悟東あすかさん 高野山真言宗尼僧 漫画家 ヒプノセラピスト「余分な力を抜いて生きよう」
銀座ロイヤルサロン1週目
由結:さぁそれでは、今週の素敵なゲストをご紹介致します。高野山真言宗尼僧・漫画家ヒプノセラピストの悟東あすかさんです。よろしくお願い致します。
悟東:よろしくお願い致します。
由結:素敵な作務衣をお召しの悟東さんにご登場頂いております。悟東さんは少年ジャンプ赤塚賞に入賞されたそうですね?
悟東:そうですね、ありがたいことに。
由結:きっかけは何だったのですか?
悟東:はい。実はですね、その当時私ずっと漫画家のアシスタントをして生計を立てていたのですけれども、その頃、一ヵ所の漫画家の、どこかに決まってではなくて、数人の漫画家さんの所にその都度「何日から何日までお願い」ということで入っていました。その中のおひとりが「一ヶ月間これだけお願い」と言うふうにほぼ一カ月間連続の予定を私に入れてくださったのでその心づもりをしていたのですが、そこに仕事に入る一日前にそこの先生から電話が来て全部キャンセルになってしまったんです。
由結:ええ!?それは大変なことですね。
悟東:ちょっとね、びっくりしまして。
由結:その時どうされたのですか?
悟東:それでその月にはそこの仕事ばかり入る予定だったので、他の仕事も断ってしまっていたので、その時点で取れる所は取ったのですけども、半分も取れなかったんですよ。それで本当だったらそこで凄く困ったわけです。でも、ふと気が付いたら「ああ、時間がもらえた」と。
由結:まあ!
悟東:えぇ。「多少お腹はすくけど、お金入らない。でも時間はできたな。じゃあ賞に応募しよう!」と。それでとにかく悔しくもあったので、何とか描いたわけです。それで”赤塚賞”頂けたんです。
由結:わー!なんだかそこに導かれたかのようですね!
悟東:いやもうね、実は本当に意地悪なように見えて、全部キャンセルされたおかげで獲れたんですね。賞を頂くことができたので、やっぱり”ピンチはチャンス”と言うのは本当にあるんですね。
由結:漫画には依然からご興味がおありだったのですか。
悟東:はい。漫画・絵を描くのがとにかく大好きで。特にふざけたものとかが大好きででして。笑ってもらえるような絵が大好きな人間だったんです。それで赤塚賞に。
由結:少年漫画のギャグマンガの登竜門!素晴らしい賞ですものね。
悟東:はい。本当ありがたいと思ってます。赤塚不二夫先生まだご存命の頃で、大変評価してくださったんだと言う話をあとでお聞きして、凄く嬉しかったですね。
由結:そうなのですね。仏様のご本を沢山出されていますが、こういったものを描くきっかけと言うのはどんなことだったのでしょうか?
悟東:そうですね。私がお寺の子ではないので、仏門に入って得度をさせて頂いた後、「どうやってその資格活かしていくんだ」と師匠に言われたんですね。「今後どうやってお坊さんになってやっていくつもりだ?」みたいな感じで言われて、それで漫画描くの大好きだし、人を笑顔にさせるの好きだったものですから、「なんとか漫画で仏法広げるなんてことはできないですかね?」と師匠に聞いたら笑われましてね。
由結:かなり斬新なアイディアだったのしょうね?
悟東:そう言っても、まず漫画家になるの難しいし、本当「仏法をどうやって描くんだ」みたいな感じでちょっと笑っておられたのですけれども、ただその時点から五年ぐらいでデビューできましてね。”ピンチがチャンス”になってサッと叶ったというのは嬉しかったですね。
由結:元々人を笑わせるのがお好きだったとか。子どもの頃からそういう気質はおありだったのですか?
悟東:はい、そうですね。私の両親は本当に喧嘩が多くて、最終的には両親離婚しているのですけれども、本当に小さい時からパッと目を開けると両親が喧嘩してるんですよ。それを絵に描いて、パラパラ絵のように何かどうなったどうなったみたいに描いて、それでそれをパッと見せるみたいな。落ち着いた頃にサッと両親に出すと、何かやっぱりプッと言うか笑うみたいな感じでですね、「あっ、こんなことしてたんだ」と言う。
由結:そこで丸い空気が生まれたのでしょうね?
悟東:まぁなる時と、ならない時は余計怒られちゃう時はありますけどね。
由結:そうですかー。そんなふうに場を和ませたりするアイディアや閃きがおありだったのでしょうか。
悟東:んー、閃きと言うより、絵を描くのが凄く好きだったんですね。本当に変な絵ばっかり描くの好きで描いてましたので。
由結:素敵な書籍が目の前になりますが、本当に凄くかわいらしいと言うか、本当に愛らしいキャラクターが沢山出てくるのですけれども、これを描いていらっしゃる時と言うのはどんなことを思いながら描いていらっしゃるのでしょうか?
悟東:仏様のことに関しては、”仏様のお目付け”が付いていると言うか、仏様OKが出ないとファイル毎消えちゃうと言う怪現象が起こるんですよ。
由結:えっ!?どういうことですか?折角描いたものが消えてしまったりするのですか?
悟東:もしくは描こうと思って手が動かなくなるんです。全く動かなくなって、それでそういう時は本当に変な話ですけれども、祈って。私は御本尊様お不動さまなものですから、お不動さまに祈っているとハッと描けなかった理由とかが分かるんですね。それでそこからまた描き直すみたいな。
由結:へー!例えばどんなことが起こるのですか?
悟東:一番多いのはですね、”本当の所を描いてない、格好つけてる、何か良く見せようとしている”と言う時に「ふふん、かっこいいだろう!」と思って描こうとしていると「あれ?」と描けなくなったり、ファイルがポーンッと消えちゃったりとか、コンピューターフリーズしちゃったりとかですね。
由結:うわー!ちょっと鳥肌が立ってしまいました。そんなときは、あとで自分を見つめ直すきっかけみたいなことになるのですか?
悟東:はい。お不動さま、格好つけるのは大嫌いなもので。
由結:はぁ~。お不動さまがついていらっしゃると言うことなのですが、それぞれ仏様によっても何かご教示になることが違ったりするのでしょうか?
悟東:そうですね。例えば阿弥陀さまを描かせて頂いたり、色々な他の仏様の時はやっぱり”その仏様が皆さんにどんな所を一番接して欲しいのか”と言う部分をちゃんとつかまえないとやっぱり「違う」と言う感じで。「ちょっと違う」みたいな。
由結:とっても奥深いのですね。
悟東:でも私が至らないだけなのですけど。
由結:毎日お祈りをしていらっしゃるとか。もちろん日課だとは思うのですけれども、ご自分の中でそれは人生の中で一番大事なことなのでしょうね?
悟東:そうですね。大好きなことでありますし、やっぱり本当に大好きで面白くて気持ち良くて。祈ることは本当に楽しいのですね。それで、かと言ってただ単に楽しいだけじゃなく、やっぱり厳しくもあって、その中でちゃんとしたバランスを持って行けるように、日々祈っているのですけれど。
由結:何でも仏教が凄く面白いと感じられたとか?
悟東:凄い面白いです。とても密教は深いんです。
由結:どんなことが一番ご興味がありますか。
悟東:そうですね。まず最初に引き金になったのが”仏教聖典”と言う本だったのですけど、そこから更に他の本を読んでいく中で「やってみなきゃわからないよ」と言うのが”密教”だったんですよ。
由結:なるほど。実践すると言うことですね。
悟東:えぇ。「でも実践するのと頭の中で理論としてあるのが本当に違うんだ」と言うのが実感できるのが”密教”なのですね。だから自分で祈って、本当に色んな祈りかたがあるのですけれども、まず加行という修行で習ってですね、その後いろんな中で自分に本当に合った仏様の祈りを密教の祈りかたでやっていくと、それがまぁ本当に凄い面白いのですよ。自分の成り立ちとか、世界の成り立ちとか、宇宙の成り立ちとか、全部その中にギュッと入っていて、何も欠ける所がないんです。そこにどれだけ自分が本当に入っていって、それを実感してこれるかと言うのが、日々の祈りの中での研鑽になるのですけれども。
由結:本当に奥深いですね。
悟東:すっごい面白いんです!同じことをしていても全然違うんです。
由結:とにかく実践。考えるだけではないと言うことなのですね。
悟東:そうなんです。実感なので、漫画の表現で少しでもそれを、その面白さを出せたらいいなと言うのが。
由結:なるほど!それで漫画で表現して皆さんに伝えようと思われた、と。今仰って頂いていた素晴らしいこの漫画。とても皆さんに分かりやすく解説もしてくださっているのですが。たくさんのご著書の中の一冊、”教えて! 仏さま -あなたに寄りそう仏さまBOOK”。なんとこの番組をお聞きの皆様にプレゼントと言うことですので、抽選でプレゼントさせて頂きます。
悟東:どうもありがとうございます。
由結:ありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン2週目
由結:さぁそれでは、本日の素敵なゲストをご紹介致します。高野山真言宗尼僧・漫画家ヒプノセラピストの悟東あすかさんです。よろしくお願い致します。
悟東:よろしくお願い致します。
由結:先週もそうでしがた、悟東さんがご登場なさると、スタジオの空気が清らかで温かいものに一変します。
悟東:いや。ちょっとしたゆるキャラみたいな(笑)。
由結:悟東さんの周りは、皆様も凄く暖かい気持ちになっている気がします。
悟東:ニッコリ笑って頂けると何よりでございます。
由結:悟東さんは素晴らしい漫画をお描きでいらっしゃいます。仏様、仏像のご本”幸せを呼ぶ仏像巡り”など、様々なご著書を沢山出していらっしゃいます。そして悟東さんは阿闍梨でいらっしゃるわけなのですよね。
悟東:高野山では中々阿闍梨という言葉を使わないそうなのですけれども、一応修行”加行”と言うお坊さんの密教僧の根本になる修行を終わって、”伝法灌頂(でんぼうかんじょう)”を終わると言うことは終わっております。一応他宗では”阿闍梨”と呼んでおられますけれども、普通にご住職のかたがたは皆さん阿闍梨ですので。
由結:なるほど。阿闍梨になる為に様々な修行があるとお聞きしているのですけれども、どんな修行をなさるのですか。
悟東:高野山の場合、100日間籠らせて頂いてですね。その間一切の俗世のことは絶ち切られて、家族とも一切連絡取れません。
由結:まぁ!
悟東:親が亡くなったり、家族亡くなったりしても、その報告がもし私が耳に入れた途端にその行は全部ゼロになってしまうのです。ですので、皆さん亡くなっても終わるまでは知らされないんです。
由結:とても厳しいのですね…! 想像を絶する修行だと思うのですけれども。
悟東:いや、私落ちこぼれで、なんとかかんとかしがみつくようにして修行を終わらせて頂いたのです。
由結:はぁ~!他にはどんなことをなさるのですか。
悟東:まず加行と言われているものは、最初に”礼拝行”と言うヒンズースクワットのもっと深いのみたいな、五体投地ですね。両肘両膝とをおでこでパーッとつける。それでまた立ち上がってまた祈ると言うのが、かなりの量ございまして、途中まで本当に毎日毎日毎日毎日。夏だと足元に汗だまりができるぐらいですね、それをするのですけど、その他に座って祈ると言う基本のことをするのですけども、真言宗の場合は仏様にどのように来て頂いて、お供えをして、どのようにご接待をするかみたいなのが基本になっているのです。おもてなし。仏様におもてなしをさせて頂くと言うのがまず基本にあるわけですね。それでその色々な作法とかですね、真言もかなり長いもの覚えていなきゃならなくて。やっぱりそれが凄いいっぱいあるんですよ。その真言を唱えて”観想(かんそう)”と言うのがあってですね。その真言を唱える時に”どういうことを想わなきゃいけない・思い描かなきゃいけない”と言うことが全部決まっていて、それで一句一語たがわず、全部暗記しなきゃいけないんです。
由結:へー!そうなのですね。どんなことをイメージ・想像しないといけないのですか?
悟東:例えばですね、そのお姿であったり、その一言でパーッと光が放たれて、全ての中がその中に入っていくみたいなとかですね。あと、観想の他に手で印を結ぶんです。それが一つの体の動きとして、その印を結ぶことによって仏様を体現する。それで想いも仏様になる、言葉も真言で仏様の言葉なのです。それでそういうことがいっぱい入っているような。どれが一つ欠けてもいけないと言う。
由結:全て暗記してないといけないわけですね。
悟東:暗記と言うよりは、本当に次第書は出してもいいので、ダーッと書かれているのですけども、いちいち読んでたら間に合わないので。
由結:そうですよね。その言葉を言っている時に想像と言うか、イメージも伴っていないといけないのですよね。
悟東:伴って、印もちゃんと指定の印を組んでいると言うのがしなきゃいけないことなのです。
由結:実際それをやっている時に、例えば仏様になりきると言うか、なった状態で言葉を発したりなさるのでしょうか。
悟東:なり切るなんていうのはやっぱり思えないですよね。なり切ると言うのは思っている時点で違うものなので。本当に仏様に、こちらは本当に敬意を表して一生懸命祈っていくわけなのですけども、祈っている自分と言うのが途中でスッといなくなっちゃう。それがやっぱりその一つの段階なのかなとは思うのですけども。私が落ちこぼれなもので、ちょっと偉そうなことは言えないのですけど。
由結:我がないと言うか、そういう状況と言うことなのでしょうか?
悟東:そうですね。体力もかなり、祈っている段階でヒングースクワットのような五体投地ですとか、あと何キロもお参りの為に歩いたりですね、掃除も。修行道場の掃除とかです。色んなことを合わせると、普段の生活よりも遥かに体力使うんですよ。それで体力も何もかもなくなって、ギリギリの状態でそれをやっているのですよ。だからどこにも余裕と言うものがないので、思っている自分と言うか考えてる自分がなくなりますから。もうギブアップになって、両手を挙げて「だめだー!」と言う所でやってるのですね。
由結:あー、凄い。もう極限と言うか本当にその状態になる行。想像を絶します。
悟東:そうですね。特に私、体力なかったので、他の方はちょっと分からないのですけど。私はもう完全にギブアップの中で。
由結:体力がない場合でも志願できるのですか。
悟東:私が高野山大学の加行道場に聴講生として入って受けたのですね。だから結構年いってから入って、皆さん学生さんなのですよ。20代前半で、10代のかたもたまに混ざっているような。そこでやっぱり結構年いったおばちゃんが入っていってですね、同じことをするとアップアップになって。もう本当に全部限界超えていたと思いますね。自分の力じゃちょっとできないなと。
由結:うわー!でもその限界の状況を突破したのでしょうね。
悟東:突破と言うより、ズルズルと皆さんに引きずられていったみたいな。同じ修行仲間とかに随分助けて頂いたりとかもして、先生に色々お目こぼしも頂いたと思うのですけれども、なんとかかんとか。そういった感じでは、こざかしいことは考えられなかったということはありますね。
由結:はぁ~!なんでも、高野山の修行と言う所に行くにあたって、お嬢さんが送り出してくださったとか?
悟東:えぇ。まだ娘が7歳8歳の頃だったのですよね。それで本当だったら寂しい時じゃないですか。それが娘が「本当に行きたいんじゃないの?」と。最初言って主人から否定されたんですよ。「そんなの別になくたっていいじゃん、主婦なんだし。」とかと言うことで。でも娘が「でもちょっとパパ待って。」と言って、「お母さん本当はそれ受けたいんでしょ?」と「受けないと後悔するんじゃないの?一生後悔するんじゃないの?」と娘に言われたんですよ。それで「うーん!」とうなっていたら、「一生後悔するようなことは私の為に諦められちゃヤダ!」と。でも7歳8歳の娘ですよ?それでちょっとびっくりしてたら、娘が旦那に言ってくれたんですよ。「行かせてあげて」と。「大丈夫だから。私がお父さんの面倒見るから。」と。
由結:いや~しっかりしたお嬢さんですね!
悟東:きっと観音様が娘に降りてくださったのでしょうね。
由結:なるほど!素晴らしい決意だったと思うのですけど、それに後押しされて今があると言うことですよね。
悟東:はい。もうそう言われちゃうと主人ももう反対ができなくなってしまって、それで私は行くことできたのですけども。近くのお寺の凄いご懇意にしてくださった、当時大学に関わっておられたご住職の後押しと、あと高野山での師匠の強烈な後押しと、その後押しがあって聴講生入ってその行に入ることができたと言うのもあったんですね。
由結:全て様々なお導きなのでしょうね。
悟東:もう本当に助けられて助けられて助けられてなので、私は本当に自分が頑張ったと言う所じゃなくて、皆に押されて助けられて助けられて助けられて、それでできたなと言うのが正直な。本当に落ちこぼれさんなので。
由結:こんな素晴らしい仏様のご本なども書いていらっしゃって、漫画で表現なさっているのですけれども、これらが皆様のそういったお力添えもあり、御縁もあって、そして今に至ったものの集大成と言うかですね。それを表現し続けているのでしょうね。
悟東:そうですね。そうやって皆様から助けられて、今の状況があって、その中でもの凄いやっぱり面白いんですよ。「こんな素晴らしいものは世の中にないな」と言うのが私の中では”密教の世界”なんです。
由結:なるほど!
悟東:もう面白いし楽しいし、幸せ。本当にすぐに幸せになれる。
由結:ご本を読んでいると凄く力付けられたり、とても感動する内容になっていますので、皆様に是非ご覧頂きたいと思います。
悟東:どうもありがとうございます。
由結:はい。それでは二週に渡りましてご登場頂きまして本当にありがとうございました。
悟東:どうもありがとうございます。
由結:また是非遊びにいらしてください。
悟東:ありがとうございます。
プロフィール |
東京都三鷹市生まれ。家庭の主婦から発心、得度して高野山で修行をして伝法灌頂を受ける。1984年高野山別格本山西禅院徒弟として得度。1989年集英社「週刊少年ジャンプ」第30回赤塚賞準入選。2006年高野山大学加行道場大菩提院にて加行成満。同年伝法灌頂を拝受。2007年~2009年高野山大学にて中院流の一流伝授を拝受。日々手作りの密壇で祈り続けながら、漫画やイラスト、エッセイなどを描く。近年、イーハトーブクリニック萩原医師のもとでヒプノセラピーを習得し研鑽している。 |