有限会社ロゴスキー 代表 横地 博さん「ロシア料理専門店として日本で最も歴史の長いレストラン」
有限会社ロゴスキー 代表 横地 博さん(1)
有限会社ロゴスキー 代表 横地 博さん(2)
銀座ロイヤルサロン 1週目
由結: さあそれでは、本日の素敵なゲストをご紹介致します。有限会社ロゴスキー代表取締役社長・横地博さんです。よろしくお願い致します。横地さんをお招きしまして、“ロゴスキー”についてお話を伺ってまいります。こちらはロシア料理専門店として最も歴史の長いレストランなのだそうですね?
横地: そうですね。今営業してる中では一番古いと思います。
由結: ロシア料理というと、ボルシチ、ピロシキ、ロシアンティーで、ビーフストロガノフなどが浮かびます。お客様はどのような方が通っていらっしゃるんですか?
横地: そうですね。やっぱり家族のかたとか、一番思いつくのは親子三代、おばあさまから奥様からお子様から。三代で年に1回か2回はロゴスキーで集まろうとか。そういうお客様が多いです。そんな光景を目にすると、感動しますね。
由結: 長年通ってくださるとは素敵ですね。日本でロシア料理と聞いてイメージするものは、ロゴスキーで元々作られたものが多いそうですね?
横地: その認識はある程度あると思います。
由結: それは何故なんですか?
横地: 戦後昭和二十六年創業ですが、その時代に創業した祖母が全国を行脚しまして色んな所で教えていました。そのレシピが広まったというのが一番大きいと思いますね。
由結: そのレシピっていうのは、どこから来たものなんですか?
横地: 元々ですね、先代の”長屋緑”、職業軍人でしたけれども、ロシア人街ですか。ハルピン、そこにずっと赴任してまして、そこでロシアで言えば日本のレストラン、食堂ですね。ストロバヤとか、そういう所での味を覚えていたそうです。それを当時の日本に帰ってきて、妻に教えて頭の中のものを妻に教えて、それで覚えてるものを教えただけでは再現するのは無理だったと思うんですね。「その後店をやりながら、妻もロシア(ソ連)に行き、「やっぱり合ってた」「その通りだった」とか、そういう自信を深めて行きました。」
由結: はぁー、そうですか。つまりきちんと頭の中にあったものが合ってるかどうかを検証して、「あっ!合ってた」というふうに自信を持って広めたんですね。
横地: 脳内であったものを再現して人に伝えるということは難しかったと思います。それをやっぱりその国に行って、やっぱり何て言うんですか、再認識するっていうことだったと思うんです。
由結: 広める場合にはどういうふうにして広められたんですか?
横地: 当時のことは文献からでしか私はわからないんですが、昭和二十六年にロシア料理として始めたそうです。渋谷の恋文横丁で。お客様がほとんどいらっしゃらなかったこともあったとか。
由結: その当時はまだ凄く珍しい存在だったでしょうね。
横地: とにかくやっと来たと思ったらビール一杯とか…そういう感じだったらしいです。そのあとに、テレビもない時代ですから、たまたま自分達も知らない間に読売新聞に出ちゃったらしいんですよね。
そこで朝行ってみたら大行列になってた、と。そこからだと思います。
由結: なるほど。渋谷で始められた店舗ということだったんですが、長年通うお客様もできたということなんですよね。それを広めて定着させるまでって大変だったんじゃないかなと思うんですが。
横地: そうですね。ですから当時はまだロシアから戻られたかたとか、色んなかた。例えば新聞記者だとか商社のかただとか、色々な方が通われてたと思います。
由結: そして今現在は2015年より銀座で営業なさっているということなんですが、これはどういう経緯で銀座になったんですか?
横地: 3年前、丁度東急プラザ、渋谷の東急プラザができた時から閉館するまで、50年間営業してまして、そこからが一昨年、3年前、3月に閉館して、それで「じゃあどこに行きましょう?」と「やっぱり渋谷じゃないといけませんよね?」っていう頭の中の認識から始まって、「あー、渋谷はやっぱりないな」と気付いて、じゃあ近隣の恵比寿とか色んな地域、表参道とかも色々探してみて「やっぱりちょっと難しいな」と。もう本当に何件探しても難しかった。それでたまたまもう最後に「ちょっとだけ銀座でも見てみようか?」なんていう軽い気持ちで。
由結: まあ!そうだったんですか。
横地: 最初はちょっと見てみる気持ちだったんです。自分の見てない場所・自分が過ごしてない場所っていうのはやっぱり怖いものもありますから。それでやっぱり「じゃあちょっとでも、ちょっと足を踏み入れてみようかな?」何ていうふうに思ってたら、それで何件も見たんですよね。そしたらたまたま今営業している場所の商業ビルで話がありまして、「今後改装入りますのでもしよかったらどうですか?」っていう話だったんです。
由結: 今素晴らしい場所ですよね。駅からも1,2分ですよね。メインの通りに面している場所便利だと思いますが、皆さんどういう使い方をされているんでしょう?
横地: そうですね。やっぱり渋谷時代の方とかもいらっしゃいますし、地域性がありますので丸の内のかたがたの歓送迎会だったりとか、接待だとか。色んな面で以前になかったようなシチュエーションも多くなっていますね。
由結: お店の中入った瞬間に”そこはロシア”!別世界で、店内が凄く雰囲気のある作りになってますよね。
横地: だからやっぱり欧米の方、ロシア人の方も非常にお客様では多いですし。
由結: なるほど。そうなんですね。そして私も頂かせて頂いて、本当に体に優しい料理というか、本当にこう染み渡るような感じがしたんですけれども、これはロシア料理の特徴なんですか?
横地: そうですね。なんと言っても、ロシアは季節が日本みたいに四季があるわけじゃないですから、もうそろそろ寒くなってマイナス何度になる時期に入ります。そこから4月5月頃まで寒い時期が続きますので。そういった中で素材を生かしたものをどうやって食べればいいかって。それはもう「素材が美味しく食べられるような状況で食べる為には簡単な味付けにしよう」とか。そういう所から始まってると思うんですが。
由結: なるほど、シンプルな味付けなんですね。例えば、味付けは塩コショウとか?
横地: そうですね、塩コショウは特に多い。あとはハーブも使いますけれども、香辛料はあったかい国とかそういう国とはまた違って、そんなに極端な香辛料を使うとかそういうのはないと思いますね。ロシアはやっぱり寒いですから、ロシア人は辛いものが苦手っていう意識もやっぱりあるようです。
由結: なるほど。ワインも充実してますよね。
横地: 例えば、旧ソ連のグルジアですよね。今で言うジョージアですか。
由結: 凄く歴史のあるワインなんですよね。確かぶどうの木が初めてできたのがグルジアなのだとか…。グルジアだけではなくて様々な周辺国のワインも取り揃えていて、何かメニューを見てると、それだけで楽しくなりますよね。
横地: 覚えられないですよ(笑)。
由結: スタッフの方にワインについてお聞きしたら凄く詳しく説明してくださって、とても勉強になりました。
横地: ありがとうございます。もう随時随時新しいものも入ってきますので、本当に気が付いてみたら浦島太郎みたいな感じになるくらいです。あ、また違うの入ってる、と(笑)。
由結: どんどんアップデートされてるってことなんですね。
横地: はい。お客様とっては凄くプレミアなものですから。楽しんで頂いているようです。
由結: 行く度に新たな発見がありますものね!横地さんとしては、今後のお店の展開などはどのようにお考えですか。
横地: まだ銀座に移って丸3年ですから、幼稚園生みたいなもの。銀座という街の長い歴史の中からみれば、本当まだまだひよっこなので。まずは”銀座に慣れること”。あと「ロゴスキーと言えば銀座!」っていうふうな状況にしたいですね。いままでは「渋谷と言えばロゴスキー!」だったものですから。これは自分達だけではできるものじゃありません。
由結: ぜひ皆様、“銀座のロゴスキー”に足を運んで頂きたいと思います。来週も横地さんには出て頂けるということですので、また更に詳しいお話を伺っていきたいと思います。
横地: ありがとうございます。
由結: 本日はありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン 2週目
由結: さあそれでは、本日の素敵なゲストをご紹介致します。有限会社ロゴスキー代表取締役社長・横地博さんです。よろしくお願い致します。
横地: こちらこそよろしくお願い致します。
由結: お願い致します。2週目のご登場ですが、本日も素敵なお衣装をお召しですね。一瞬ロシアの国旗をイメージしてるのかな、なんていうふうに思ったんですが。
横地: 偶然なんですよ、見た瞬間に「あっ、いいな」と思ったんです(笑)。
由結: そうでしたか(笑)。横地さんはロシア料理専門店として最も歴史の長いお店“ロゴスキー”を経営してらっしゃるわけなんですが、デパート等でもご活躍でいらっしゃるとか。日々活動をしてらっしゃるんでしょうか?
横地: 銀座とか新宿とか渋谷、デパートで地下の食料品、デパ地下。そういった所の催し物会場で、一週間単位で販売しております。
由結: お客様はそこで初めてロシア料理に巡り合う人もいらっしゃるでしょうね。何が一番人気があるんでしょうか?
横地: そうですね、やはりボルシチやピロシキが多いですね。
由結: きっと長年のファンの方も通っていらっしゃるのでしょうね。
横地: 相当長い方が多いですね。例えば、70歳、80歳ぐらいの方だと、「(社長よりも)私の方が古いよ」っていうことを仰りますのでね(笑)。たくさんのお客様に長年愛用して頂いております。
由結: ロゴスキーのお料理は体に凄く染み渡る、そしてこの味が「また食べたいな」って思うような飽きない味だと思いました。お客様のご感想はいかがですか?
横地: そうですね。日本でいう”ボルシチっていうのは“味噌汁”、ピロシキっていうのは“おにぎり”みたいなもので、一番ポピュラーなものなんです。ただ一つ違うのは、”和風・洋風”の違いです。毎日食べてたら飽きてしまうかもしれませんね。ですから、間隔をおいて年に2~3か月おきとか。そんな感じで「集まろうよ」と会をして頂くとか…。「あ、また食べたくなったな」みたいな時が一番いいと思いますね。
由結: なるほど。こちらの料理は”家庭料理”なのでしょうか?
横地: そうですね。各家庭っていうのは皆”お母さんの味”っていうのは違いますから。「このお母さんのボルシチと、あのお母さんのボルシチとは違う味」…!それらを集約したものだと思います。
由結: お店にもボルシチがメニューが2つありますよね。あれはどういう違いがあるんですか?
横地: そうですね。60数年前ぐらいに始めた時は、ロシア風というよりも今の時代に合わせた、食糧難の時代に合わせたボルシチ。「いっぱい食べてもらいたい」そういうものを作り出しました。それから時間と共に「やっぱり本場のボルシチも食べてもらいたい」っていうので出したものがあります。
由結: 食糧難の時のボルシチっていうのはどんなものが入ってるんですか?
横地: そうですね。当時ですから、多分ボルシチっていうのはビーツがあったか無かったかはわからないんですけど、じゃがいも・にんじん・たまねぎ・お肉、単純にあとトマトですね。その程度だったと思うんですが。
由結: なるほど。現在はビーツをしっかり使っていますよね。ビーツって”飲む血液”なんて言われますけど?
横地: そうです。天然輸血です!
由結: 凄く栄養もあって、滋養にいいですよね。ピロシキについては、お店のこだわりはどんなことでしょうか。
横地: そうですね。ロシアですと、どちらかというと焼いたものが主流です。揚げたものっていうのがマイナーなほうなんですけど。日本人っていうのはどちらかというとやっぱり揚げたもの好きなんですよね。例えば衣をつけたコロッケだとか、例えばカレーパンとかでも好きですよね、凄く。でも、逆にあちらのほうではそれが少ないんですよ。パンの感覚で。日本人は凄くそういうものが好きですからお店では揚げたものを出しています。ただ、揚げたものはしつこいとやっぱり敬遠されますので、凄く軽いものにして。それで例えば中の具材に旨み成分の汁が出ますから、それをどうしたらいいかっていうので、先代が「じゃあ春雨で吸わしちゃいましょう」と。美味しさも逃げないようにしちゃいましょう、と。それで春雨が入ってるのがピロシキ…というのが定着したんです。
由結: 春雨が入っているのは、ロシアには無いんですか?独自のレシピなんですね?
横地: ただロシア人も好きですよ、凄く。
由結: そうやって日々発見があったらメニューに取り入れてこられたんですね。
横地: 多分その発見は、仕方なくやったんだと思うんですけど(笑)。
由結: 今でもメニューの開発みたいなのは進めていらっしゃるんですか?
横地: 日々「これを変えよう」とか「こっちのがいいだろう」とかって、そういうのは日々やっぱり悩みながら考えています。
由結: お店の味・伝統を守りながら、新しいものも取り入れていらっしゃるんですね。ちなみにロシア人の方は、日本食はどういうのを好むんでしょう?
横地: 日々食べてるものが、何を食べてるかってのは、そこまで私的なことはわからないですけども、知ってる限りでは「牛丼は凄い好きだな」っていうことは言ってますよね。
由結: 牛丼なんですか!どういう点がお好きなんでしょう?
横地: 多分ロシアにはない味付けですし、例えばお醤油の味でちょっと辛かったりしょっぱかったりした所に甘さがあるみたいな所だと思うんですけどね。
由結: それが凄く新鮮に感じられるんですね、きっと。他には何かお好きなものはあるんでしょうか?
横地: あとはそうですよね、日本にはあって、向こうには無いって言うのがやっぱり”生魚”。海の魚ですよね。
横地: 特にロシアですと、北極に近い場所からの魚。鰯多いですよね。オイルサーディンとか。あとはニシン。代表的なものですね。北海道でもそうですけど。あとはサーモン。サーモンは4年間かけて帰ってくるわけですよね。それが代表的なもので、あとは大体川魚なんですよ。あと有名なのはキャビアですね。チョウザメ。あとは鯉や鯰。そういった川魚を凄く食べます。
由結: ロシアと日本、食べ物を通して何か分かり合える所もあるのかもしれませんね。お互いに興味を持って。実際にロゴスキーでもロシア人の方がサービスしてくださる場合がありますよね。日本がお好きな方が働いてらっしゃるんですか?
横地: そうですね。もう本当に日本で住み始めたら日本は素晴らしいと言っています。例えば利便性。色んなものが揃っていますから。人も親切だと言われますね。
由結:横地さんご自身はこの仕事に携わられて長いですが、やはりロシア料理はお好きでいらっしゃるんですか?
横地: とにかく初めての時から好きで、年々好きになっていますね。自分でも料理を作って味付けしたりします。「ロシア料理って本当に美味しいな」と心から思っています。
由結:凄く幸せそうですね。
横地: 幸せですよ。
由結: なるほど。じゃあその味を是非一人でも多くの方にと思ってご活動されてるんですね。ワインも前回もご紹介しましたけども、紀元前8000年頃からワインを作っている国々のワインが出されてるということですね。イタリア・フランスのワインとはちょっと製法が違うそうですね?
横地: 詳しいことは私も専門じゃないのでわかりませんけれども、昔ながらの作りかたをしてる所が多いそうです。
由結: ウォッカも凄く種類が多くてびっくりしたんですけど。
横地: 例えばロシアで最高級のウォッカも置いてますし、種類はもう本当に数えられないぐらいあります。ワインも同じくらい揃っていますけど。
由結: メニューに載ってないのもあったりするんですか?
横地: ワインの場合はメニューに載っていないものも多いですね。自分でメニュー見ててもワインはどれ飲んだらいいかってわからないぐらい揃っていますね。
由結: お料理に合わせたり相談する時間が楽しいですね。”ロシア料理専門店と言えばロゴスキー”でとても有名ですが、銀座では2015年より営業が始まったのですよね。お客様の反応はいかがでしょうか?
横地: 最初の1年は「当然お客様は来てくださるだろう」とある程度は思ってたんですけど、いや1年間は本当に思った通りではなくて、相当苦労しましたね。「もしかしたらどうなるかわからない」っていうのが頭をよぎりました。まずエリアが違いますからね。あと、使う用途も違います。
横地: ですから、そういう例えば日常使いなのか、それとも晴れの日の用途なのか…徐々に色んなことを考え直してみました。やっと去年ぐらいから「銀座っていうのは本当にいい所だな」ってしみじみ…。
由結: 銀座になじんできたのですね!それでは、リスナーの方に向けてメッセージをお願いいたします。
横地: ありがとうございます。私共、銀座に来て丸三年が経ちました。これからも“銀座のロゴスキー”をどうぞよろしくお願い致します。
由結: ”ロゴスキー”で検索をして頂くとWEB上でヒットしますので、是非皆様検索なさってみてください。それでは横地さん、2週に渡りましてありがとうございました。
横地: ありがとうございました。