宮本まき子さん 家族問題評論家 有限会社オフィス・ミヤジン 取締役「輝ける熟年パワーで、ニッポン再生&家族再生」
2017年9月14日(木)放送 有限会社オフィス・ミヤジン 取締役 家族問題評論家 宮本まき子さん(1) |
2017年9月21日(木)放送 有限会社オフィス・ミヤジン 取締役 家族問題評論家 宮本まき子さん(2) |
由結:本日のゲストをご紹介致します。家族問題評論家の宮本まき子先生です。宜しくお願い致します。
宮本:宜しくお願いします。
由結:宮本先生は新聞や雑誌への執筆をはじめ、テレビのコメンテーターとしても、大変ご活躍でいらっしゃいます。
宮本:有難うございます。
由結:この番組は、銀座の番組なんですけれども、先生は銀座というとどんな思い出がありますか?
宮本:銀座は、自分の人生にとても関わった街なんじゃないかと思います。大学3年くらいの時、まだ付き合っていない男性とたまたま銀座でデートをすることに。待ち合わせの場所が当時若者に大人気だった、出来て何年か目のソニービル。今度ソニービルが建て替えになるそうですね。それで、待ち合わせたんですが、私何せ、国分寺の大学と寮を往復するだけの人なの。行った事無いんですよ、そんな都会に。間違えましてね、向かいのビルの方に行ってしまって。1時間ずっと待っていて、「あ、来ない、もう帰るわ。」と思って、帰りだしたら、向こうも諦めて戻るところで、バタッとそこで出会ってしまったの。
由結:まさに運命の出会いですね。
宮本:あそこでね、すれ違ってたら人生が違っていたという思いはちょっとあるんですけど(笑)。でもその時は彼の方も「済まなかった。」と言って、今のコリドー街にあった「アルデリーベ」というお店に連れて行ってくれて、美味しいドイツ料理に私はすごく感動したの。「食べ物につられる」っていう私の悪い癖が出て(笑)…!その時釣り上げた男が、今の夫です。
由結:まぁ!
宮本:それ以来海外に行く度に言うんですよ(笑)、「美味しいものを食べさせてあげると言っても絶対に着いて行ってはいけない。」その翌年に、かつての銀座教会、今はビルになってしまいましたが、そこで結婚式を挙げました。丁度ミニが流行っていた頃で、白いミニのワンピースでウェディングドレスを作ってもらいまして。
由結:とても斬新ですね!
宮本:私もそう思います。銀座教会の通りを挟んで向かい側が、ガラス張りの銀座サテライトスタジオのあった時代ですね。たまたま式が終わって大歓声を浴びながら降りてくる私をDJの方が見てらっしゃって、「今なんか可愛いミニのお嫁さんが降りてくる。」みたいに言ったんだそうです。友人の何人かがそれを聞いてまして、後でそれを聞いて…とても良い思い出になっております。
由結:そうですか、その時に銀座にラジオ局があったという事なんですね。先生は銀座の思い出もたくさんおありということですが、今までも色々なご経験をお持ちですね。例えば、主婦の友社の電話相談室でなんと22年もお勤めになられたという事なんですが、どのようなお仕事だったのですか。
宮本:大学では、英文科、アメリカ研究科という社会学をやったんですが、29歳からカウンセリングの勉強を始めました。カウンセリングの勉強を3年続けたところで、主婦の友社の相談室が開いたばかりの頃、主婦の友社がとても良い条件でカウンセラーを求めていたので、すぐ応募しました。専業主婦をずっとやっていたんですが、お金が無くて大変でした。子供2人育てながら夜中の3時まで翻訳の内職をしたりして、何とか眠れる方法はないかと。たまたま主婦の友社がとても良い条件でカウンセラーを求めていたので、すぐ応募しました。何年かやったら辞める気でいたんですけど、どんどん広がってしまって、最後は大体10くらいの相談室を束ねることになり、結局22年間そこにいついてしまいました。
由結:どれくらいの人数の方々のカウンセリングを手がけられたんでしょう?
宮本:私1人が大体2万件くらいの相談ですね。全部で10万件くらいの相談を22年間で受けております。全部の統計を取って分析もやりましたので、内容はよく覚えております。本になったものもありますね。
由結:それは素晴らしいですね。やはり人間生きていくうえで、家族という一単位は欠かせないと思うのですが、いろいろな家庭の問題も担当なさったとか?
宮本:そうですね、その頃は育児問題が大きい問題で、大体団塊世代の方達が2人か3人産まれた頃なんてね、育児相談がとても流行った時代ですね。色々な所で相談室ができていたんですけれども、本物のカウンセラーを何人か集めてきて、じっくりと電話相談をしたのは、大手出版社の強みでした。広告塔ではなくて、きちんと相談をやれたという自負はありますね。
由結:そういったご相談もなさりながら、書籍の執筆など積極的に取り組んでいらっしゃいますけれども…こちら、ご紹介してもよろしいでしょうか?
宮本:はい、お願いします。
由結:ご本のタイトルは『輝ける熟年』。先生がとても力を注いでお作りになったと思うのですが、これまで沢山お書きになられたエッセイの総まとめなんですよね?
宮本:はい、副題に『人生の総仕上げはこれからです』という文章が入っております。書いている最中に3.11 東日本大震災が起きました。途中まで書きながら、あの震災に出会って、「あ、こんなことしている場合じゃないんだ。」みたいな、非常に動揺したというか、ショックを受けたというか、そこから振り返りまして…丁度団塊世代がもう少しで定年退職、悠々自適をしようとみんなが浮かれている時期でした。
「いやいや、あと10年、私達頑張ろうよ」と。今の状況を何とかしたい。悲しんでいる人たちを慰め、今壊れているものを再建して、あと10年、950万人の団塊の世代が頑張れば、なんとかなるんじゃないかと思い立って、この本を出版させて頂きました。
由結:なるほど。このご本の中では、“熟年世代“という言葉が出てきますが、これは実際にはどのような世代のことを指しますか?
宮本:とても大きい範囲で語っています。団塊世代というのは昭和21年くらいから、23、4年まで4、5年あるんですね。それの前後、10年ずつ、全部で25年くらいの方を私は“熟年“と総称しています。その世代というのは戦後の劇的に変わってしまった日本の社会というものを生き抜いてきた世代なので、その前の世代、本当に戦前に17、8になった方達と全く違った価値観を持ち、戦後の復興に加わった人達なので、言える事、やれる事は沢山あるはずだと…私は確信しています。
由結:そうですか、とてもパワーのある世代なのですね。私もご本を拝見させて頂いたんですが、読み進めるうちに夢中になって一気に読んでしまいました。そして、読んだ後にすごく元気が出て、爽快な感じがして。
宮本:読後感の良いものをモットーにして書きました。やっぱり本っていうのは読まれてなんぼですね。出版社でしばらくやった人間としてどんなに良いことを書いても、読みにくかったり、読んだ後何だこりゃって思ったり、落ち込んだりっていうのはどうしても納得できない。読んで前向きになる事が本の使命だみたいなポリシーがあります。
由結:なるほど。その他に、ご本をお書きになる時に大事になさっていることはあるのでしょうか?
宮本:そうですね、エビデンスというのか、必ず根拠のあるデータをきちんと調べ上げるという事、それから、物書きの一つのスタンスとしては、書きたいことを書いちゃいけないんです。物書きっていうのはどうしても「これを訴えたい!」みたいになっちゃうんですけど、人というのは、そんなに他人様の中身というのを見たいわけじゃない。ただ知りたい事がある、自分が思っている事がある、何か共感してくれないかとか、みんな思っています。たまたま読み手が読みたいものをきちんと書いてあげることで、その人の心の中でちゃんと発酵していってくれる、成熟していってくれるんですよ。本というのは読んでいくと、その人が必ず何か得てくる。或いは、「読んで良かった!」と思うような気持ちになるはずなんですね。
由結:なるほど。
宮本:私が書く時はいつもそうです。主婦の友社出版本部長の石塚歌子さんという名編集長がいたんですが、彼女が私を物書きとして育てたんですけども、彼女にいつも言われていました。「本質を捉えて、虚しいものを付け加えるな。」、と。虚しいものというのは、自分の心の中の欲ですね。ウケたいとかね、カッコよく書きたいとかね。だからそういうものを付け加えると、人は汚いものを見た感じになる。だけど、ものの本質をきちんとつかんで、客観的にそれを述べると、その人の心にすとんと入るものだと。だから気を付けて書くのよって常に言われていて、歌子さんはもう亡くなられましたけど、私は文章を書き上げるたびに、原稿を前にして、「歌子さんこれでいいですか。」と言ってからもう一回読むことにしています。
由結:そうですか。だからこう、追い詰めている感じがしないというか、読んだ後に、次の対策をどうしたら良いんだろうかという風に考える余力を残してくれている感じがします。
宮本:有難うございます。それはやっぱり、多少ですけれどもカウンセラーとして勉強してきたこと、或いは経験してきたことが役に立っているかなと思います。人は必ず出口を欲しがるんです。追い詰められて、もうだめだという時でも、必ずどこかに出口がある。“カウンセリングマインド“っていうやつですね。
由結:なるほど、そのカウンセリングマインドを大切になさっているこのご本の中に、“孫疲れ“というキーワードが出てきます。これはどんな現象なのでしょうか?
宮本:“孫育て“という言葉が流行し始めたのが、つい10年くらい前なんです。私も”孫育て”という名前で大体2、3冊本を出してますし、あちこちの雑誌にも書いているんですけれども、「ともかく自分たちが孫を育てるしかない!」みたいな感じの、おじいちゃんおばあちゃんが増えたんで、「そうよ、孫育てするのはいい事よ」と同調しました。或いは、「息子や娘を助けてあげたい」という親心から始まっているんですけど、それも大体5、6年から10年も続くと、「なんだか知らないけど疲れた。」と、心身ともに疲れている。或いはこう、自分の人生とかね、お金とかを食い尽くされているような気がすると。非常に疲弊した感じのおじいちゃんおばあちゃんが現れ始めた。それを聞かされて、「あ、うちもそうなのよ。」と共感する人も増えてきている。これらの裏側に何かあるんじゃないかなというような気がして、もう少し社会的に述べてみたのが、私の孫育て孫疲れ本で、結構共感を頂いたので、雑誌の執筆やテレビのコメントなどで述べさせて頂いています。
由結:そうですか。お盆の時期など皆さんが集まった時に、実はお疲れになっているという話も取り上げられていますね?
宮本:あれは最初はね、お嫁さんと、姑さん達とが年に何回か出会うビッグイベントに、孫がいて、お姑さん達は大変と思い、お嫁さん達の方は気を遣い…という話から始まったんです。実は上の方の世代からは、孫の面倒を見るのは可愛いけれど、「私達疲れているのよ。」みたいな本音が、ここ2、3年出始めてきた。それが“孫疲れ“なんです。
由結:“孫疲れ“が1つのキーワードということなんですが、宮本先生には来週もご出演頂きまして、この”孫疲れ”とそれを取り巻く社会問題についての解決策までお話頂きたいと思っております。それでは最後に、リスナーの方に向けてメッセージがありましたらお願い致します。
宮本:そうですね、時々「人生の中で大切なものってなんですか。」と聞かれたときに、私は、単純なことなんじゃないかって思うんです。人間って寒くてお腹が空いているとろくなこと考えないなと、これは自分の経験でもあるんですね、これは。「“飯、風呂、寝る“って、それしか言わないのよ。」って怒る奥様方多いですけど、或いは旦那様の方もね、「”飯、風呂、寝る”、これしか望んでいません。」みたいな家庭というのはピットインみたいなものでしょう。でも、私は結構的を得ているなと思うんです。どんなにくよくよ落ち込んでも、どんなにもう駄目だみたいになっている時でも、最高のリセットというのは、体を温めて、腹いっぱい食べて、それからね、気持ちの良い寝床に潜り込んで、「よし、明日はきっといいことある。」と思いながら眠ると、きっと次の朝、良い解決法が出てくる。少なくとも体と心は回復する。だから、この3つを大事にしてほしいし、子育てで悩んだ時も、「自分の子どもはひょっとしたら寒くて、お腹が空いてるんじゃないか、それをカバーしたらどうかな。」と。そういう風に思いを馳せれば良いと思っております。
由結:宮本先生、素敵なメッセージ有難うございます。
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由結:先週から引き続きという事なんですが、前回も様々な問題に触れさせて頂きました。その中に“孫疲れ“というキーワードがありました。お孫さんを持っていらっしゃるおじいちゃまおばあちゃまに対して、提言する事がたくさんお有りだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
宮本:「孫育て」は、おじいちゃんおばあちゃんの悩みとか迷いとかっていうのもあるんですけども、実は深く静かに潜行して潜水艦みたいになっちゃってるんですね。ある日突然それが浮上してくる。で、それがパッと現われた時というのは、実は祖父母世代がキレちゃった時というか、「もう駄目だ!」とSOSを出した時なんですけども、それがあまり突然だと、子ども世代が「何だこりゃ!?」という違和感を持つ。その辺りが難しいなと思うんです。何でかというと、団塊世代というのはかなり無理をして、子ども世代をサポートしているわけですね。大体80%くらいのおじいちゃんおばあちゃんが「孫を見るのがかわいい、手伝ってやりたい」と思うと、本当は出来ないんだけど無理をしてやっている人が70%くらいいると。そのサポートの種類も、労力提供というか、家政婦さんみたいに、働く娘や息子達のおうちで全部手伝ってあげる家事労力から始まり、ベビーシッター役までやってあげる、0歳児の子が保育園は入れないからその子の面倒を見るみたいな、そういうものもあって、身体そのものが疲れてね、坐骨神経痛だとかぎっくり腰だとか起こしてしまう。元気に自転車に乗りまわって、前と後ろに孫を乗せて走って行ってバターンって倒れて、太もも骨折なんていう事もよくあって、もう身体は疲れているんです。また、結構言いづらい話として、お金の問題で悩んでいる、疲れているという祖父母世代が多いのも実態だと思います。“孫疲れ“の深刻さというのは、言えそうで言えないお金の話が多いと言えます。
由結:なるほど、そうですね。やはり人間が生きていく上でお金の問題というのは切っても切り離せないですので、その部分で苦しんでいらっしゃる方が多いということですよね。
例えばですけれども、祖父母の方々は年間どのくらいの収入で暮らしていらっしゃるんでしょうか。
宮本:上の世代の方はお金を持っていると皆さん言い方皆さんおっしゃいますけど、実は、年金も入れた平均の年収が、大体300万前後っていう方が、半数なんですね。これは普通の世帯の金額から考えても半額です。足りないから、貯金を取り崩す、あるいは、65歳になってからパートタイマーで働き出す方もいて、それなりにすごく無理をしてお金を捻出しているんです。「ちなみに孫にはとれくらい掛かりますか。」とよく尋ねられるんですけれど、統計では孫一人2年間で11万と出ております。でも孫は一人じゃないですからね。6人の孫に、年間平均100万ずつ出しているという方もいるんです。七五三があって入学祝いがあって、誕生日があってクリスマスがあってってなると、6人いるとそれくらいになってしまうみたいです。
由結:深刻ですね。
宮本:親は見栄を張っているわけですよ。孫全員に平等にってやっていって、10年間で1000万無くしてね。どうやって打ち切ろうかという相談も受けました。祖父母は悩んではいるのに、子ども世代はそんな事思ってもみないようですよね。
由結:なるほど。熟年世代の方々って本当にみなさんお若くてすごく元気な印象があって、「何を頼んでもやってくれるんじゃないだろうか。」って思ってしまいがちなんですが、そうではないのですね?
宮本:『ニューファミリー』と言いまして、やっぱり欧米に憧れていたんですねぇ…子どもを中心にして親たちが生活をして、家の中にいろんな物を増やして、子どもに何不自由なくやらせてあげたい。出来たんですよ、丁度高度成長とバブルがありましたから給料が初任給の10倍になった世代ですから、やろうと思ったら出来た。でも子どもは、「自分ファースト」なんですね。親は何よりも自分を優先してくれると本気で信じてます。だから自分の孫にも必ずファーストでやってくれるという、奇妙な信頼感なんですよね。
由結:信じてしまっているという所があるのでしょうね。
宮本:裏切れないみたいな、ちょっと歪な愛情をいうか。親心というんですかね。だから出せないとは言い辛い、向こうから言ってくれないかと思っているふしはありますね。
由結:なるほど。ということは、どうすればいいのでしょう。おじいちゃまおばあちゃま世代にお金の無心があった時に、どのような言い方をすればいいんでしょうか。
宮本:そうですね。実際は今、既婚家庭の4世帯に1世帯は親から生活費の援助を受けている。家のローンの援助を受けているっていうデータがありますよね。この場合はうっかり切ってしまうと、金の切れ目が縁の切れ目になりかねないわけです。援助されていた事を忘れて逆恨みされかねない。だから私は、ある年齢、まぁ65歳とかになったら、もう現役ではないという事をまず言って、自分たちの老後計画の資金計画を子ども達にまずオープンにすべきだと思うんですよ。で、子ども達も一同に集まって、自分達の家の経済というのをちゃんと情報開示したほうがいいと思う。その中で、助けられるものは助け、駄目なものは駄目と言い、じゃあどういうプランニングをしたらいいか、“身の丈にあった生き方“と私達は言うんですけど、団塊の世代っていうのはそれをやってきた世代なんですね。
おうちにお金が無かった方それなりの教育を身につけたら、後は自分の力で伸ばしていくんだ、みたいな事をなさったし、無理をしなかった世代です。それがいつの間にかね、無理をすることが愛情表現みたいな風になっちゃった。実は金が無いんだよと、実はこれは自分達の老後資金なんだという風にちゃんと言われれば、子どもの方だってね、まさかゼロのものをよこせとは言わない。それから少し資金のある方はお気をつけになった方がいいと思うのは、自分達は無理して支援しているつもりでも、お子さんのほうは案外そうは思っていなくて、これは遺産の渡しだ、と。
由結:はぁ、そんなふうに…。
宮本:すごい事考えるでしょ。まだ親が亡くなってないんですよ(笑)。
由結:そんな意識があるんですね、子ども世代の中に。
宮本:そうそう。懇談会の後なんかに聞きますとね、「後で貰うより今貰ったほうがいいですから。」みたいな事を言って。だから「もらえて当然」という感覚があるんだという事を、上の世代はもっとわかってた方がいいと思うんですよね。
由結:なるほど。先生もご著書の中で“家庭内の奨学金“を薦めていらっしゃいます。これは奨学金制度という大げさなものではないと思いますが、やはりこのしくみは必要でしょうか。
宮本:団塊の世代、熟年の世代というのは大体2人から3人のお子さんを持っていらっしゃいます。その人たちの間でも揉め事が起きないように、年に何回かイベントで出会うときに、お互いの配偶者も全部入れて話し合いの席というものを持った方がいい。お金を貸してほしい、これを譲ってほしいというのをひとつの通帳にまとめて、誰それにいくら渡したというのをきちんと書いて、これは借金であると、後で返してねと明言しておく。
孫に掛かるお金を出してあげるのはかまわないけれど、これは奨学金であると、後で返してねという事をきちんとオープンにして情報公開しておく。後々本当にお金に困ったときは、請求すればいいと思うんです。で、もし後で困らないで上手くいけちゃったとする、そしたらそれはどうぞ遺産です、と。
由結:なるほど、差し上げたでしょ、と。ある意味証明になりますね。
宮本:だから私ね、家族内でもビジネス感覚でやった方がいいと思っております。
由結:ある意味ケジメなんでしょうね。実際に、団塊ジュニアという世代…私もそれに入るんですが、非常に精神的に弱くなってってしまったと言われることも多いのですが、それはなぜなんでしょうか。
宮本:私もね、しみじみ思うんですよ。スマホとコンビニが無かったら一週間生きていくことも出来ないなぁ、この世代は、と。
由結:ドキッとしますね。
宮本:団塊の世代は逆に逞しくてね(笑)。私達の親もそうでしたけど、そのまた上も、かなり多くの人がね、もしかしたらもう一回また戦争があるんじゃないかと思っていたふしがある。だから子ども達をサバイバルさせるために色々な頃をやらせた。あの戦後の復興の中でね。私達の世代までが、食べられる貝とか野草とか、いろんな知恵を持ってるんですよ。でもそれが貧乏っぽく見えたの。だから高度成長期に入ったときにそんなのケロッと忘れて、物質文明は素晴らしい、お湯が出るシャワーが素敵!と、新製品が出たらどんどん買い換えていく、という事をやっちゃったんですよね。子ども達に、サバイバルするという力を与えないまま来てしまったような気がします。これもう、素直に団塊の世代は失敗を認めた方が良いと思う。朝シャンを始めた頃からね。
由結:朝シャン…ありましたね!
宮本:ありましたでしょ?夜洗ってなんでまた朝洗うんだって思うでしょ?あんなのもう、省エネの最たる敵ですよ。
由結:そうですね、ブームでしたからね。
宮本:そう。もったいないという言葉をなんで教えなかったか。けち臭く見えたわけ、そんなこと言っちゃいけないわ、とね。お陰様でアフリカからもったいない文化が逆輸入でしょ、恥ずかしいですね。
由結:そうですね。そんな時代背景があって、弱くなってしまったんだと。
宮本:そう、マッチ一本擦れない人たちが次の世代ですからね。これから生きていけるのかという…。
由結:そうですね。では、どのようにすればいいのでしょうか?
宮本:どうでしょう…私思うに、ジュニア世代に今からマッチ擦って火を起こす訓練をしようとしても、何言ってんのこのババアと思われるわけですよ。だからむしろ一世代年越えちゃったらどうかな、と。文句ばっかり言ってるのび太&ジャイアン世代なんてどうでもよろしい。でも可愛い孫世代は生き残らせなきゃいけない、と。
由結:なるほど。孫世代にサバイバル力をつけてもらうわけですね。
宮本:そう。子ども世代は諦めて、直接孫世代に影響を与えていく、と。真っ白けな心映えの孫というのは非常に素直に受け取ってくれますから、まずサバイバル力をつける。もうどんな環境下でも生き抜けるという力をつけてあげる。そしてなおかつ、ぶち壊してきちゃった伝統文化みたいなもの、こんなの古臭いとか言って壊してきちゃったものを、直で孫に伝えちゃった方が良いと思います。私大学で教えている時期ってかなり長いんですけれども、学生たちのアンケート取りますとね、印象に残っているものというのは、じじばばが教えた物事というのが多いんです。じじばばに、仏壇の前に引っ張ってこられて、ご先祖様に謝りなさいと言われた記憶は、どんと心の中に入っているんですね。仏壇の中にご先祖様なんていないわよって生意気なこと言った世代はこっちに置いておくんです。
由結:一世代飛ばして、次の世代に教育を、と。
宮本:それも残すのには後10年か15年しかないですから、頑張って今どんどん残していかないと。「お天道様は見ているのよ。」とか、「恥ずかしいと思いなさい。」とか、「お米の粒を残すんじゃありません。」とかね、けち臭いとか全部抜かして、自分達が上の世代から受け継いだものを、もうそのまま直で渡していく。その仕事が、私は孫育ての一番大きな仕事じゃないかなと思ってますね。
由結:そうですか、という事はやはり、熟年世代の皆様が、活き活きと活躍して、伝えていくという事でしょうか?
宮本:よく言うんですけれども、ワンちゃん飼うなら孫の面倒見ろと。なんでかと言うとね、孫の方がボケ防止にちょうどいいの。犬は尻尾振ってきて可愛いんですが、ほんわかするだけで前頭葉が全然働かないようですね。でも、孫というのは、ちょっと油断すると、ボチャンと落っこちるし、バタンと倒れるから、ハラハラする分だけ脳の血管が非常によく回ると。
由結:という事は、孫育てをしながら、ご自身もより健康でいられるということですね。
宮本:そうですね、疲れない程度の、自分の体力作りをできる、目標がある。なんといっても孫の楽しい反応というのは、私たちの生きがいになる。
由結:そうですね。この“輝ける熟年”の生きがいというものが、先生のご著書でも沢山出てきます。本当にお聞きしたい事が沢山あるんですけれどもそろそろお時間になりました。最後にリスナーの方に向けて、メッセージを頂けたらと思います。
宮本:私は学生にこれを言われてショックを受けたんですけれども、「先生、自尊心って何ですか?」って。これはもう驚きなんですけれども、ユネスコの統計でも、日本の10代の子の自尊心の少なさというのは、先進国中最低なんですね。大体3分の1くらいの子が、自尊心というものを持ったことがないと言っております。つまり自分を誇りに思ったり、自分を大事に思ったりできないんですね。なぜかと言うと、一つには、成績とかそういうもので、「お前はダメだダメだ。」と教師に言われ、親に言われる。だけど「成績だけが人生じゃないよ。」と、「お前は立派だよ。」と言ってくれるじじばばがいれば、子どもにとっては、自尊心の源になる。だから是非漠然とした言い方でいいから、「お前は立派だ」とか、「きっと大器晩成する」と、「良い奴だ」とか。どんなにお前を好きかとかを、じじばばが、シャワーの様に肯定感を浴びせていけば、自尊心というのはもっと溜まるはずなんですね。
由結:自尊心の源になる言葉のシャワーを、おじいちゃまおばあちゃまから孫に浴びせていくのですね。
宮本:そうです。「誠実であれ」、「正直であれ」、「他人に対してフェアであれ」、この3つの生き方を守ったら、世界のどこに行ってもあなたの品格は通用する。信頼されて誰とでも友人になれる。だから、損か得かでものを考える前に、この3つのポリシーを常に持っていろ、と私は訴えています。そういうこと言えるのもじじばばの力だと思うんですね。
由結:その通りですね。是非ラジオをお聞きの皆様もこれを心に留めて、ご家族で話し合う時間をつくってみてはいかがでしょうか。では宮本先生、2週に渡りご出演頂き、有難うございました。
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『コロナ渦中、捨てる神有れば・・・』
若い頃は縁がなかった海外旅行だが、ここ数年は女友達らとワイワイ2週間程度の「命の洗濯ツアー」に出かけている。チョー家事オンチの夫は日程が近づくと情緒不安定になり、幼子のように発熱するのをなだめすかして直前までもめる。
一度などわざわざ食べ慣れない生牡蠣で食中毒になり、「中止しろ」とわめく彼を入院させ、空港に駆けつけたこともあった。旅行中もスマホは留守電とメールの山。頭痛がする、胃が痛い、動悸がする、スグ帰れ・・・あんた、ホントに心臓専門医か?
帰宅してみれば鉢植えは枯れ、本人はヨレヨレ。「ボク、自分が生き抜くだけで精一杯だった・・・」とションボリした。この話を地方誌の連載で書いたら、母性愛をかきたてられたか同類相憐れむの心境か、夫はいっきに読者アイドルとなり、毎年旅行シーズンになると「今回の彼はどうなりました?」の問い合わせが殺到するという。
今年はコロナ渦で旅行は全てボツ!ヒマなら連載まとめて亭主のビフォア&アフター記を出版しませんかと編集部から打診。「捨てる神あれば拾う神あり」である。