なるほど。もうお名前を出すと本当に数えきれないぐらい、大スターの方々をお撮りになったということなんですけれども、前回もご紹介したほかに渥美清さん、浅丘ルリ子さん、そして吉永小百合さん。吉永さんなどはどういう感じで撮影されたんですか。
ムトー:小百合ちゃんは、まず裕次郎さんをはじめとして、日活撮影所に行くことが非常に多かったもんですから、小百合ちゃんなんかはまだそれこそ10代のころから撮らせていただきましたからね。当時は小百合ちゃんなんか言わなかったように、その当時は小百合って呼んでたような気がする。
由結:そうなんですね。「小百合ちゃん」
でも驚きますけど、呼び捨てですか。
ムトー:こんな失礼なこともないかもしれないんだけどもね。そんな気がしますよ。
由結:そのぐらい距離感が近かったということですか。
ムトー:そう。大体、日活の空気っていうのはそういうところがありましたから。
由結:そうなんですね。吉永小百合さんなんかは本当皆さんの憧れの存在だと思うんですけど、その方を撮るときになにか気を付けることみたいなのはあったんですか。
ムトー:それはそんなに誰だからどうして撮ろうとかそういうんじゃなくて、等しく人間っていうのはみんな同じだという意識で写真を撮ってました。
由結:なるほど。人間がみな同じだという意識なんですね。
ムトー:はい。隣のおばさんも隣のお姉さんも小百合さんも同じという考え方で写真は撮らせてもらったような気がします。
常にカメラを首から下げる理由
由結:なるほど。先生はいつもカメラを首からぶら下げてらっしゃるという印象なんですけれども、これはなにか意味があるんでしょうか。
ムトー:それはやっぱりいつもカメラを持ってるから皆さんがカメラマンだよって言ってもらえるんだから、常にカメラは持って歩こうという努力はしておりました。例えば自分が通勤途中に電車がひっくり返ったとしますよね。そのときになにもそんなときに写真を撮れない状態に、自分が先に死んでるかもしれないんだけれども、カメラを取りに帰るようじゃやっぱりおかしいでしょ。やっぱりカメラは持ってたほうがいいという判断でカメラは常に持って歩こうと努めていました。
由結:なるほど。首からぶら下げているということは、撮らせてくださいねっていうのがすごく言いやすい感じがしますね。
ムトー:言いやすいと思うんです。
由結:ええ。こちらも警戒感もないですよね。取りだしている状況があると構えちゃいますものね。
ムトー:そうですね。だから常にカメラは持って歩くようにしていました。
由結:そうなんですね。いろいろな状況があったとしても、前回もお聞きしたんですけれども、カメラマンとしてのあり方で本当に素晴らしいなと思うのが、控えめであまり出すぎてはいけないんだけれども、でも図々しくあることっておっしゃっていて、すごいなって思ったんですね。これはもう今までのご経験で培ってきたものということですよね。
ムトー:そういうことですね。
由結:礼儀正しくあろうとしたりしすぎるとなかなか踏み込めなかったりっていうところがあったり、その真逆もありますよね。仲良くなったからといってズカズカやっているとちょっと相手から引かれてしまったりってあると思うんです。先生は、巣bらしいバランス感覚でずっと人とも付き合って来られたんですね。
ムトー:そうですね。それは別に芸能人じゃなくても普通の人とのお付き合いも全く同じだと思う。会社の上司とお付き合いするのもそうだし、部下とお付き合いするのもそうだし、みんな同じにお付き合いしたほうがいいよというのを常に考えていたような気がします。
由結:なるほど。先生とお食事に行かせていただいたときに、ふと先生のほうを見たらいつも笑顔でニコニコとお食事召し上がってらっしゃったり、そしてカメラを持ってどなたかを撮っているというどちらかだったなという印象なんですけれども、やはりこれももう自然になさっているということですね。
ムトー:そうですね。常にそばに誰かがいたら撮りたくなるというかね。
由結:そうなんですね。もう本当に先生の撮っていただいて現像したお写真をいただいたら、本当にその方の温かさとか人がそこで本当に生きている。いきいきとした情景がそのまま浮き出てくるようなお写真だなと思いました。
ムトー:そう言ってもらえたら僕はやっぱり写真撮っててよかったなというのを感じます。
だから、写真を撮った人に褒められたくて写真を撮ってたような気もします。
由結:そうなんですね。なるほど。今までもたくさんお褒めの言葉をもらったんじゃないですか。
ムトー:そうですね。「とってもいい写真撮ってもらって嬉しかったよ」っていうのを言ってもらえることを喜びとしていたような気もします。
由結:そうなんですね。今まで数々の方の笑顔だったり、あるいはふとした表情というものを収めてこられたと思うんですが、これからこういう写真撮っていきたいなというお考えはおありですか。
ムトー:これからは自分の身の回りのうちには猫が二匹いるんですけれども、猫の写真を一生懸命撮ったり、うちのまわりを撮ろうかなと思ってます。
由結:身近なところなんですね。
ムトー:そうですね。どこかへ出かけるんじゃなくて、自分の身の回りから撮っときたいなという気はします。
由結:そんなときはどのようなところに気をつけながら撮るんでしょうか。
ムトー:いや、それは気をつけるというようなこともなく、常に自分の今、墨田区に住んでるんですけれども、墨田区のあのごちゃごちゃした工事だらけの場所なんかの楽しさを撮りたいなと思っております。
基本になる四つの“つき”
由結:楽しみですね。このラジオはビジネスパーソンの方もたくさん聞いてらっしゃいます。そこで、先生にお聞きしたいんですが、芸能人の方たくさん見てこられて、この方売れてそのあとも人気が続くなと思われる方とそうじゃないなという方も中にはいらっしゃると思うんです。その見分け方があれば教えていただけますか。
ムトー:これはタレントさんだけじゃなくて、映画スターとか歌手とかそういう方だけじゃなくて政治家も含めて、目つき、顔つき、身体つき、言葉つき、このつきを自分のつきとして完成させたら人生のつきがきますよというのは常に言っていましたね。
由結:そうなんですね。まずこの「目つき」
から教えていただいてよろしいですか。
ムトー:はい。目つきっていうのは、やはりなんかいやらしい目してるよねとか、そういうような目ってありますよね。だからそれを好感の持たれるまなざしを持っているほうがいいだろうなというものそれで顔つきは、顔というのはできるだけ笑顔を含んだ顔のほうが人から好まれるよということを含めて、常に笑顔でいるようにふるまっていたいなという。身体つきというのは、姿勢だとか猫背にならないようにしようとか、そういうものを常に気を付けて立ち姿も含めてきちっとしているというのを心掛けてほしいなと思います。そして言葉つきというのは、これは言葉というのはもちろん方言の人もいるしいろんな人がいますけれども、やはり几帳面な言葉づかいをされる人のほうが好感度が高いんではないかなと、僕は感じております。
由結:そうなんですね。几帳面な言葉づかい。やはり心遣いが端々に出てくるということなんですね。
ムトー:そうですね。やはり気づかいのある言葉づかいということですね。
由結:なるほど。先生はお一人お一人をよく観察してらっしゃるということなんでしょうね。
ムトー:そうかもしれませんね。
由結:これはビジネスパーソンの方やご家庭の主婦の方をはじめ、皆さんに当てはまることですよね。
ムトー:そうですね。だからどこにいてもできるだけ笑顔でいたほうがいいなという感じはしております。ただそれができないなんか不愉快なことがあったりしたら、どうしても不機嫌になった顔になったりするんですけれども、それをできるだけ抑えようという配慮はしたいなとは思ってます。
由結:ええ。ありがとうございます。大変勉強になりました。もうこれはこの「4つのつき」
、これは極めていきたいですね。
ムトー:ぜひそうしていただけたらいいんじゃないかなと僕は感じております。
リスナーへのメッセージ
由結:ありがとうございます。それでは、最後にリスナーの方に向けてメッセージを一言いただけますと嬉しく思います。
ムトー:いやー、それはなんていうのかな。偉そうなことは何にも言えないんですけれどもね。やはり人とは誠意をもって心がけたお付き合いをすると相手も誠意をもって答えてくれるんではないかなという気はします。それは夫婦の中でも親子の中でもお友だち関係でもみんなそんな気がしますね。
由結:素敵なメッセージありがとうございます。先生には本当にお話が尽きないので、また機会がありましたらぜひご登場いただいて、このお話の続きをいただきたいと思います。
ムトー:ぜひよろしくお願いいたします。
由結:そして、実は来週なんですけれども、声診断を受けていただきますので、ぜひよろしくお願いいたします。先生のお人柄ですとか、能力の秘密が明らかになります。それでは本当に楽しみにしております。本日はありがとうございました。
ムトー:どうぞよろしくお願いいたします。
銀座ロイヤルサロン3週目
声診断・声解析コーナー
由結:さあ、本日は声解析・声診断コーナーです。クォンタムヴォイスアカデミー稲井英人学長が担当するコーナー。これまでに25000人以上の臨床データのある声診断ソフトにより、ゲストの方の声の波形を読み取り、その方の個性と能力をひも解いていきます。本日のゲストはプロカメラマンのムトー清次先生です。よろしくお願いいたします。
ムトー:よろしくお願いします。
由結:それでは稲井学長、よろしくお願いいたします。
稲井:はい。よろしくお願いします。さあ、ムトー先生の魅力。だってああいうスーパースターの懐にスッと入っていけるわけでしょう。やはりお人柄が、その秘密が声に表れてくると思います。今から本当に普段のしゃべりをしていただくだけなんですね。それを僕、黙ってポッと録りますので、それが12色の色と波形で凹凸の波で出てくるんですよ。それを元にして、先生が人に与えている印象、それからエネルギー、それからご自身の内面のエネルギー、それをちょっと分析させていただきたいと思います。
ムトー:どうもありがとうございます。
稲井:先週、先々週とこのラジオに出てきていただきましたが、いつも人を撮るばっかりの方が今度は取材を受けたり写真で撮られる側となりましたが、ご感想いかがですか。
ムトー:いや、もうこういう場面っていうのは僕初めてラジオに出させていただいたりしてるもんですから、非常に緊張しております。
稲井:12秒ずっと録りますので、12秒ずっとしゃべり続けていただきたいんですけど。
ムトー:そうですか。
稲井:はい。でも本当に先生の笑顔って最高ですよね。
ムトー:いや、そんなことないと思うな。
稲井:昔からそんな感じなんですかね。
ムトー:うーん。そうかな。
稲井:やっぱり、「よし、この方撮るぞ」と思って入っていくときも、やっぱり今のような柔和なお顔で来られると相手も「まあ仕方ないな」って思うんじゃないですか。
ムトー:なるほどね。そう思っていただければ幸いだしね。
稲井:先生の中で今までの思い出、いろんな方撮ったと思いますが、一番撮りにくかった人でなんとか撮れたって方とかいらっしゃいますか。
ムトー:撮りにくい人はいなかったかもしれない。みんな素敵な人だったような気がします。長い間、今まで撮らせてもらった方はね。それで世間的に「あいつ嫌なやつだね」とかいろんなこと言う人もたくさんいたんだけれども、そういう人のほうが魅力的な顔をする場面があったりしますから、かえって楽しみがあったかもしれない。だから人によっては左の顔がいいとか右の顔がいいとかっておっしゃる方もいるんです。とくに政財界の人たちは「社長はこっちの顔がいいですよ」とかって言う人もまたたくさんいると思うんですよ。だから「こっちから撮ってね」なんて言う人もいますけれども、その場面はその人の言う通り左なら左のほうを撮らせていただいて、それで右の写真もひそかに撮っといて、それで右の写真のほうが魅力的だったろうというのはあとで教えてあげたいというような気持ちを持ってた。
稲井:なるほど。その方々の気づかない魅力をお教えしてあげるということもされてたんですね。
ムトー:そうですね。古くは長谷川一夫先生なんかの場合は顔に傷があるからどうしてもカメラマンの方はここから撮ってねというような注文を出されたんですよ。だけど、それはやっぱりその大先生ですから聞かなきゃいけないんだけれども、でもそこから撮りながら少しずつずれて違う場面を撮らせてもらったような気がします。
人の感情を動かし、周りを巻き込んでいく力
稲井:なるほど。ありがとうございます。このような形で出てくるんですね。先生の内側の三重の層でお見せしてるんですが、このコーラルレッドって言いまして、朱色の部分。それからオレンジがこれが丹田の部分。やはりこの丹田のあたりの声が非常に出る。この声が出る方というのは人に元気を与えたり、人の心、感情を動かしたりするお声なんですね、実は。だから相手の方が感情が揺さぶられていくんですよ。
あと、このイエローがある方っていうのは自分という世界をちゃんと持っておられるので、自分の軸を持って信念をもってちゃんとお仕事をされていったりします。それからこのライムグリーン、黄緑色。これは静かになんですが、実は周りを巻き込んでいく力もお持ちなんです。だから前もちょっとお聞きしたときに、俳優さんが先生に逆にアドバイスを求めてきたりとか、ただ撮るだけではなく、相手の方に気付きを与えたりするような、そういうお声でもあるんですね。こういうふうに言われてどうお感じになります?
ムトー:いや、そういう具合に肝が据わってるというようなことを言われると、とても嬉しいですけども、そんな自分じゃないような気もするんですけれどもね。肝も据わってないしどっかおどおどしてるところもあるような気もしますし、みんなを包み込むなんてとんでもなくそんなことなんかできないだろうというような気持ちは持っております。
稲井:ええ。今のお声を録らせていただくと、今度はゴールドの部分がバンと出てきたんですね。これが信念、軸の部分です。やはり先生の中の内側の深い深層心理のほうに「俺はこうするんだ」という、ご自分の一本筋が通ってたんでしょうね。これを周りの一流の方々が感じ取っていたんだと思います。
ムトー:なんか無理強いしてるんじゃないかと(笑)。
稲井:いやいや(笑)。このゴールドの声で言われると、相手が嫌と言いにくいんです。凛とした声です。
ムトー:明瞭な言葉づかいをしようというのは心がけてました。
稲井:非常に伝わりやすいお声ですね。
ムトー:そうですか。
全体を俯瞰し、天とつながる
稲井:はい。あとヴァイオレット、紫の声もそうなんですが、これはどちらかというと客観的に非常に俯瞰して全体を見るという、そういう能力もやっぱり深い部分にお持ちなんですが、ご自分でそういう意識はありますか。
ムトー:いや、それはもうなにも考えないで、それこそ仕事してきたような気もしますけどね。
稲井:冷静に全体をちゃんと見ておられますね。
ムトー:そうですかね。
稲井:はい。だから先週、先々週のお話をお伺いしても、その場にいるんだけどもただ一カメラマンでいるようで、なんか全体をちゃんと見ておられるような。だからこそ多くの方の心にスッと入っていけたような、そんな気がしますね。この目線は面白いです。
ムトー:そうですか。
稲井:はい。今度、先生ご自身も今後自然の風景とかも撮られるみたいですが、やはりその感覚を撮られることでそのお写真を見たときに多くの方がほんわかするようなお写真を撮られるんじゃないですかね。
ムトー:そうですかね。そういう写真になるといいなと思いますけど、でももうこれ以上生きることだって不可能な年になってきてますので、あと何年カメラを持って撮れるかなというのと、やはりカメラを持ち上げられなくなったら、これは終わりだろうなという気はしております。
稲井:なるほど。また紫が強くなりました。これある意味で、そうですね。ちょっと精神的な話になると天とつながるというか、もう本当に我欲もなにもなく全部を乗り越えていく、全てを統合していくという、そういう声なんですね。本当に人生のまとめの位置を意識されるときってこういう声になるんです。こういったときって自然から語りかけられたり、例えばお花が「撮って」って言ってたり、自然の生き物が「僕を撮って」ってわんちゃんが言ってたりとか、フッとそういうのを感じるときもこういう波形、こういう精神状態のときなんです。
ムトー:それ嬉しいな。
稲井:はい。いや、これ楽しみですよ。
ムトー:それでね、例えば近所の小さい花壇があるおうちがあったりするじゃないですか。それから鉢植えの鉢に花が咲いてたり、それはできるだけ撮らせてもらうようにはして歩いてます。
自然を撮ることでエネルギーがわいてくる
稲井:なるほど。いいですね。これ最後の今の声録らせていただいたんですが、レッドが強く出てきてイエローも出てきて、やはりそれをますますご自分の中で、自然のことを撮ることでエネルギーがわいてるみたいです。これ、赤は健康、体のことも表すんでそのことがご自身の健康にも非常にいいと思います。ぜひお続けになったらいいですね。
ムトー:そうですか。できるだけ近所だけは歩いたり、できればもっと遠くも行きたいんだけれども、自分の生まれ故郷の北海道も行ってみたいと思うし、沖縄も行ってみたいと思うし、様々なところを日本を結構仕事で歩いてるようなんですけれども、人物の写真を撮ることが仕事でしたから、その人物の写真を撮り終えたらさっさと帰ってくることが多かったもんですから、できるだけいろんな地方へ出かけてみたいなと思っております。
稲井:そうですね。これからのムトー先生の新たな姿、新たな作品、また拝見したいですね。いや本当に素晴らしいです。先生のこの自然から受けるインスピレーション、感覚でぜひお撮りになってみてください。新たなステージが開かれると思います。
ムトー:そうですかね。それはとっても嬉しい。励まされたような気がします。
稲井:はい。本当に素敵なお声聞かせていただきました。今日はどうもありがとうございました。
ムトー:どうもありがとうございました。
由結:ムトー先生ありがとうございました。3週にわたり、ムトー清次先生にお話を伺ってまいりました。この声解析・声診断ソフトからムトー先生の本当の能力というものがより浮き彫りになったのではないかと思います。
ムトー:いやー。声でこんな判断ができるんですね。
稲井:はい。できます。
由結:そうなんです。
稲井:この紫ってある意味、悟りの声みたいな。これ精神面で…。
ムトー:そうですか。なかなか悟ってないと思うんですけど(笑)。
稲井:(笑)。いや面白いです。一番最後の声がヴァイオレットの深いところで。
由結:興味深い結果でした。ムトー先生、本当にありがとうございました。
ムトー:どうもありがとうございました。
稲井:ありがとうございました。
ムトー清次さんのプロフィール |
1936(昭和11) 年、 北海道旭川市生まれ。 旭川北高校、日大芸術学部写 真学科卒。 「明星」「女性自身」「女性セブン」「微笑」 といった週刊誌や写真誌などで、 数多くの芸能人や文化人、スポーツ選手を撮影してきた。著書・写真集に、「談志写真帖』(彩流社)他。 |