世界の水不足を解決に導く!DG TAKANO 代表取締役 高野雅彰さん
銀銀座ロイヤルサロン1週目
由結:さあ、本日の素敵なゲストをご紹介します。DGTAKANO代表取締役・高野雅彰さんです。本日は高野社長が現在の素晴らしいご活動をするに至った流れを伺ってまいります。よろしくお願いいたします。
高野:はい。よろしくお願いいたします。
目次
高野社長が起業を考えた理由
由結:早速ですが、例えば小学生の頃はどんなお子さんだったのですか。
高野:僕が小学生の時はバブルだったんですよ。近所の社長さんたちはベンツに乗ってゴルフの会員権を買いまくるみたいなことをしていたんです。そのあと、中学校に入ると同時にバブルがはじけて、皆さん元気がなくなってね、倒産・廃業が続いていき・・・そこから大阪というのは景気が一度も良くなってない。そういうのを経験して来ているという世代でした。自分の親もバブルがはじけた時に「一生かかっても返せないぐらいの借金ができた」というようなことも言ってましたし、子どもながらにそういうのを聞いてて、「大変で難しい仕事をやって、一生懸命仕事に取り組んでも全然儲からない。そんな自分の家業なんて絶対継ぎたくない」
というふうに思っていたんですよ。だからといってサラリーマンもやりたくない・・・消去法で起業するという選択肢しかなかったんです。
由結:なるほど、消去法ですか。具体的にはいつくらいにその考えに至ったのですか?
高野:高校生くらいかな。
由結:その頃は、周りから見たらちょっと珍しい存在だったのではないですか?
高野:高校時代は高校を卒業してそのまま働く子もいれば、大学に行く子もいますから、将来のことを考え出す時期じゃないですか。大学でもどこの大学、理系なのか文系なのかとか、専門学校に行くのかとかね。将来のことを考え出す中で、僕も自分の人生どうするかということを考えて、家業は絶対継ぎたくないし、サラリーマンもやりたくないということで起業しかない、自分で会社やるしかないと思いました。僕以外にそんなこと言ってる人はいなかったです。
由結:そうでしたか。それでそのあと起業されることになるわけなんですね。
高野:脳みそ的には数学とか物理が得意な理系脳だったんですけど、自分が起業するということだったので経済学部に行きました。さらに、就活する時もみんなが大企業に周りや友達が行く中、一人ITベンチャーに行ってこれから何をするにしてもそのITの知識が絶対に必要になってくるということでITベンチャーに就職したんです。その就活のときには「3年で辞めます」と宣言して就職して、計画通りに進めました。実際に自分が本当に起業するとなる時には、社長をするのは決めていたけど、何の事業をするかは決めてなかったんです。
由結:なるほど。
起業するにあたって設定した4つの目標
高野:「何をしようかな」
と考えて、仕事というのはすごく人生の大半の時間を占めるから、この選択で人生が大きく変わると思ったので、結構真剣に自分の人生や自分自身について考えました。それで4つ、夢・目標を自分の中で作ったんです。まず1つ目は『誰かの真似をしないこと』。オリジナルのものを作りたいと思ったんです。それがハードウェアでもソフトウェアでもサービスでも何でもいいんですけど、誰かのやっている仕事が儲かるから、自分もそれをコピーしてやろうというのは嫌だと思いました。2つ目は『世界中を飛び回るような仕事をすること』。大阪だけで完結してしまう仕事だと大阪から一歩も出ずに人生終わってしまいそうで嫌だなと思ったんです。せっかく地球に生まれたんだから世界中を飛び回りたいと思いました。3つ目は『40歳までに一生分稼いで辞める』という目標です。働きたくなかったんで(笑)「働きたくないから働かない」ではなくて、例えば60歳、65歳、70歳の定年までダラダラ働くのは絶対に嫌だと。だからきゅっと短くしてその期間一生懸命働いて一生分稼いであとは悠々自適な生活をしたいと思ったんです。
由結:すごい発想ですね!
高野:当時の日本ではあんまりいい考えかたじゃなかったですけどね。でも世界にはそんな人たち当たり前にいっぱいいるから、普通に自分の人生でそんなの嫌だというふうに思ったから。今でこそそういう人たち増えてますけどね。15年前はそんなことを言う人はいなかったですけどね。
由結:その発想をもとに活動されるわけですよね。
高野:そうです。そして、4つ目は『夢を持って前向きに自分の人生を頑張りたいと思う子たちが集まって、みんなで協力しあうという組織を作りたい』ということ。働いてる人たちを見ててもみんなネガティブで前向きに働いている人がすごく少ないなと思ったんですよ。日本というのは経済大国になって安全で便利で綺麗で住みやすい国にもかかわらず、ほとんどの人が夢が叶ってない。みんな人生の途中で、何か夢があったとしても途中で挫折して妥協した人生を生きている・・・。残りの人生消化試合をやっているということを強く感じたんですよ。いろいろな機関が分析していますが、日本はネガティブに働いている人が世界の国々と比較してもトップレベルなんです。
自分の体験と、分析されたデータを合わせて見たら、「(人々が)幸せに働いていない」・・・それって幸せな社会じゃないと思いました。そして、「幸せに働く」ということを独力で叶えるのは難しい。運や才能やタイミングといった恵まれた一部の人しか夢が叶わないというような社会は良くないと思ったんです。多くの人が夢が叶い、なりたい自分になって行きたい人生を選べる・・・これこそが本来あるべき社会のありかただと思ったし、独力で夢を叶えるのが難しかったら夢を叶えたいと思う人たちが集まって協力しあって、それでそれぞれのお互いの夢を叶えればいいんです。そうすれば夢が叶う確率が高くなるし、夢が叶うまでの期間も短くなります。これこそが本来あるべき会社のありかたなんじゃないかと思ったんです。
『DG TAKANO』の『DG』にこめられた意味
高野:日本式のピラミッドでみんなストレス量産という鬱量産組織みたいになってるのが、すごく違うなと思ってたんですよ。そこで、『夢を持って前向きに自分の人生を頑張りたいと思う子たちが集まって、みんなで協力しあうという組織を作りたい』と思い、デザイナーズギルドという会社名で最初スタートしたんですよ。
由結:なるほど。これが『DG TAKANO』の『DG』の意味なんですね。
高野:はい。そうです。
由結:この考えかたに共鳴・共感している仲間や社員の方々が周りにたくさん集まっていらっしゃるということですね。
高野:今でこそですね。当時誰にも受け入れられなくて、結局一人で始めることになったんです。
由結:たった一人でそれをやっていくというのは、とてつもなくつらい思いもされたんじゃないかなと思うのですが、いかがでしたか?
高野:まぁ大変でしたよ。当時大企業志向でしたから、そこから外れて自分で起業するなんて言うのは、馬鹿にされたり見下されるような対象だったし、「そんなんできるわけがない」というふうにみんなから思われてたわけですよ。デザイナーズギルドのデザイナーというのは自分の人生をデザインするとか、未来をデザインするとかという意味で作っていたので、そういう人たちが集まろうという意味です。でも誰にも受け入れられなくて、それで「あぁ、なるほどな」と、これは成功して「ほら実際に夢は叶うでしょう」というのを証明しないと説得力がないなと思って。それも小さな成功だったら誰も驚かない。なので圧倒的な成功を出さないと誰も話を聞いてくれないなというふうに思ったんですよ。だから、それまでは独力で頑張らないといけないんだなと思って頑張ってましたね。
由結:綿密な目標と目標設定をしっかりと考えていらっしゃったんですね。
高野:もともとそういう思考でやってますね。
由結:その思考は、幼少期あるいは小中高時代などどのあたりでできたんでしょうか。
高野:どうですかね?みんな受験経験するじゃないですか。受験の日は決まってるからそれに向けて逆算してやっていくとかっていうのは一応みんな経験をしていますよね。
町工場を営んでいた父から受けた影響
由結:もうひとつお聞きしたいのですが、町工場を営んでいらっしゃった高野社長のお父様からの受けた影響はありましたか。
高野:もともと継ぐつもりがなかったから別に何か機械とか技術を受け継ぐみたいなこともなかったんですよね。ただ考えかたや働きかたは子どもの時から見ていたので、尊敬してますね。それですごくよく働くなと思ってたんですよ。
由結:よく働くお父様!
高野:「絶対(父のように)働けへんやろ」と自分では思っていましたが、同じように働いているなと思います。
DG TAKANOに優秀な人材が集まる理由
由結:さらに伺いたいのですが、御社では本当に優秀な人材がたくさん集まっているとお聞きしています。例えばインドのトップの大学であるインド工科大学の学生なども集まっていらっしゃるということなのですが、人材についてはどのようにお考えですか?
高野:最初自分一人で『Bubble90(バブル90)』を作って、売りにいったけれども売れないわけですよ。やっと売れるようになってお金が入ってきたから社員を雇えるとなって、募集をかけたら応募がゼロなわけですよね。『東大阪・町工場・節水』という三大魅力のないキーワードでしたから、誰も働きたいと思わないという感じだったわけです。そこで、1からブランディングをやり、自分の考えを伝えて賞を獲っていくと、応募してくる人が増えてきました。社長ひとりの会社ですから(社内の)ポジションがたくさん空いていますからね。どんどん採用していった結果、勝ち船に乗りたい人が増えていき、頑張る気がない子たちがいっぱい入ってきて、会社が失速していくという現象が起こったんです。自分の目指していた『夢を叶えたいと思う人たちが集まって協力し合うという組織』とかけ離れたものになっちゃったんですね。
由結:それは大変ですね。そのあとどうしたんですか。
高野:そういう人たち(夢を叶えたいと思う人たち)はどこにいるんだということを考えた結果、優秀な人材が必要だと思ったんです。そんなとき、インドの優秀な学生たちを世界中の大企業が取り合いをしているという情報を知り、彼らの一人に(弊社に)来てもらったことがあったんですけれど、ものすごく優秀だったんですよ。「日本人の学生さんにはいないよね」というレベルの子たちがゴロゴロしていたので、この子たちを取りたいと思いチャレンジするようになったんです。
由結:御社は2015年に『働きたいベンチャー企業一位』に選ばれていますが?
高野:それは日本の話ですね。日本人で大企業で働いている3000人に聞いた。「もし自分がベンジャーで働くのならどこ行くか」というのもランキング1位に選ばれたことも2015年にあるんですけど、そこから募集の応募の数がどんどん増えていって、今では本当に募集をかけると2700人の応募が来るくらいになっています。
由結:それはすごい!
高野:最近はもう募集もかけないようにしてますね。
由結:選ぶのが大変ですものね。
高野:はい。誰に刺さるかというのが全然違うので『日本人に刺さる理由』と『インド人に刺さってる理由』は全然違うんですよ。
由結:『インド人に刺さる理由』はなんですか?
高野:今GAFAM(ガーファム)と、インド工科大学の学生たちを取り合いをしています。そういうことがなぜできるかというと学生からの人気が殺到してるからです。うちはデイワンと言って1日目、採用の初日に入ってるんですよ。初日枠に入っている会社がまず面接して好きな子たちを取って、それでそこにあぶれた学生はデイツーの2日目の会社が取りに行く。それでまたデイスリーの会社が取りに行くという形で2週間続いていくんですよ。それでうちはデイワンなので1日目なんですよ。1日目は世界で一番人気のある会社たちとの取り合いなるんですよね。何でこれができているかというと、弊社にそういう魅力があるということをアピールしてるからなんです。
由結:その魅力についてもお聞きしたいところですが、そろそろお時間になりました。興味深いお話の数々、有難うございます。最後に、ぜひ皆様にお手に取っていただきたいのが、節水ノズル『Bubble90(バブル90)』そしてすすぐだけで汚れが落ちる食器『meliordesign(メリオールデザイン)』。これらの情報につきましては、ぜひホームページから『DGTAKANO』でWeb上で検索をしていただいて、公式ホームページからお申し込みいただきたいと思います。それでは高野社長、本当にありがとうございました。
高野:ありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン2週目
災害などの非常時、少量の水で汚れがすべて落ちるお皿
由結:さあ、本日の素敵なゲストをご紹介いたします。DG TAKANO代表取締役・高野雅彰さんです。よろしくお願いいたします。先週に引き続き2週目ご登場頂いております。
高野:よろしくお願いいたします。
由結:高野社長は最大節水率95%の節水ノズル『Bubble90(バブル90)』、さらに2023年には水だけで油汚れも細菌も落とせる食器『meliordesign(メリオールデザイン)』を発表するなど素晴らしい商品を数々世に送り出していらっしゃいます。何でも聞くところによるとこのmeliordesign(メリオールデザイン)は1月に起こった能登半島地震の時にとても役に立ったそうですね?
高野:はい。弊社が直接ではなかったんですけど、弊社のお皿をまとめ買いしてくれたお客様が能登に寄付で送られたみたいなんです。断水していて水使えない・下水にも流せないという中で、ずっと紙皿の生活をしていた人が使ったら、ペットボトル1cmぐらいの水で全部その汚れが落ちるので「これはすごい!」ということで、それをSNSで上げてくれてたんです。
それを弊社のスタッフが発見して「あっ、こんなところにも役に立つんだな」ということがわかり、弊社からもまとめて送るということをやらせてもらってます。
由結:かなり少量の水で落ちるということですよね?
高野:そうですね。普段使いで家事が水だけで落とせるから楽になるというのもあるんですけど、もしも震災などの非常時に、極端な話、霧吹きでかけるだけでも落ちるということなので本当にペットボトルのお水があれば十分落とせます。
由結:いやー、素晴らしいですね!
高野:菌も落とせますので。
素晴らしい商品の開発秘話
由結:このような素晴らしい商品の数々の開発秘話を教えて頂きたいのですが…まず『Bubble90(バブル90)』からお願いします。
高野:『Bubble90(バブル90)』は僕が一人で町工場にこもって開発していました。節水をするということは水が出る量を減らしていくということ。今までの節水の製品だと勢いが弱くなっていくんですよ。勢いが弱くなっていくということは、確かに1分あたりは出てる水の量は少ないけど弱いから洗うのに1分じゃなくて2分かかるようになります。「それじゃあ節水になってないやんか」という問題があったんですね。洗浄力を落とさずに、むしろ洗浄力を上げつつ節水していかないといけないということで、この相反する二つを両立させないといけないというのが大きな課題だったんですよ。
由結:大変ですね!そんなことできるのかと思いませんでした?
高野:はい。蛇口をひねって水を出してみて、それで「どうしたらこの水を減らせられるかな?」というのを考えたんですけど、よくよく見てみるとここに汚れがあった場合に、最初に当たった水というのは洗浄に使われている・・・次の水はどうなるかというと、ここに水の膜が張ってあって膜の上を滑っている。そもそも汚れに当たってないと、そのまま下水に流れて行っている…「この水全部めっちゃ無駄やな」と思いました。そこで、水を雨みたいに玉で飛ばしたら、最後の一滴まで全部汚れに直撃させられる、と思いついたんです。こうすれば洗浄に使われない水は一滴もない。ゴールは決まった。「でもどうやってこれ作るの?」というのですごく苦労したというのがありますね。
由結:なるほど。
高野:水はくっつきあおうとする性質があって、これをちぎるというのはすごいエネルギーがいるんですよ。ちぎってつぶつぶにして出さないといけないというのがすごくエネルギーがいるので、これをどうやって出そう。それだけのためにコンセントにさして電気エネルギーを使いたくない。だから使えるエネルギーというのは水道水圧のエネルギーだけでちぎらないといけないというのはすごく難しかったんです。
由結:それをたった一人で工場にこもってやられたわけですか!
高野:もう何千回と失敗を繰り返しながらやってましたね。
由結:出来上がった瞬間というのはどうでしたか?
高野:実は、出来上がった瞬間というのはそれどころじゃなかったんです。ドイツのベルリンで世界最大級の水の展示会をやってて、それに半年ぐらい前に申し込んでおいたんですよね。その頃にはできてるだろうという見込みで申し込んでたんですよ。結局できたのは飛行機に乗る当日の早朝でした。
由結:えー!なんということでしょう!
高野:もうずっと工場に泊まり込みで。だからこんなに作るのが大変だとは思わなくてね。これ間に合ってなかったらただのドイツ旅行になってたというのがあります。
由結:いやー、笑えないですよね。
高野:そう。だから、最初にできた7つを握りしめて飛行機に飛び乗って、それでものはあるけど名前も決まってないしパンフレットも何もない。それでドイツまでの13時間の飛行機の中でパンフレットを作って、横で寝てる外国人を起こして、「これ英語で意味わかるか?」と聞いて、展示会現地の近郊でプリントアウトしてみたいなね、そういうことやりました。
由結:素晴らしい!運が味方しましたね!
それでは、meliordesign(メリオールデザイン)についてはいかがですか?
高野:meliordesign(メリオールデザイン)は僕が持ってる技術ではなく、日本の中小製造業を持っている他の会社の技術。でもドンピシャの技術なんてないんです。「油汚れを水だけで落とせるようにしたい」
これができる可能性がある技術を探して、そこの会社の社長さんにその話を持って行って、「こうこう、こういうことやりたいんだけど、ドンピシャの技術じゃないことは分かっている。弊社のスタッフたちと一緒に共同で研究開発やりませんか?」という話を持ちかけてやってきました。できるかどうかわからないことにすごくお金とか時間とか人をかけて、それでやってくれる会社というのは少ないんですよ。
由結:そうでしょうね。
高野:「そんなんできるかどうかわからへん。どうせできへんわ。」と言われたりね。もしくは「できたとしてもそんなん売れんの?」みたいな感じで言われたり。だからなかなか協力してくれる会社も見つからなかった。僕が大企業だったら作ったら売ってくれると思って皆さん頑張るかもしれないけど、そうじゃないから。その説得をして一緒にやっていく。A社とずっと頑張って研究開発やって行って、7合目まで来ると「この技術じゃできない」ということがわかるんですよ。例えば「5回こすらないといけないところを2回で済みます」じゃだめなんですよ。5回のところをゼロ回にしないといけない。洗剤なしで落とさないとだめ。洗剤使って5回こするのも2回こするのも手間としては一緒でしょ?洗剤ゼロにしないとだめなんです。誰もそんなことやったことない。でも、(その山には)登ってみないとわからない。それでダメだったとなったら、Aの技術は使えない。それで(山を)降りて次はB社とBの技術で登っていくんです。7合目まで行くとBの技術でも頂上まで行けないということがわかるわけですよ。それでまた(山を)降りて今度C社の技術を使って登って行って、それで頂上まで行けたということですね。
由結:3回繰り返したわけですね。途中でめげそうになりませんでしたか?
高野:あります、あります。僕もスタッフたちも相手の会社の方たちも「こんなんできんの本当に?」と。みんなそう思いましたよ。
由結:完成までにどのぐらいかかったんですか?
高野:だいたい5年ぐらいですね。
由結:はあ~5年ですか。高野社長のご意思の強さが感じられます。困難に突き当たった時に乗り越える秘訣はありますか?
高野:どうですかね?それが達成できた時の後の世界や自分の人生と、それを達成できなかった時を天秤にかけて、「これは達成できたらすごく面白くなるよね」というようなものが大きかったらチャレンジ頑張ろうと思いますけど、達成できてもたいして変わらんなと思ったらそこまで努力しないですもんね。
日本に欠けている“上流デザイン”
由結:確かに!こうやって色々なことにチャレンジを続けて来られていますが、高野社長は一般的なこの日本の企業の考えかたのものとはまた違った考えかたで技術を捉えていらっしゃるそうですね。その辺りのことを教えていただけますか?
高野:自分も『Bubble90(バブル90)』を作ってた時というのは、一般的な日本の会社と同じように技術至上主義だったんですよ。技術があれば勝てる、と。性能差を出せば勝てると思ってた時が僕もあったんですね。それで確かに技術というのは武器になるんですけど、それは勝てるかどうかというのは武器の一つでしかないんですよね。勝つためには他にも営業力やブランド力などいろんなものが必要になってくる。自分の会社を経営をしていくうちに、(技術は)弊社の一つの武器にしかすぎないということが分かったんです。結局「小さな大企業」になっていかないといけないんだなということが分かったんです。
由結:小さな大企業ですか?
高野:規模が小さくても全部必要だから、全部小さな大企業になっていかないといけない。そして、技術者が、「日本の会社の強みと日本の会社の弱みって何だろう?アメリカの会社の強みと弱みとは何だろう?中国の会社の強みと弱みは何だろう?インドの会社の強みと弱みは何だろう?」と。例えば、なぜ韓国のサムスンが急激に成長したんだろう?と、自分なりに分析してみたんです。すると、日本よりも技術力はまったくなかったということがわかりました。それなのに今日本の家電メーカー全部足したってサムスンに勝てないというくらいの規模になっちゃってますよね。あの頃は、日本中僕も含めてみんな(サムスンを)見下してましたよね。それで次同じことを中国で見下して見下して見下して・・・とやっている間に中国にまた抜かれて・・・。そして、次はインドとかインドネシア。どんどんどんどん見下していた会社や国に抜かれているのはなぜですか?ということなんです。やはりその勝因と敗因を分析しないといけないと思います。
日本が強いのは、技術者や研究者です。例えばiPhoneはiPhoneに入ってる部品とか技術の8割は日本製というのを昔聞いたことあったけど、「だったらなんでiPhoneは日本で生まれなかったの?」ということなんですよ。スティーブ・ジョブスが考えたわけですよね。そこで僕が気づいたのが、アメリカは「上流のデザイン」をやっているということ。日本でデザインといったら衣装など見た目の格好を指すことが多い。確かにそのデザインはあるんだけど、コンセプトとか戦略とかそういう上流のデザインが日本では抜けてるなということを思ったんです。そういう目で見たら「今まで日本人が軽視してきたのがマーケティングやブランディングやデザイン。これを軽視してきたことで日本がずっと負け続けてるんだ」ということに気づいたんです。最近やっと皆さんにマーケティングが大事だというのが周知されるようになってきた。でもデザインやブランディングはまだまだ。特にデザインが理解されていないというので「あっここだな」というふうに思ったんですよ。それで上流のデザインがいかに大事かということを僕は何かで話す機会がある時にはいろんな人たちに伝えるようにしているんです。
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シリコン・バレーで受けた衝撃
由結:こういった発想を持ったきっかけというのはどういうことだったんですか?
高野:僕が経産省のプログラムでシリコンバレーに連れて行ってもらったことがあったんですね。その時初めてシリコンバレーを見た時に衝撃を受けたんですよ。僕は日本でどこの街に行っても、別に住みたいなと思う街はなかった。大阪だろうが東京だろうとです。でも初めて自分が住みたいと思う街がシリコンバレーだったんですよ。「なんだここは?」と思いました。本当にベンチャーが成長するためのエコシステムみたいなのがもう出来上がっている。例えばカフェに行ってもバーに行ってもみんな夢を語って前向きに「自分はこうしたいんだ!」ことみたいなことを話してるんですよ。それでその環境がすごく良くて、「こんな環境で働きたい!」とすごく思いました。僕の話もすごく通じるんですよ。僕が日本で自分の考えを喋ったら「すごく変わってる。何でそんな考えかたしてるの?」とずっと誰にも賛同されなかった。初めて自分と同じ考えかたで気が合う人たちがいたと思ったんですね。そこでプレゼンしたら、僕のプレゼンの次のプレゼンをする人たちがドイツのサップ社だったんですけど、「高野さんに自分たちが喋ることを先に言われた」といわれて、それでそのあと聞いたら、全く同じ考えかたで全く同じ成長の仕方をしていると思いました。時代も業界も国も文化も違う規模も違う、全て違うのに勝ちかた一緒だったんですよ。それで「何でなの?」と聞いたら「高野さん、それデザイン思考ですよ」というふうに教えてもらって、それで色々調べていったら「何年も前に、自分と同じ考えかたをしてる人がいたんだと」というふうに思って結構嬉しくなりました。
由結:ご自分の考えているものというものが正解だったというか、同じ土壌でやってらっしゃるかたがいるんだと思ったら心強かったでしょうね。
高野:はい。正解というか「誰にも理解されなかったのが理解される人たちとやっと出会えた」という感じですかね。
社会課題・環境問題をまとめて解決するシンク
由結:これからさらなる展開も考えていらっしゃると思うのですけれどもいかがでしょうか?
高野:(弊社は)今は蛇口を作ったりお皿を作ったりしてますけど、蛇口を作ってる会社がいきなりお皿を作ったというので去年いろんな人たちにすごく驚かれたんですよ。普通節水のノズルを作って節水の蛇口を作ったら、次節水のシャワー作って節水のトイレを作ってTOTOのちっちゃい版になっていくみたいなイメージをされるかたが多いわけです。それって技術者の視点なんですよ。デザイナーの視点では、節水の蛇口といったら洗う側。その相方というのはシンクじゃなくて、「今度は簡単に汚れが落ちるお皿だ」というふうになるわけです。
ものづくりの会社の視点だと蛇口の相方はシンクでデザイン的に統一させるようになるんですけど、(私たちは)その考え方ではないんです。お皿を出したら次何かといったら「食べ残しが流れていくんですよね」と、それを今ビニール袋にくるんでゴミ捨て場に持っていく。そして、火力を使ってまた燃やしてCO2を出す。さらに、水不足の次は食料不足。さらにフードロスも起こっているというようなこの社会課題、環境問題が複合的に繋がっているわけです。これをまとめて解決したいと思っています。
そこで、次に私たちが作ろうとしてるのはシンク。今までだったら例えば下水にディスポーザーで流れて行っても下水に流れていくだけ。でも洗剤を使わずに洗えるんだったら、それは界面活性剤という毒が入ってないから、リユースできる可能性がある。そこからバイオタンクに流れて行って肥料とか飼料になって、それでそこから砂漠に森ができるとか、砂漠で野菜が育つ・・・そういうことをやりたいと思っています。
サウジアラビアの国家プロジェクト
由結:なるほど!まさに循環する社会になるわけですね。素晴らしい構想!このお話に賛同されるかたも多いんじゃないですか?
高野:そうですね。「構想としてこういうことを考えてるんです」という話をすると、応援・協力したいと言ってくださる会社もたくさんありますし、サウジアラビアの国や大企業とか財閥の会社ももう是非という形で、今サウジアラビアの国家プロジェクトとしてテストをやっているという感じなんです。
由結:これからさらなる発展が楽しみですね!それでは最後に夢を叶えたいリスナーのかたがたに向けて一言メッセージをいただければ嬉しく思います。
高野:一度きりの人生なので、僕も含めて皆さん好きに生きたらいいと思います。何もせずに生きるという選択肢もあるし、何かを成し遂げる為に人生を使うという選択肢もあると思うので、何か皆さん悔いのないように、出来るだけチャレンジして頂けたらいいんじゃないかなと思います。
由結:高野社長、素敵なメッセージありがとうございました。2週に渡りまして、DG TAKANO代表取締役・高野雅彰さんにご登場頂きました。本当にありがとうございました。
高野:はい、ありがとうございました。
高野雅彰さんへの一問一答
本日は、世界の水不足を解決!DG TAKANO 高野雅彰社長にインタビューしていきます。
由結:出身地は?
高野:大阪です。
由結:子供の頃の夢は?
高野:映画監督かな。
由結:子供の頃の習い事は?
高野:普通に塾に行ってました。
由結:好きな食べ物は?
高野:和食が好きです。
由結:趣味は?
高野:旅行ですかね。
由結:どこに行かれるのが好きですか?
高野:世界中どこでも行きたいです。
由結:好きな本は?
高野:漫画「キングダム」
由結:好きな映画は?
高野:「ショーシャンクの空に」
由結:尊敬する人は?
高野:他の起業家
由結:いまのお仕事に目覚めたきっかけは?
高野:「自分がどんな人生を生きたいか」ということを深く真剣に考え続けて今に至っているので、きっかけというのはないですかね。
由結:高野社長は、最大節水率95%の節水ノズル「Bubble90」を開発。さらに、2023年にすすぐだけで汚れが落ちる食器「メリオールデザイン」を発表するなど素晴らしい商品の数々を世に送り出していらっしゃいますが、製品開発の魅力をひと言で言うと?
高野:自分が好きなものをつくれるということですかね。
由結:いまのお仕事をしていて良かったことは?
高野:普通では経験できないことが次々経験できることですね。
由結:座右の銘は?
高野:“人生暇つぶし”
由結:いま実現したい夢は?
高野:世界中を森に変えていきたい。
由結:自分のアイデアを製品化したい方へのアドバイスがありましたらぜひお聞かせください。
高野:なんでも行動することだと思いますね。頭の中で考えているだけではいつまでたっても製品にならないので、行動することだと思います。
由結:最後に、夢を実現したいリスナーへのメッセージをお願いします。
高野:人生短いので遠慮している場合ではないと思うので、どんどん周りの目を気にせずに頑張りましょう!
由結:はい!高野社長、素敵なメッセージをありがとうございました。
高野雅彰さんのプロフィール
DG TAKANO 代表取締役
2008年に創業し、水資源問題の革新的解決に取り組む。
2009年、節水ノズル「バブル90」で『超モノづくり部品大賞』を受賞。
2019年には日経ビジネスの『世界を動かす日本人50』に選定。
2023年、Forbes Japanの『ChatGPT後の日本の勝ち方10』に選ばれ、同年に水だけで油汚れも細菌も落とせる食器「meliordesign」が『マーケター・オブ・ザ・イヤー』と『省エネ大賞』を受賞。
2024年には『Red Dot Design Award』を受賞。
サウジアラビアの近未来都市開発プロジェクトにも参画し、節水技術で貢献中。