江川悦子さん 株式会社メイクアップディメンションズ 代表取締役 特殊メイクスーパーバイザー「造形への愛と信念」
銀座ロイヤルサロン1週目
目次
- 1 文化庁2021年度芸術選奨映画部門で“文部科学大臣賞”を受賞!
- 2 戦国時代のかつらを精巧に表現
- 3 特殊メイク業界に関心を持ったきっかけ
- 4 江川さんの“ものづくり”の原点
- 5 “チャレンジして当たり前”の精神
- 6 後進の育成について
- 7 特殊メイクとデジタルの融合
- 8 普通のメイクと特殊メイクの違いとは?
- 9 特殊メイクに欠かせない習慣は“観察すること”
- 10 役者さんに似合う“髷と剃りのバランス”
- 11 江川さんが参加した初めての時代劇―山崎勉さんのエピソード
- 12 NHK大河ドラマ“青天を衝け”の老けメイク
- 13 女性の老けメイクで気をつけていること
- 14 特殊メイクだと気づかれない坊主頭
- 15 江川さんにとって特殊メイクとは
- 16 リスナーへのメッセージ
- 17 声解析・声診断とは
- 18 “歌うこと”=癒し
- 19 江川悦子さんのプロフィール
文化庁2021年度芸術選奨映画部門で“文部科学大臣賞”を受賞!
由結:さあ、それでは本日の素敵なゲストをご紹介いたします。本日は『ゲゲゲの鬼太郎』、そして『おくりびと』、NHK大河ドラマの数々、そして、三谷幸喜監督作品、それから北野武監督作品…と、数え切れないほどの名作に参加されていらっしゃいます特殊メイクスーパーバイザーの先生をお呼びしております。株式会社メイクアップディメンションズ代表取締役 江川悦子さんです。よろしくお願いいたします。
江川:こんにちは。よろしくお願いします。
由結:はい。本日はお忙しい中お越しいただいて本当にありがとうございます。
江川:いえいえ。有難うございます。
由結:江川さんは、2022年3月、優れた業績を表彰する文化庁の2021年度芸術選奨映画部門で文部科学大臣賞を受賞されました。おめでとうございます。
江川:ありがとうございます。
由結:改めまして、この賞を受賞されてどのようなお気持ちですか。
江川:「長く続けてこられたんだな」という感謝の気持ちと、やはり関わってくださったたくさんの方たちとともに一緒に受賞したような気持ちで嬉しく思いました。
映画「ザ・マジックアワー」
由結:この仕事を始められて35年位になられるそうですね?
江川:多分もっとかもしれません。
戦国時代のかつらを精巧に表現
由結:この賞は、映画『信虎』と映画『マスカレード・ナイト』で担当した特殊メーク技術に対する評価とともに、長年にわたって携わられてきた優れた業績が認められての受賞だったそうですが、例えば、『信虎』。武田信玄の父信虎の晩年を扱った好評の作品ですが、あのかつらがものすごく印象的でした。戦国時代のかつらを精巧に表現されていたそうですが、どんな点に工夫されたのでしょうか。
江川:天正時代っていうのは、やはりワイド、私たち、“ワイドハゲ”なんて言ってますけど(笑)、かなり剃り込みが深くて毛が少ない感じなんですね。それを表現するのに、普通の羽二重では絶対難しくて…しわができたり、頭の形に沿ってないんですね。それを頭部の型を取ってきちっとぴったり合うものをするので、まず頭がとてもきれいに、そして軽いし締め付けがない…いろいろといい点がかなりあります。
由結:役者さんの感想はいかがでしたか。
江川:「楽で助かる」と言っていただいてますね。時間も当初ちょっと始めたころは少し時間かかってたんですけど、いろいろとスピーディーにできる方法を改良したので、わりと早くてあとが楽だから、着けてるの忘れちゃうよって言っていただくと、「やった!」という感じなんです。
特殊メイク業界に関心を持ったきっかけ
由結:素晴らしいですね。もともとこの特殊メイクの業界に関心をお持ちになったきっかけは何ですか。
江川:『猿の惑星』『スターウォーズ』などのSF物の映画が好きでしたが、まだそれを見てたころは日本にいて、自分がそういう世界に入るなんてもう欠片も思ってなかったんですよ。むしろなんかこう、「雑誌の編集者になりたい」くらいなことしか考えてなかったんですけれどもという状態でした。
由結:もともと雑誌『装苑』の編集に携わってらっしゃったということなんですけれども、その頃は特殊メイクというのは頭にはあまりなかったんですね。
江川:はい。全くなかったです。雑誌編集の途中で結婚してたんですけれども、夫の転勤というのがありまして、もう青天の霹靂っていうぐらいでした。別に商社ではなかったので、海外へ行くっていうことはもう欠片も考えていなかったんですね。そしたら「アメリカへ行く、それもロサンゼルス」
っていうから、もう本当にびっくりでしたね。それがきっかけで、好きで入った仕事の編集だったんですけれども、ちょっといったん辞めて、「これはもうアメリカへ行ってなんか新しいことやろう」
みたいな、そんな感じでした。
由結:そうですか。それもすごい人生の転機だと思うんですけれども、それでアメリカに行かれて、そこで特殊メイクに出会うんですか。
江川:そうです。最初は数々映画を見ながら言葉をもう早く吸収したいっていうのがあったので、結構見てたんですね。その中に『狼男アメリカン』っていう映画がありまして、若者が月夜の晩にオオカミに噛まれてその後オオカミに変身するっていう話なんですけれど、その変身の様子は、今だったら、こんな感じかってがっかりするかもしれません。でも、CGのないあの時代、全て作ってるって考えたらすごかったんですね。骨格が伸びてくるんです。口がオオカミになるためにバキバキと音を立てて伸びていく。「どうやってこんなことするんだろう」って。そのころは特殊メイクについてちょっと視野には入りかけてたんです。アメリカでやるとしたらまだ珍しいなと思っていたところ、この作品を見て、「やってみよう」
って思ったんです。
由結:そして、行動に移されたんですね。そういった行動力は元々おありだったんですか。
江川:そうですね。元々はなかったんですけれど、徐々についてきた気がします。
江川さんの“ものづくり”の原点
由結:何もないところから生み出すという“ものづくり”にはご関心がおありだったんでしょうか。
江川:そうですね。“ものを作る”っていうのは雑誌の編集のときにファッション雑誌を担当していたんですけど、後ろのほうに手作りコーナーみたいなのがあって、実は2年経った頃、ファッションというよりそちらに興味があって、面白かったんですよ。作るものって、もともとはないものを作るんです。巨大なクッションがバースデーケーキみたいだったり、バナナの形をした寝袋だったり、いろいろ面白いなと思いました。「あのページを担当したいな」
って思ってるうちに転勤ってことになり辞めたんです。だから“ものを作る”ということにちょっと惹かれてたんだと思うんですよ。向こうでそういうことないかしらなんていって探しました。そこで一致したのが特殊メイクだったんです。
由結:そうでしたか。特殊メイクを学ぶにあたり、師匠や学校とのご縁ができたと思うんです。江川さんはするすると良い波に乗ってこられたという印象を私は受けていますが、その点はいかがですか。
“チャレンジして当たり前”の精神
江川:そこはあんまり意識したことはないですね。全く意識してなかったというか、やりたいっていう気持ちが強くて、「チャレンジして当たり前」
っていうか、そういう当たり前みたいな気持ちになったのは、その現地で行った学校のクラスにフランスから来てる女の子がいて、その彼女の影響なんです。彼女すごく積極的なんですよ。私がちょっとでも尻込みしようものなら、「なんで?そんなことないでしょ
ってあとをボンと押してくれるようなタイプの子なんです。「英語でコミュニケーションが難しいかもしれない
って私が言うと、だって「私たちコミュニケーション英語でしてるし何の問題もないでしょ」
みたいな感じです。その彼女の影響も大きかったですね。
由結:素晴らしいお友だちに恵まれたんですね。その後アメリカでどんどんお仕事も増えていった矢先に日本に戻ってくることになるわけですよね。そのときのお気持ちはいかがでしたか。
江川:もう『ゴーストバスターズ』とか結構面白い作品に参加ができて、その途中で妊娠してましたので娘を出産しました。子連れで一人残って全部やるのは大変かもしれないっていう気持ちと、ちょうど波に乗ってきたから本当はリック・ベイカーさんの工房でこのままあと何年か修行したいっていう気持ちもありました。だけど、「帰ったら帰ったでなんかできるだろう」
っていう、そんな感じだったんですよ。
由結:なるほど。すごく潔くてさっぱりされてるんですね。
江川:あんまりうじうじしないですぐ決断でしたね。
由結:いや~かっこいいですね!
江川:いやいや。心掛けてるだけなんですよ。
由結:帰国後、日本で特殊メイクをしていた方はいらしたんですか。
江川:男性が一人いらっしゃったんです。日本でどんな材料で買えるのか、ほとんど買えないっていうのはもうわかってたので、せめて買えるものは日本で買いたいからどんな材料屋さんがあるか聞いてみようかなと思って、たまたまその人が仕事をしてた映画があったんですね。そのプロデューサーが夫の知り合いだったから、ちょっと聞いてもらって会って、材料はどうやって日本のを入れてるかとかリサーチさせていただきました。
後進の育成について
由結:なるほど。そういう意味でも運を持ってらっしゃるんでしょうね。今ご自身で長年業界を引っ張ってこられ、現在後進の方を育成していらっしゃると思いますが、その点はいかがですか。
江川:はい。当初から珍しい職業だったしやってる人が少ないから、とにかく養成しなければっていうことで、学校ができたんですね。「先生やってください」
って言われて、「仕事の合間でできることってあんまりないかもしれないけど協力します
って言ってやってる間に卒業生をスタッフにして、また何年か経ったら違う人が入りみたいな、だんだん増えてきて、結局今会社10人くらいいますけど、多分全員かな。卒業生かもしれないです。
由結:素晴らしいですね。この収録のためのやりとりでお電話させていただいたら、皆さん電話口の受け答えが素敵でとても関心していたんです。様々な教育にも力を入れてらっしゃるのかなと思いました。
江川:それはでも嬉しいですね。ありがとうございます。たまに私が会社に電話をかけたとき、3コール以上待たせるの駄目だと言ってるんですよ。「ここ連絡つかないな、もう切っちゃおう」
みたいになるかもしれないですからね。皆作業している最中も多いのですが気をつけています。それから、「はい。メイクアップディメンションズです」みたいに覇気のない状態で出たら怒るんです(笑)。「シャキシャキと元気よく出てくれる?」って言ったりしてるので。大体みんな大丈夫です。
由結:そうですか。スタッフの皆さんの熱意とともに、キビキビやってらっしゃるんだけれども温かさが伝わってきました。
江川:本当ですか。それはよかったです。ありがとうございます。
由結:今後さらに伸ばしていきたい点はどんなことですか。
特殊メイクとデジタルの融合
江川:そうですね。自分たちで企画してできること、特殊メイクも踏まえた作品づくりは少しずつやっていますし、デジタルも融合してうまくいいとこ取りをしてさらにいい映像作りをすることを目指していきたいと思っています。
由結:“いいとこ取り”…具体的にはどういう感じなんでしょうか。
江川:100%特殊メイクで毎回やるとなると負担が役者さんにも多い。だから一回だけきちっとやって、それをデータで取り込んでAIで覚えてもらって、それをあとで足していけば普通に演技してるんだけど若い顔が作れたりします。そういうことをいろいろやっている最中です。
由結:今高画質で鮮明な分、ある意味粗が見えたりすると思いますが、その部分に関しても様々な挑戦があるということですね。
江川:そうですね。自分で見届けて最後まできれいに仕上げたいなっていうのはあります。
由結:素敵なメッセージ有難うございました。来週もまた江川さんに出ていただきまして、このお話の続きを伺っていきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。
江川:ありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン2週目
普通のメイクと特殊メイクの違いとは?
由結:さあ、それでは本日の素敵なゲストをご紹介いたします。株式会社メイクアップディメンションズ代表取締役の江川悦子さん。特殊メイクスーパーバイザーでいらっしゃいます。どうぞよろしくお願いいたします。
江川:よろしくお願いします。
由結:はい。江川さんには2週に渡りご登場いただいております。ありがとうございます。そもそも普通のメイクと特殊メイクの違いっていうのはどういうものなんでしょうか。
江川:そうですね。端的に言うと、立体的なものと平面的なものっていう表現なんですけど、顔にただこうペイントだけで立体感を作るのが普通のビューティーメイクとすると、特殊メイクはやはりちょっとなにかプラスアルファで人工皮膚を貼ったりして、ナチュラルに仕上げていくみたいな、そこの違いがあります。いっとき私が“立体美粧”って名付けた時期もあるんですけれども、そういう意味合いを込めています。
特殊メイクに欠かせない習慣は“観察すること”
由結:なるほど。江川さんが名付けた立体美粧ということなんですね。よくこの職業としてやられているということですので、ご自身でなにか職業病だなって思うようなことってあるんでしょうか。
江川:観察するっていうことがすごく大事なんですよ。なんでもリアルに作らなきゃいけないから、老人なら老人ってどんなところにシワが入ってどうなるんだろうとか。鼻の形がみんな違うから、そういうのを観察するっていう癖があって、普段はほとんど車で動くのでそんなでもないですけど、電車とか乗ったらいろいろな方のお顔をさりげなく見ます。
由結:そうなんですね。じゃあじっと見ると…。
江川:そうそう(笑)。それはまずいので、失礼だし、さりげなく。耳とかでもなんかこう普通に髪がおりててもちょっととがってたりして、宇宙人の耳みたいとか思ったりする。変な意味じゃなくて「作ると楽しいな」
みたいな感じでつい見てしまうんですけど。
由結:なるほど。そうなんですね。人々を観察する中から発想がわくこともあるのでしょうね。
江川:はい。あります。
役者さんに似合う“髷と剃りのバランス”
由結:そうですか。江川さんはNHK『麒麟がくる』『青天を衝け』、現在放送中の『鎌倉殿の13人』も参加してらっしゃるということなんですが、例えば徳川慶喜役の草彅剛さん。頭、髷の部分が美しくて、草彅さんの気品が感じられました。その役者さんの良さを引き出す工夫はどのようになさっているのでしょうか。
江川:そうですね。トータルに見てそのお顔に合う、やっぱり中剃りの部分もどのくらいだったらちょうどいい、似合っているかとか、そういうのは考えます。時代的に天正だと“ワイドハゲ”って言ってやったりしますけど、もう江戸ですから狭くていいわけですね。じゃあ狭さ加減を史実に則ってお写真とかもあるからそれも参考にするけれども、やはり実際にメイクするときにはその役者さんに似合う形にちょっとアレンジします。
由結:なるほど。ちょっとした角度だったり、恐らくどのあたりから剃るのかというところですよね。バランスがあるんですね。
江川:はい。とても大事なんです。
由結:そうですか。これはきっと街を歩く方を見たときに、この方はこれだったら似合うかなみたいな見方をされているのでしょうか。
江川:そうです。相通じるものはありますね。
由結:そうなんですね。現場や役者さんによっては、ものすごく苦労したり、工夫をこらしたケースはあったのでしょうか。
江川さんが参加した初めての時代劇―山崎勉さんのエピソード
江川:そういえば私、時代劇の一番最初のお仕事っていうのは、山崎努さんでしたね。それは眉付きかつらってなんか誰かが命名してくださって記事になったことがあるんですけど、要はおでこまで全部もう、おでこから上全部はげてるところまで作って、この眉も作り物の眉、リアルにこう再現したっていうのが時代劇に絡んだ最初なんですよ。あれは80年代後半だったと思います。
由結:きっと人相も雰囲気もかなり変わるのでしょうね。
江川:そうですね。そのときは秀吉の役で、歴史上の絵にはここに三本シワがあって、なんかそのシワをつけたいっていうご希望があったんです。それで私が再現させていただいて、それをするためにも人工皮膚を貼らないといけないので、眉骨の部分と頭のてっぺんとおでこを合体させたものを作ったりしてメイクしたんです。
由結:山崎さんはどのようにおっしゃってたんでしょうか。
江川:楽しんでくださったと思ってます。わかりませんけど(笑)。
NHK大河ドラマ“青天を衝け”の老けメイク
由結:きっと役者さんも気分が変わり、役により入り込めるという感覚があるんでしょうね。
江川:それはあったっていうふうに聞いてます。やはりすっぴんだと自分だけど、なんかこうメイクされることでその役へ近づいていくから、そのままスッと役に入りやすいとか。それこそ『青天を衝け』だと若い方が役者さんだったので、かなり歳とっていくんですけど、最初のころはあんまりメイクをしなかったんですね。特殊メイクでは。それでちょっとやっぱり老けてないとこの役やりづらくなってきたみたいな、そういうご意見があって、もう早めてやろうみたいになって。
由結:へぇ~少し老けるのを早めさせて。
江川:そうですね。いろいろあります。
女性の老けメイクで気をつけていること
由結:今、老けメイクとおっしゃったんですが、やはり女性としては役柄であってもあまり老けたくない気持ちってあるのかななんて思うんですけど…。女優さんはどうなんでしょうか。
江川:「老けたくない」
っていう気持ちは皆さんおありです、当然。とくに美しさで売っている方だとそれはもう変化がちょっと怖いっていう気持ちがあるので、特殊メイクをするときには、かなりやりとりをして、この役だからこのくらいは老けないとっていうお話でまとめていこうとするんです。一度経験したのは、ご本人がすごくやる気があって、「こんな写真が残っているから、この役はこのくらいシワシワに作ってくれないと入っていけない」って強く強くおっしゃるので真に受けて、しっかりそれに近いイメージで一度作ってテストメイクをしたんです。そうしたら、「…やりすぎてる。これじゃ私のファンは悲しむわ」みたいになって、またちょっとマイルドバージョン作り直して、また再度テストしたりとか、そんなやりとりが実際にありました。
由結:わぁ~そうなんですね。実際にお話をしながら近づけていく、そういう過程があるわけなんですね。
江川:はい。かなり余裕のある作品ではそうなんですけど、そういうのがないともうパッと支度しなくてはいけない。そうすると、「ちょっと老けすぎて寂しい」
みたいな表情になったりとか、やっぱり人は老けた顔を見ると気分が落ち込むんですよ。
由結:そうですよね。
江川:やっぱりこうきれいで明るくなってるとルンルンっていう気分が出てきちゃうんですけど、もうそのへんはものすごくはっきりしてて、だから役的にほんわかとしてやさしいおばあちゃんを演じるんだったらほんわかと作ってあげないと駄目とか。そのさじ加減が重要です。そんな経験をきっかけに、私はすごく気にしてやりとりするようになりましたね。
由結:いや~細やかな心配りですね。特殊メイクでその方が新たな自分を発見したり、自分はこういう役もできるかもしれないとか、そういう新たな境地になることなどもあるんでしょうか。
特殊メイクだと気づかれない坊主頭
江川:そうですね。実際にあると思います。老けメイクで言えば、役者さんが「自分のおじいちゃんはこんな顔してるよ」って途中で言い出したりすると「えっ?そうなの?」って。別に見せていただいたわけじゃないからおじいさまのお顔は知らないので、それはなんだかすごく嬉しい反応ですね。あと、坊主メイクにしても、つるっぱげのきれいな坊主を作っていて、間近で見てる俳優仲間さんが「思い切ってやったね」って。つまり本当に剃ったと思って会話してたっていうんですね。そういうの聞くと、すごく嬉しいなと思いますね。
由結:へえ~すごい!本当に剃ったのと見間違うぐらい精巧にできてるということですよね。
江川:そうそう。そうなんです。でもそれはつまり逆説的に言うと、特殊メイクじゃなかったと思ってるわけですから、全然そこが喜んでいいのかみたいなところがあるんですけど(笑)。
由結:なるほど。ちょっと寂しいくらいですね(笑)
江川:はい、ちょっと寂しいところはあります(笑)。素材はもう本当に絶えず工夫して柔らかく、調合して作るものなんですけど、その調合を柔らかくしてみたり、ちょっと硬くしたりとか、どこの部分は柔らかいほうがいいけど、どこはなんとかとか、役者さんによって違いますからいろいろやりながら、止まることがないというか、終わりがないっていうような気持ちです、今。
江川さんにとって特殊メイクとは
由結:そうなんですね。江川さんは、この度、文化庁の2021年度芸術選奨映画部門で文部科学大臣賞を受賞され、関わってくださった皆さんで作り上げたものなんだって先週おっしゃっていらっしゃいましたが、“ものづくりを通して形にして世の中に出していくこと”の喜びがひしひしと伝わってきました。
江川さんによって、ものづくり、特殊メイクの世界はどんなものなんでしょうか。
江川:いわゆる縁の下の力持ち的なことで考えていくと、目立たない方が成功しているというイメージです。みんなの力で作っているということは、完成すると感じます。誰が欠けてもできないよねみたいなところがあるんですね。だからただ部署的に特殊メイクっていうのは関わりが薄い作品もあるんですよ。一番最後で何十年後にポーンって飛んで老けてるからこの老けメイクがいるだったり。1日か2日、ちょっとしか出番がないから、1本の作品と言っても、本当に関わりが薄いからアウェイな感じなんですよね。
ところが、 “この顔”=“この出番”…となると毎回ですから、こちらの出動日数にもなっていくんですね。そうすると関わりがどんどん深くなるからなんかもうファミリーみたいな感じになっていったりします。そういう感覚がいろいろ作品によって違ってて、それはそれで楽しくやってます。
リスナーへのメッセージ
由結:いや~本当に江川さんのものづくりへの情熱、人々への愛を感じさせて頂きました。最後にリスナーの皆様に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
江川:特殊メイクってホラー映画とか妖怪とかそういうものしか知らない方って多いと思うんですね。私もそういう作品いくつも関わっているんですけれど、普通のドラマ、普通の作品の中で特殊メイクってかなり使われています。ですから、作品をご覧になるときに、「もしかしたらこれ特殊メイクかな」
と思って見ていただけたら嬉しく思いますね。
由結:なるほど。これから、そういう目線で見ちゃいますね(笑)江川さん、本当に貴重なお話の数々、ありがとうございます。
江川:いえいえ(笑)。
由結:来週もご登場いただけるということで、とても楽しみにしております。本当にありがとうございました。
江川:ありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン3週目
声解析・声診断とは
由結:さあ、今週は声診断コーナーです。ユウキアユミワールドアカデミー稲井英人学長が担当するコーナー。これまでに2万人以上の臨床データのある声解析、声診断ソフトにより、ゲストの方の声の波形を読み取り、その方の個性と能力を紐解いていきます。本日のゲストは株式会社メイクアップディメンションズ代表取締役、江川悦子さん。特殊メイクスーパーバイザーでいらっしゃいます。どうぞよろしくお願いいたします。
江川:よろしくお願いします。
由結:はい。そしてお相手はユウキアユミワールドアカデミー学長の稲井英人さんです。よろしくお願いいたします。
稲井:よろしくお願いします。
由結:はい。それでは早速進めていただきましょう。
稲井:さあ、江川さん。
江川:はい。ドキドキ。
稲井:いよいよ特殊メイクのきかない世界へようこそ(笑)。
江川:(笑)。本当ですね。
稲井:この声というのは、普通にしゃべっていただくだけなんですね。そして12秒ほどで波形が12色の色と波形で出てきます。これはその人が相手に与えてる印象とか相手に与えてる、この人ってこういう能力、才能があるんじゃないかなというのが心の状態が目でわかるというものなんですね。江川さんの秘密がわかるかもしれません。
江川:大変です(笑)。
稲井:はい。大丈夫ですよ(笑)。これまでいろいろと語っていただきましたが、こういうのも慣れていらっしゃると思うんです。この日ごろしゃべる場は多いほうなんですか。
江川:そうですね。取材もありますし、講師をするときもありますし、講演で呼ばれるときもあったりで、しゃべりは多いかと思います。
稲井:こういう感じで出てきます。講演のとき、あとは例えば授業で生徒に教えるときのしゃべりをちょっとやってみません?「皆さん、こんにちは。おはよう」といつもやってるわけじゃないですか。そんな感じで12秒ほど。どうぞ。
江川:はい。おはようございます。みんな元気にしてた?週末どうでしたか。楽しく過ごせたかな。今日も元気でやっていこう!
稲井:はい。これが最初のが先ほどしゃべっていただいたもので、この左側のが「みんな元気?」ってやったときなんですね。どんなふうに見せるかといいますと、これですね、この人間の体が楽器だと思ってください。しゃべったときはその人の演奏なんですね。演奏。それを聞いた人がどんなふうな印象を持つかというのが目でわかるんです。
江川:なるほど。なんか不思議な感じ。
お相手を凛とさせる!信念あるゴールドの声
稲井:はい。そうです。生徒さんの前でしゃべるときは、必ずゴールド、金色が出ますね。ということは、江川さんがしゃべるとなにか相手が凛としますね。なにか信念とか軸を持ったような方。相手はシャンとしようと思うはずですよ・
江川:(笑)。本当に。それならよかったです。
稲井:いや、こういう方は結構そうなりやすいんです。結構イチローの声なんかもこれ出るんですよね。
江川:そうなんですね。
稲井:はい。わりとなんか一つのことを極めていくような方って、わりとこういったゴールドの声は出やすいんですね。
江川:ゴールドの声。
“触れる”ことに長けたコーラルレッドの声
稲井:はい。それと、あとコーラルレッド、朱色の部分とか赤なんですけど、これは触れるとか触るっていう方はこのコーラルレッドの部分の波形が出やすいんです。まさしく触りますよね。
江川:そうですね。もう絶対触らないと仕事が進まないですね。
イエロー!独自の世界観
稲井:はい。そういう点において触るという感覚、このこれは実は見る、ここが聞く、感じるってところで、この感じる、体の体感覚の非常に能力才能がある方みたいですね。内側に強く出てきてるんです。やっぱり内側もやっぱりゴールドとかイエロー。イエローはマイワールド。ご自分の世界、独自の世界をお持ちの方ですね。
江川:そうですか。いや、確かに全然違いますよね。左右で。
人に向き合うときに出るグリーン
稲井:これは生徒さんに向かったとき。このときには、「みんな」って言ったときにこれグリーンが出てきたでしょ。ちょうどグリーンって胸のあたりなんですね。「みんなどうも」って言ったとき、ふわーって広がった感じ。自分がしゃべったときはゴールドが一番強かった。
江川:なるほど。そうなんですね。
稲井:これが人に与えてる印象なんですね。だから自分の後輩とか後進の人たちを育てるときは恐らくこのゴールドで、こよとかってしゃべってるんじゃないですかね。いかがでしょう。
江川:(笑)。そうなのかしら。なんかあんまり意識したことないから、なんかただただそうなんですねっていうしか言えない感じ。
ものづくりの原点…アーティストの“アクアブルー”
稲井:あと面白いのはこのアクアブルーっていいまして、水色のところ。これは無から有を生み出す。つまりアーティストの方に多いんですね。だから先ほども打ち合わせのときおっしゃってましたけど、いろいろ作っていく。物を作っていく。ないものを作り上げていく。絵描きさんは真っ白な中に描いていったり、作詞家も真っ白の紙に言葉を書いたり、要するにその作っていくということは非常に元々才能お持ちですね。
江川:そうですか。
稲井:はい。っていうふうに言われて、今どのようにお感じになってます?
江川:いや、なんか結果的に今やってることって、当然っていうか、やっててよかったんだなって思うような感じはします。だけど、全く考えてもいなかったので、そういうのが声で出てくるということに今衝撃を受けてる感じですね。
稲井:はい。今の声がこの一番左。要するにこのレッドが出てきましたよね。今度はオレンジとかコーラル、より強くなりました。
江川:はい。すごく出てますね。
稲井:ということは、自分ってそうなんだって思ったときって、これ要するに体の響きを表すんですね。実は人にしゃべるときに、人間の体が楽器だとしたときに、楽器をフルに響かせたときっていうのはやっぱり伝わりやすいんですよね。
江川:なるほど。
稲井:はい。緊張したときは当然ですけどちょっと出にくくなったりするんですけど、今みたいに自分ってこうなんだと思った瞬間、ぶわーっと出てますね。
江川:(笑)。すごい、肌が全然違いますよね。
稲井:そうなんです。
江川:いやびっくりです。
稲井:これは録画録音なんかで聞いてみると、目を閉じてその録音を聞くと変化わかりますよ。なるほどっていう響きをしてるんです。声って無意識なので。
江川:無意識ですか。スピーチとかしてたらどうだったんだろうって今ちょっと逆に不安。
一同:(笑)。
稲井:大丈夫です。スピーチのときも恐らくこのゴールドが中心にきっと出ていく方なんでしょうね。
江川:そうですか。
人を見抜く第三の眼・メイビーブルー
稲井:一つの道を極めていくとか。あとこの第三の眼、必ず出ますね。
江川:第三の眼?
稲井:そう、第三の眼。眉間の位置。
江川:特殊メイクですから(笑)。
稲井:はい。ピピピピッて見抜いて。
江川:“三つ目”みたいじゃないですか。
稲井:やっぱり内側のほう、表に、これを表って表現するんですけど、表はそう出してない。だけど深い部分にやっぱり見抜くというか、恐らくこの方はこうしてこうしてっていう完成した姿を直観力で見抜かないとイメージ通りにならないじゃないですか。そういう点においては第三の目っていうのは内側のほうにもやっぱり動き始めてる。こうやって人間の体って自分をフルに使ってるんですね。
江川:それは本当にびっくりですね。こういうことが分析できちゃうっていうのがすごいこのこれどういう、声の?
稲井:はい。声の周波数ですね。
江川:周波数でこういうことがわかる?
稲井:はい。人間のしゃべりをドレミファソラシドに置き換えるんです、基本。それが気持ちが高揚したときとか、あるいは、うーんと真剣に考えるときっていう、そういうときにはある特定の音が出やすい。その音を色に変えてるんですね。
“歌うこと”=癒し
江川:例えば、だんだん撮影がずっと夜まで続いて、ちょっと疲れてきたときとかにハイテンションで逆に歌ったりするんですね、私。意識してないんですけどなんか歌いたくなる。ワーッてなんか歌うと、みんな、もう危ないとかって言って、冗談で笑われちゃうんですけど、それってどういう現象なんでしょう。
稲井:はい。今のも録ったんですね。今のを録ると、一番赤が強く出たのわかりますか。
江川:そうですね。
稲井:リラックスの状態をイメージしただけでそうなるんです。「私歌うんですね。そしたらね…」って、これ歌ってみます?
江川:(笑)。いやいや、歌は大丈夫ですけど。
稲井:(笑)。はい。でもその状態イメージした瞬間にこの赤が出たということは、実は体が調律されて自分のエネルギーがわき上がってくるみたいです。マゼンタピンクっていうんですけど、全部出てなかった、あんまり出てなかったけど急に出ましたね、一番深いところ。
江川:そうですね。
稲井:ご自分が癒される。
江川:癒される?あ、そういうことで私は歌ったりするんですね。
稲井:はい。人間やっぱりみんなわかってるみたいで、自分の調律方法。
江川:面白い。
稲井:人間の体が楽器だとした場合、楽器は調律しますよね。人間も心と体をやっぱり調律するんですね。お一人お一人がその調律方法を本当は知ってるみたい。
江川:なるほど。そういうことですね。
稲井:これが“頭と心と腹をつなぐ表現”と言うんですけど、要するに自分とつながってると自分が何を欲してるかがわかりやすい。現代人は考えることばかりしてますからね。これが一番ご自身の本来の力を発揮したときの声だと思います。
江川:(笑)。なるほどね。
稲井:はい。もう地道に物事を成し遂げていく力であり、触れる能力、才能、そして自分の芯と軸を持って、そして直観力を働かせながらお仕事されてるんですね。アーティストとして。
江川:えーっ。そんなにフル活動してますか。
稲井:はい。
江川:ちょっとおどろいた。
稲井:いやいや。まだまだこれからのご活躍楽しみですよ。
由結:いや~素晴らしいですね。江川さんの才能の秘密が明らかになりましたけれども、まさに今のお仕事にぴったりの個性をお持ちでしたね。
江川:じゃあ間違ってなかったんですね。
稲井:もちろんです。素晴らしい結果でした。声診断を受けて頂き、有難うございました。
江川:こちらこそ。いい体験になりました。ありがとうございます。
由結:江川さんには3週に渡りまして素敵なお話を聞かせていただきました。今後のさらなるご活躍を心よりお祈りしております。ありがとうございました。
江川:ありがとうございました。
稲井:ありがとうございました。
江川悦子さんのプロフィール |
米国ロサンゼルス在住中、Joe Blasco Make-up Center、Dick Smith Advanced Make-up Courseにて特殊メイクを学び、その後「メタルストーム」「砂の惑星・デューン」「ゴーストバスターズ」「キャプテンEO」「ラットボーイ」などの映画作品にスタッフとして参加。 【代表作】 TV 雑誌の取材、テレビ出演なども多く。代表的な番組として「徹子の部屋」「金スマ」「プロフェッショナル、仕事の流儀」「ぴったんこカンカン」「モーニングバード、Aウーマン」「転職de転職」「Switch インタビュー」「あさイチ」など。 |