TORO TOKYO エグゼクティブシェフ 小河英雄さん「”食べることは生きること” 料理で人を幸せにしたい」
2017年8月17日(木)放送 TORO TOKYO エグゼクティブシェフ 小河英雄(1) |
2017年8月24日(木)放送 TORO TOKYO エグゼクティブシェフ 小河英雄(2) |
由結:本日はTORO TOKYO エグゼクティブシェフの小河英雄さんにお越し頂いています。小河さん、宜しくお願いいたします。
小河:宜しくお願いいたします。
由結:小河さんは世界各国を巡って修行をされて、現在は中南米料理を中心に大使館でも腕をふるっていらっしゃるそうですね?
小河:そうですね。中南米を中心としながら、もちろんフランス、イタリア、スペインなど、そして、自国である日本の料理を手掛けてきました。料理の楽しさや歴史からひもとく食文化というものを掘り下げていく…私自身は中南米の料理にアイデンティティを感じて、今、その料理を追求している最中です。
由結:母国の料理である和食の必要性を感じて、学ばれたのですね。そして、現在は中南米の料理に特化していらっしゃるということですが、何かきっかけがあったのですか。
小河:はい、いろんな国の料理を見て食べましたが、中南米料理は同じ材料のものにしても人それぞれの技術で変わるんです。例えば、皆さんがよく知っているパスタのカルボナーラはどこまでいってもカルボナーラなんです。プラスアルファのアレンジをしようとするときに、中南米料理には無数の唐辛子などのスパイスがあったり、まだまだ知られていないスーパーフードがあったりします。そういったところのオリジナルの料理を追求することが私のやっている料理の楽しみのひとつですね。
由結:そうですか。基礎がしっかりある中で、オリジナリティを広げていけるというのが小河さんの強みなのですね。普段料理のレシピを考えるときはどんなふうになさっているのですか。
小河:そうですね。まず第一に考えるのは、“想像できないもの”を作ること。そして、“自分が食べたいもの”を作ること。つまり、食べる相手が驚く姿を想像しながら、楽しさ・喜びを追求して開発を進めています。
由結:なるほど、食べる方の驚きを大切になさっているのですね。本日も大使館で料理をなさった後駆け付けてくださったのですが、例えば今、大使館での料理ではどんなところに力を入れていらっしゃいますか。
小河:その国の料理の素材を大切にすることですね。そして、日本の風土にあった旬の食材を使います。今日はチリ大使館だったんですけど、例えば日本の旬の魚はアイナメなんですよ。このアイナメをチリで食べられるかといったら、チリでは食べられません。でも、味つけはチリのものに近づけることができる。アイナメはフグと同じように皮も霜降りにして、細切りにして食べる、と。これは今回、“チリのレモン”を使ったテーマの料理の楽しさです。それをチリの方たちにも伝えることができる。このように、逆輸入的な発想の中で、日本の素材を南米料理に変化させて伝えていくというのが、大使館での仕事で私ができることだと思います。大変楽しませてもらっています。
由結:レモンと言うと“添え物”というイメージがあるのですが、それをどのように使うのですか?
小河:はい、レモンと一言に言っても、クエン酸で美肌効果など様々な効果があるんですが、そのレモンを食べるにしても、その素材をどのように生かし楽しんでいるかを考えた料理を今日は作ってきました。
レモンはグレープフルーツなどと同じように身をきれいに取ったものを使います。日本で言うと“酢でしめる”みたいな感じです。
レモンで魚をしめて食べる…。そこには、コリアンダーなどのスパイスを入れたりして深みを出した料理を提供しました。そういうところで、ひとつ“驚き”を伝えられたら、と思っています。
由結:わぁ、いいですね。この夏の暑い時期に頂くと食欲が戻ってきそうですね。お客様の反応はいかがでしたか。
小河:そうですね、皆さん写真を撮りながら食べていらっしゃいましたが、最初セビーチェから食べて頂いたんですが、皆さん食欲がどんどん増していらっしゃるような感じでした。次にチリのサラダを作ったんですけど、そこにはエビとアボカドを入れ、バルサミコとマヨネーズを加えて食べて頂くようなサラダで好評頂きました。
由結:とても美味しそうですね。小河さんは昔からそういった発想が沸いてくるタイプなんですか?
小河:そうですね、例えば、街を歩いていても、本を読んでいても、食事をしていても、常に「いろんな料理にプラスアルファすると、これが合うんじゃないだろうか。」とか、そういったことを考えながら、日々周りの雰囲気や天候を見ながら過ごしてますね。
由結:なるほど、一つの概念に収まらず、いろんなものにインスパイアされて発想していらっしゃるということですね。
小河:そうですね、確かに“1+1=2”じゃなくて、それが“3”“4”“5”になるような、驚きを生むことを追求しています。
由結:今、チリの色々なレシピを伺いましたが、例えば、中南米の他の国の料理も食べてみたいのですが、TORO TOKYO ではそれを食べることができるのですか?
小河:TORO TOKYOでは料理で世界を周り食するという“ラテンハイク“というものを毎月開催しています。今はメキシコフェア、10月、11月はアルゼンチンフェアをやろうと企画中です。料理はもちろんそれに合うお酒、例えば、ペルーならピスコサワー、メキシコならテキーラ、ブラジルならワイン…ワインならサルトンワインですね。つまり、料理に合うお酒、深みのある料理に負けないお酒を合わせて提供しています。
由結:なるほど、ブラジルは昨年オリンピックで盛り上がりましたが、ブラジルですと、サルトン社が有名なのですか?
小河:はい、サルトンはワインの宝と言われていますし、先々月はブラジル大使館でイベントもありまして、そこでもサルトンワインが使われていました。
由結:そうですか、料理とお酒の組み合わせを提案してくださるのですね。お店ではイベントやパーティーなども行うことができるのですよね?
小河:当店は1階と2階を使えますので、1階はオープンカウンターもあり解放的で、2階は落ち着いた雰囲気で接待や貸し切りパーティーなどにも使えます。もちろん1階2階合わせて結婚パーティーもできますので、いろいろとお使い頂いています。
由結:それでは最後に、一言リスナーの方に向けてメッセージをお願いいたします。
小河:当店では食べる楽しみや喜び、安らぎなどを感じて頂きたいと思っております。そして、ラテンアメリカという国を皆さんに知って頂きたいですし、想像できないものを食べる楽しみを知ってもらい、好きになってもらいたい。ぜひ機会があれば、銀座のお店に足を運んで頂きたいと思います。
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由結:2週目ご登場いただきましたが、本日は小河さんがお料理に目覚めたきっかけを伺いたいのですが。
小河:単純なようですが、若い時に学生時代、「生きていくうえで必要なものは何か。」「続けていけるものは何か。」と考えたときに、「食べることなんじゃないか。」と思ったのがスタートでした。
由結:10代の頃ですね?その世界に一歩足を踏み入れてどのようになさったのですか。
小河:最初は興味もなかった分野でした。料理を自分でも作ったこともないし考えたこともなかったんですけど、ひとつのきっかけとして成功体験がありました。若いうちは見習いで入るとまかないをつくらないといけない。そのときにまかないでフルコースを作ったところ、それを諸先輩がお客様に振る舞ってくれたんです。そうしたら、お客様から呼ばれて、若い小僧相手に、「おいしかったよ。」と言ってくれたんです。そこから、料理そのものや、お客様の喜ぶ顔を見ることが好きになりました。この経験がきっかけでしたね。
由結:小河さんは数々の有名なお店で働いていらっしゃったのですよね?
小河:そうですね、フランス、イタリア、スペイン、アメリカのカリフォルニア、いろいろな国にいると、各国のシェフたちにどうしても日本料理を教えろと言われてしまって。向こうの方たちに言わせると“フランス人が寿司を握っているイメージ“なんです。ですから、私は帰国して、和食、つまり母国の料理をしっかり学び、それから再出発したんです。
由結:なるほど、母国の料理についてしっかり学んだうえで、改めて世界に出ていって、何か感じられたことはありましたか?
小河:そうですね、私もいろいろな国にいたので、そこに行けば、イタリア語、フランス語、南米に行けばスペイン語だったり、言葉がなかなか通じなかったりするじゃないですか。ただやはり料理については素材は同じだったりするので、そういった意味では言葉がわからなくても技術で通いあえるものがすごくあって、日本の天ぷらを作ったり、蕎麦を打ったりすることで、相手との信頼関係や絆が生まれました。
由結:やはり食は国境を超えるんですね。今、その技術とご経験を通して腕をふるっていらっしゃる小河さんですが、TORO TOKYOではどんな料理を提供していらっしゃいますか。
小河:ラテンアメリカレストランですので、中南米、特にメキシコを中心にしながら、ペルー、ブラジル、アルゼンチン、また、フェアの中ではボリビア、パナマ、コロンビア、ベネズエラ、エクアドルなど様々な国を取り上げています。その国の方たちにも喜んで頂きたいですし、その国のものを日本の方たちに知って頂きたい。私たちは創意工夫をしながら、極力その国の料理に近づけながら、また、なるべく驚きのある料理を提供しています。
由結:なるほど、驚きって本当に大事ですよね。東京にはおいしいものがたくさん集まっていますので、毎回新鮮さを求めている方も多いと思います。TORO TOKYOではよくメニューを変えたりしているのですか?
小河:そうですね、比較的フェアも多く、メニューも変え、試行錯誤し、常に研究を繰り返しています。今もソーセージを自家製で作り始めました。すごくスパイシーで深みのある香辛料を入れています。また、ドライエージングの技術を用い、アメリカのビーフジャーキーなども作っています。これはメキシコのセシーナという場所が発祥なんですけど、これをエージング庫で作ってみたり。“ブラッシュアップ”、つまり、一つの料理をより良くすることを心がけています。
由結:そうですか、その都度お店に機材を入れたり、どんどん革新をなさっている、ということですね?
小河:はい、自分の中でも“現状維持は退化”だと思っていまして、「日々進化していきたい。」というのがありますので、3か月前と3か月後の変化、今年から来年への進化を見据えた仕事をしていきたいですね。
由結:きっとお客様はその進化を楽しみにお越しになっているのでしょうね。そして、9月15日イベントがあるのですね?
小河:中南米という国は戦争になって、スペインはじめいろいろな国に侵略されました。独立国家には、ある革命家が独立という形をとって独立を勝ち取った記念日があります。その記念日がメキシコは9月15日。そこに合わせて、昨年もメキシコ大使館で行われたんですが、大使が“Viva! Mexico!”と鐘を鳴らして、とても盛大に行われるセレモニーです。それを店で再現できないか、ということで企画されました。そして、メキシコといえばフリーダ・カーロ。彼女が残したレシピがありまして、メキシコでも日本でも再現している人は少ないのです。それを日本の旬の食材を使って、現地の技術で作り上げようと。
由結:すごく貴重な機会ですね。この料理をお店で食べられるのですね?
小河:はい。参加者の方の中にはメキシコ好きの方もいらっしゃいますし、もちろんメキシコ料理は初めて、という方もいらっしゃいます。セレモニーもあり、文化を楽しむ機会にして頂けたら、と思います。
由結:細胞が喜びを感じ、美味しさを味わえる貴重な機会になりそうですね。さあ、2週にわたりまして、小河さんにはたくさんのことを教えて頂きました。まだまだお聞きしたいことがたくさんあるのですが、最後にリスナーの方に向けてメッセージをお願いいたします。
小河:はい。「食べることは生きること」という言葉がありますけれど、人にとって一食はかけがえのない一食なんです。家族や友人ともっと楽しんで頂けるレストランを志しておりますので、ぜひ銀座にお越しの際は、TORO TOKYOにお立ち寄り頂きたいと思います。
由結:はい、それではリスナーの皆様、“銀座コリドー街“”TORO TOKYO”で検索してみてください。小河さん、どうも有難うございました。
※こちらのインタビュー記事は、2018年1月30日時点での情報です。イベントの日時等が載っているものは、すでに終了していることもありますので、ご注意ください。