秋篠野安生さん コーディネーションアカデミージャパン 主宰 空間環境デザイナー「時間(とき)と空間の演出家」
2019年11月14日放送
空間環境デザイナー 秋篠野安生さん(1)
2019年11月21日放送
空間環境デザイナー 秋篠野安生さん(2)
銀座ロイヤルサロン1週目
由結:さあ、それでは本日の素敵なゲストをご紹介いたします。
COORDINATION ACADEMY JAPAN主宰・空間環境デザイナー・秋篠野安生先生です。よろしくお願いいたします。
秋篠野:秋篠野安生でございます。よろしくお願いします。
由結:よろしくお願いいたします。今日はお忙しいなか駆けつけて頂きました。実は秋篠野先生と先ほど打ち合わせをさせて頂いておりましたら、癒されてとても気持ちがよくなりました。何かは秋篠野先生には凄いパワーがあるんじゃないかしら…と思っておりました。
秋篠野:ありがとうございます。
「秋草図」から
パリ・インターコンチネンタルホテルでの個展
「秋草図」から
由結:早速、秋篠野先生のプロフィールをご紹介させて頂きます。”時間(とき)と空間の演出家”として、パリインターコンチネンタルホテルで作品展を開催。イタリアのオルシーニ宮殿での空間演出でも高い評価を得ていらっしゃいます。そしてインテリア・食空間しつらえとは単なる表面的なものではないとし、時代の中でパーソナルバランス、人の安らぎ、和み、癒しの考えかた、紡ぎかたを探求、提案。テーブルコーディネートから生活空間までをトータルで学べる
COORDINATION ACADEMY JAPANを主催していらっしゃいます。そして美しく生きる美学として“季礼”を基に人間としての美意識、おもいやり、マナー、キレイに生きるを提唱、講演活動も行っていらっしゃいます。そしてトゥールダルジャンの季節歳時の空間装飾なども手掛けていらっしゃるという、素晴らしいご経歴でいらっしゃいます。丁度もうすぐクリスマスの時期ですよね。トゥールダルジャンはどんな感じに仕上げていらっしゃるのですか?
秋篠野:そうですね、はい。いつも総支配人のクリスチャン・ボラーさんからの提案なんですね。凄くアバウトな感じで「今年は”赤”でラグジュアリーな艶やかな感じのクリスマスを」という要望がありましてね。ニューオータニのチェックインの写真がもう出てるんですけど、8月の終わりにクリスマスと新春の撮影がもう終わっています。そして11月1日に空間全体をクリスマスで飾らせて頂きました。
由結:わぁ、楽しみですね。
2019年トゥールダルジャン東京
秋篠野:そうですね。今年は”赤”をテーマに艶やかな感じを表現したいと思って。
由結:秋篠野先生は様々な晩餐会なども手掛けていらっしゃるということなのですが、どのように企画をなさるのですか。
秋篠野:そうですね。大体大きなテーマを頂いて、「こんな感じにしてほしい」と言うクライアントのかたから要望を頂いて。これがパーティーじゃなくて、空間・インテリアから全部私の世界を提供するのではなくて、クライアントのかたの生活とか想いをしっかり聞きながら自分の中でイメージを膨らませていくというお仕事をさせて頂いております。
由結:なるほど。”空間環境デザイン”ですね。これは、どういうものになるのでしょうか?
秋篠野:随分前から空間環境デザイナーという肩書きをつけたのですけど、コーディネーター生活もう46年、47年になると思うんですね。アカデミーは38年なんですけど、その頃から”空間環境”ということは、いろんな空間の中で、でも環境を大切にしたい。だから大きな意味の堅い感じの環境ではなくて、その周りの”雰囲気・空気”、気の流れをその人に合わせて沿わせて作らせて頂くというのを”空間環境デザイナー”ということで。
由結:なるほど。空間の中は人、物が存在すると思うのですけれども、そのバランスを取る…ということでしょうか。
東京會舘「ノエル・ド・オペラ2019」
秋篠野:そうですね。テーマに合わせて。例えばレストランなど店舗のお願いもあったりするんです。そうするとそのかたがどこの位置にいらして、どういうお店にして、皆さんスタッフがどう綺麗に動いているかという空間をつくるわけです。そこにお店にお客様がいらっしゃった時のひとつの”輪”ですね。ただお店がインテリア的に綺麗と言うのではなくて、そこで人が動く事によって活かされるというのを”環境”という風に考えさせて頂いてます。
由結:なるほど。奥深い世界ですね。先生は元々この世界に関心がおありだったのですか?
秋篠野:はい。元々美術系で、兄が画家なのですが、美術部の学校行きたかったのですが。でも「二人とも美術だとお家が破産する」と父親に言われましてね。それで「どうしても女性だから手に職業を」と。私達の時代はそうでしたので、薬科大学の薬学部へ無理やり両親に入れさせられて。でも大学でもずっと美術系の勉強はしてました。
由結:そのような中でずっとご自分の中では温めてきた思いというのがおありだったのでしょうか?
秋篠野:そうですね、あります。結局大学を終わった時はやはり理科系人間になってたんですよ。
それで「私は文化系なのに」と思っていても卒業したらもう「理科系だ」と思っちゃったんですね。そして「じゃあ今から文化系の部分もちょっと美術系の部分も」と、もう高校時代からインテリアの雑誌とか外国から取り寄せて勉強してましたのでね。それで一番好きなのはやっぱり”空間・インテリア”。それでしたね。その中にテーブルセッティングとかがありましたので。
由結:そしてたどり着いたのが”美しく生きる”ということなのでしょうか。
秋篠野:”たどり着いた”というよりは、もう物心ついた中学生の頃から「自分は美しく生きたい」と思っていたのです。その頃からの意識が残っているのですよね。”人間として美しく生きたい”、”女性として美しく生きたい”という、その”美しさ”が具体的ではないのですけどね。「ちゃんと生活したい」というふうに思っていたのです。
由結:”ちゃんと生活する”
秋篠野:そう、そういうことなんです。美容とか表面のスタイルとかではなくて、内面の人として”美しく”という意味なんですね。
由結:先生から見て忙しく暮らす現代人はどのように映りますか?
秋篠野:そうですね。私は昔から時代の流れ。本当に私達の時代というのは来年オリンピックがありますけど、丁度私東京オリンピックの時は学生だったんです。まだ大学入ったばっかり、実は19歳だったんです。その中でずっと時代が変わっていきましたよね。オイルショックとか、色々な高度成長とか日本人忙しかったし、私達も一緒に何かそれを味わってきてるんですけど、その中で”個人主義”とか「自分のことをしっかり考えましょう」という時代になっていて、得も言えないゆとりとか目に見えないものを大切にしてきた日本人の知恵が、そこを考えてる時間がなくなっちゃった。今も”時短”という言葉が行き交っていますけど。でも私がいつも言っているのは「美しく生きるためにはまず礼儀正しく、そして順番を間違えない」「優先順位をきちっと自分で整えて生活していきましょう」ということを言ってるんですね。
由結:優先順位というのは例えばどんなことですか?
秋篠野:「ではこれを始める時にはどれから始めるの?」それで「これをやるときにはどなたに最初聞いて、筋を通して」。そう、”順番”と”筋を通す”ということをよく考えます。じゃないとそれを飛び越して自分勝手に好きなだけのことをやるとどこかで壁に当たるんです。それで「あれ?」と迷い道に入ったように「あれ?どっち行ったらいいのかしら?」と思うんだけど、ちゃんと礼儀正しくこのかたにこの事を聞いて、そしてまたここの順番でご挨拶をしておいて、そして自分の行く道をきちっとゆっくり優先順位を決めていく。でも優先順位は変わることあるんですよ。でも優先順位を変えなきゃいけない時は、まず一番目が二番目になる時ありますよね?そうすると一番目のかたが二番目になる出来事があったら、この一番目をきちっと処理して二番目を一番目に持っていく礼儀というのがあるんです。そうすると私の生活の経験から、絶対に正しい方向に導かれていくのです。
由結:はー。きちんと筋を通して順番を間違えないと正しい方向に行くようになっていると言う。
秋篠野:はい。それが”美しく生きる”の基本経験でしょうかしら。
由結:そうなのですね。先生、まだまだ伺いたいところなのですがそろそろお時間がまいりました。来週も出て頂けるということですので、是非この続きをお聞かせ頂きたいと思います。それでは最後にリスナーのかたに一言メッセージを頂いてよろしいでしょうか?
秋篠野:はい。どんなことでもいいんですか?
由結:はい。どんなことでも結構です。
由結:そうなのですね。先生、まだまだ伺いたいところなのですがそろそろお時間がまいりました。来週も出て頂けるということですので、是非この続きをお聞かせ頂きたいと思います。それでは最後にリスナーのかたに一言メッセージを頂いてよろしいでしょうか?
秋篠野:はい。どんなことでもいいんですか?
由結:はい。どんなことでも結構です。
銀座ロイヤルサロン2週目
由結:さあ、それでは本日の素敵なゲストをご紹介いたします。
COORDINATION ACADEMY JAPAN主宰・空間環境デザイナー・秋篠野安生先生です。よろしくお願いいたします。
秋篠野:よろしくお願いします。秋篠野安生でございます。
由結:先生、二週目ご登場頂いておりますが、本日もなんだか先生の笑顔を見ているとこちらまで心が穏やかに、そして元気になってまいります。
秋篠野:ありがとうございます。
由結:さて前回は先生の提唱なさる『美しく生きる』ということ、『筋道をきちんと通して生きていくということ』をはじめとしてお話を聞かせて頂きました。
先生は『時と空間の演出家』として、47年間ご活躍なさっていらっしゃいます。今目の前に、半紙に書かれた流れるようなラインの文字があります。先生、どういうものになるのでしょうか?
秋篠野:そうですね。
本来の書道とはまた違って、空間を演出するという感じの『バランスと調和』なんですね。そして『字を書くこと・手を動かすこと・指を動かすこと』によって、私は本当に良いホルモンが出てくると思っています。それで昔からやはり手を動かすこと大切ですしね、指一本怪我をしても本当に一本だけなのに凄く生活に支障があって、もどかしく感じることがあるんですよね。それほど手とか指は大切なので、それで字を書くと特に美しい元気のあるいい言葉を書くと絶対によいのです。理科系人間なのか、良いホルモンが出てくると信じちゃってます(笑)。
由結:この『季礼』という言葉自体も先生がお作りになったという言葉なのですよね。
秋篠野:基本的に『季礼』というのは、まず永平寺の道元禅師。とっても素晴らしいかたなのですが、そのかたがある時に仰っていたんです。「人間の本来の意味は自然の礼節に沿わせて生きることが一番の本来の生きる・命を繋ぐという意味ですよ」ということ。それは随分昔に聞いていてある夜ふと『設え』という言葉と一緒なのですけど、夜中にふと「あっそうだ。設えというよりは『季礼』がいい」と思ったのは、礼節の『礼』と、季は宇宙の自然界。自然界と宇宙の礼節に沿わせて生きていくということで『季礼』という言葉を考えついて、商標登録をさせて頂きました。
由結:素敵ですね。ちなみに先生今紫と言いますか藍色のお召し物をお召しになっているのですけれども、これはお好きな色でいらっしゃるのですか?
秋篠野:そうですね。パープルというよりは宇宙の藍色が好きなんです。丁度今も日がもう早く暮れますけど、大体6時前ぐらいに空が全部ビルもそうなんだけど、藍色にセルリアンブルーに染まるんです。それに気が付いて頂きたいんだけど、いつもその頃になると「宇宙のブルーが好きだなぁ」という。紫と言うか藍色ですね。
由結:この『季礼文字』にもそういった宇宙の根源的なと言いますか、自然界に沿ったというようなものが入っているのでしょうか?
秋篠野:そうですね。よく私も言っているのですけど、まず日本には季節を感じる美しい言葉、沢山あります。そして日本では『言霊』とよく言うんですよね。それで嫌な言葉を口から出してしまうとあまりいい気分にはならないので、人が気持ちよく楽しく感じられる言葉。そういうもの、それを『言霊』と言うんですよね。もうすぐ12月22日になると冬至になるのですが、陰陽逆転して、なんですけど、その『冬至』というのも『湯を治す』と言って『湯治』。温泉に入って体を治すという。
ホテルニューオータニで開催された作品展の模様
由結:これは偶然ではないのですね。
秋篠野:そうです。そして柚子が入っているお風呂に入るのも『融通を利かせて生きる』とか、『融通無碍』という言葉もあるんですよ。
由結:『融通無碍』。
秋篠野:そう。いろいろ合わせながらおおらかに物事に沿わせて生きていくという。そういう言葉を書いていくと本当に脳から良いホルモンが出ると私は思ってリーフレットにも「呼吸を整えて筆を運ぶと言霊からエネルギーが体に満ちてきますよ」ということをお伝えして、目に見えないものを信じて欲しいんです。今の現代、目に見えるものをまずすぐに信じてしまうのですが、私の作った言葉の中で本の裏にも書いてあるのですが、「季節の声が聞こえますか?駆け抜ける風が見えますか?」というのが『季礼』のサブタイトルなのです。とは言っても季節の声聞こえないですよね?
ホテルニューオータニで開催された作品展の模様
由結:忙しく動いていると聞こえなくなってしまいます。
秋篠野:ね、そうなんですよね。
それで風は分からないですよね。風脚とかあるのですけど、それを昔の作家のかたの本の中には沢山いい言葉が書いてあるのだけど、今本を読まなくなったら「風脚ってなんですか?」とか「風の匂いってあるんですか?」とかと言うんですけど、でもそういう表現を字で書いていくと気持ちが凄く爽やかになるんです。
由結:先ほども仰った通りで指を動かしながら表現されていくということですよね。
秋篠野:そう。ですので、今からは私は目に見えないものを感じ取る感性を自分の中で養ってほしいし、「あっ、これが今は秋から冬になったな」とか「今朝は冬の匂いがした」とか。それを生活の中に入れていくとイライラしてるとか切れてしまうとかがワンクッションで、小さいことの幸せを沢山見つけてほしいというのも想いが入ってます。
作品展の模様
毎年夏にトゥールダルジャンにて
開催される蓮葉の宴の模様
由結:素敵ですね。この講座をホテルニューオータニのオフィスで受けられるのですね。きっとこれを受けると皆さんいろいろ心身の変化など様々なものがあるんじゃないかなと思いますけれども。
秋篠野:はい。男性もいらしてるんです。ITのソフトを作っていらっしゃるかたなのですけど、「ここで2時間ほど書いていると凄い気持ちが落ち着く」と言ってくださるし。より忙しいかたも落ち着いてくださることと、やはり今からの時代私よく言うのですが、時代はどんどん変化していっています。だけど私は『動かないんじゃなくて、流されないで流れていきましょう』という言葉をよくお伝えしているのですね。
由結:『流されないで流れていく』。
秋篠野:はい。時代は流れていくものなんです。水だって流れないで止まっていたら腐ってしまうんですね。それで時代に沿わせながら自分の意思も一緒に五感でキャッチしながら流れていくんだけど『流されない』。意識不明、無意識で流れるのではなくて、「あっ、今流れてるな。時代が変わってるな」だけど、私はこの間、自分の意思を持ちながら上手にこの時代に乗っていく。そうすると意外と合ってるんですよ。
開催される蓮葉の宴の模様
ホテルニューオータニで開催された
新春 鏡開きの会の模様
由結:『自分らしく生きる』ということでしょうか?
秋篠野:そうなんですよね。
由結:なるほど。いやー何か考えさせられますね。ついつい忙しく生きていると、フッと「そういう時間が凄く大事なんだ」と先生の声を通して今改めて思いました。
秋篠野:そうですね。だから日常の中に小さな幸せを見つけられる人になってほしいですね。
由結:なるほど。躍起になって探す、というよりは自然の中に溶け込んで感性を磨くということでしょうか。
秋篠野:そうですね。『気がついた自分を褒めてあげる』。「あっ、今日は空が綺麗だったな」とか「雨が気持ちいいな」とか。「雨が嫌だな」じゃなくて、「気持ちいいな」とか、いいようにいいように考えていくんです。ネガティブじゃなくて。私いつも本当に単純なんですけど、凄く嬉しいんです。いつも常に嬉しいんですよ。
由結:常に嬉しい、ハッピーであるということなのですね。
秋篠野:そう。ということは大げさに考えず「エレベーターで一人きりになって気持ちいい」とか。でもエレベーターに乗って、本当に外国のかたは意外とニコッとしてくれるんですね。それでこっちもニコッと返すと何か凄く幸せいっぱいになったりとか。それでコンビニなんかで若い女の子が「ありがとうございました」と言ってくれること自体も「あっ、この子の声綺麗」とか、そんなことで幸せになります。
新春 鏡開きの会の模様
ホテルニューオータニで開催された
新春 鏡開きの会の模様
ホテルニューオータニで開催された
新春 鏡開きの会の模様
由結:先生の素晴らしいお話をご講義でもきっと沢山聞けるのだと思いますので、ご興味のあるかたは『秋篠野安生』で検索かもしくは会社名で検索すればよろしいでしょうか?
秋篠野:『秋篠野安生』で大丈夫。ホームページにたどり着いてそこからFacebookというのは誰でもが見られるお友達にならなくてもFacebookのほうにもありますし。
由結:わかりました。それでは『秋篠野安生(あきしのあき)』で是非検索をなさってみてください。先生、二週に渡りまして本当に素敵なお話をありがとうございました。
秋篠野:ありがとうございます。
プロフィール |
「時間(とき)と空間の演出家」として、パリ・インターコンチネンタルホテルで作品展を開催。イタリアのオルシーニ宮殿での空間演出でも高い評価を得る。インテリア・食空間・しつらえとは単なる表面的なものではないとし、時代の中でパーソナルバランス、人の安らぎ、和み、癒しの考え方、紡ぎ方を探求、提案。テーブルコーディネートから生活空間までをトータルで学べるコーディネーションアカデミージャパンを主宰。「美しく生きる美学」として季礼を基に人間としての美意識、おもいやり、キレイに生きるを提唱、講演活動を行う。トゥールダルジャンの季節催事の空間装飾なども手掛ける。 |