プロ冒険家 阿部雅龍さん「夢を追う男」
『人類未踏のしらせルート南極点単独徒歩到達』
来年2023年11月に決定!
銀座ロイヤルサロン1週目
2021年植村直己冒険賞受賞
由結:それでは本日の素敵なゲストをご紹介いたします。プロ冒険家の阿部雅龍さんです。よろしくお願いいたします。
阿部:よろしくお願いします。
由結:阿部さんをお迎えして、今日はプロ冒険家という職業について伺っていきたいと思っています。阿部さんは2021年植村直己冒険賞を取られたとのこと。おめでとうございます。
阿部:ありがとうございます。
由結:ちょうど表彰などが終わったところなんですよね。
阿部:そうですね。6月に兵庫県豊岡市というところで授賞式がありまして、それをいただいたところですね。
由結:受賞されたご感想はいかがですか。
阿部:びっくりというか、日本人冒険家がみんな憧れる賞だったので、まさか自分がもらえると思ってなかったので、本当に驚きでしたし、本当に皆さんに取らせていただいた賞だなという印象は受けてますね。
由結:そうですか。先程「プロ冒険家」とご紹介させて頂きましたが、プロというふうにあえてつけているというのはどういうことなんでしょうか。
阿部:僕自身が職業としての冒険家というのを明らかに明確に出すために、プロとあえてつけています。プロの冒険家と言ってる人間は、日本だと僕しかいないので。
由結:なるほど。冒険家というと、例えば、南極・北極ですとか、深海とかジャングルとか砂漠とか、いろんなところを回ってるんだろうなというイメージなんですけれども、今までにそのトライをして一番過酷だったなというのはありますか。
阿部:結構難しい質問ですね。そのタイミングで自分にとって非常に難しいことをやるのでどれも難しいんですが、あえて言うのであれば、やはり最近やってる南極というのは非常に大変だなと思ってますね。
由結:冒険をするにあたり、どの地で、どのような冒険をするのかについては、どうやって決めるのですか。
阿部:まずは計画を立てることからですね。一朝一夕、1年2年で実現できることじゃないので、5年10年の感覚で計画を立てて、そしてそれを人に伝えていって、今でしたら人がやったことがないルートでの南極をやるために、じゃあ北極に行ってトレーニングをしようっていう、いわば中期計画みたいなものを作って、それをみんなに話しながら実際に実現していくっていう感じです。
由結:そうなんですか。中間で計画を立ててトレーニングを行ったりもすることもあるのですね。
阿部:そうですね。いきなりとてつもなく大きな夢を話しても誰も信じてくれないので、「そのためにこういうことをやっていきます 」
っていうのを話して、それを一個ずつ実現していくんです。そしてそれを人に伝え続けてると、「こいつ本気でやってるし実力もつけてきてるんじゃん」っていうふうになってくると、それまで応援してなかった方からも「頑張ってるね。応援するよ」となってきます。
危険ととなり合わせの孤独な世界
由結:実際にその計画を立てて、南極の地に足を踏み入れたところから過酷なものが始まるというふうに想像するんですけれども、どんな感じなんですかね。
阿部:まず南極におり立った時点、僕の場合は民間人で飛行機を自分でチャーターして行くしかないんですが、そこに降り立った瞬間はすごく嬉しいんですよ。やっぱりいろんなトラブルを乗り越えて、許可的な問題、自分の準備の問題、お金的な問題くぐり抜けて南極に立った。この瞬間に「なんとか来れたよ」って嬉しいんですが、そこから先はもう何カ月も一人で誰にも会わずに冒険することが多いので、そこから先はなかなか大変な日々が待ってるんですね。
由結:何カ月も人に会わないんですね。
阿部:そうですね。この前の南極だと2カ月間、全く人に会わないで、南極の内陸で生物もいない世界で、ペンギンなんかも内陸には入ってこないですし、鳥も飛んでこないし、そもそも寒くて乾燥しててウイルスとか微生物も不活性化と言って半分仮死状態なんですよね。だからもう微生物レベルで孤独な世界なんですね。僕ら、こうやってる中は一人で暮らしていても周りでふよふよと微生物は生きてるんですが、それすらもいないっていう世界です。
由結:うわー!すごいですね。まず人がいないということ、そして微生物さえも眠っているという、そんな過酷な状況なのですね。
阿部:そうですね。なかなか1カ月2カ月全く人としゃべらない、会わないっていうことは経験することないですからね。
由結:そしてそのあと、やっと人と会うという瞬間が訪れるんですか。
阿部:そうですね。2カ月終わったあと、最後はピックアップに飛行機に来てもらうんですが、そのときに久々にしゃべるって感じですね。
由結:そうなんですね。そこに至るまでに、様々なことが起こると思うんですけれども、例えばどんなことがありましたか。
阿部:南極の場合とかだと、これはもうこの問題があったら一発アウトなんですが、クレバスという氷の割れ目があって、氷と氷がひずんで巨大な落とし穴作るんですね。30メートルとかの。これにやっぱり落ちてしまうと、完全に一人なので誰も助けてくれない。見えてる落とし穴はいいんですが、ヒドゥンクレバスっていうものがあって、ヒドゥンって英語で隠れた、hideの過去分詞形なんですが、それは雪が覆いかぶさっていて見えないクレバスで、それとかは踏み抜いてしまうと落ちちゃう。見えてる落とし穴ってあんまり怖くなくて、見えてる落とし穴に自ら落ちに行く人あんまりいないじゃないですか。見えないからやっぱり落ちるわけで、見えない落とし穴に常に注意しながら進んで行かなければいけない。それはもう落ちたら一発でアウトなんで。
由結:その場合は足を少し先に進めて大丈夫かどうか確かめながら歩くんですか。
阿部:そういうこともありますね。長い棒みたいなもの持ってて、それでさしながらという場合もありますし、よく見ると隠れたクレバスというのは雪の色が違うんですよ。クレバスの中の氷って圧縮のせいなのか少し青いんですよね。青い氷なんです。ですから、その色をうつして、よく見ると若干青いんですよ。その色の違いを見ながら、ちょっと青いからここは多分ヒドゥンクレバスだから注意するなり避けるなりしなきゃいけないなっていう判断をしますね。
由結:すごいですね。その極限の状態で毎回判断をしながら歩いているということなんですね。
阿部:そうですね。常に判断の連続ですね。
幼少時代から憧れ続けた冒険と探検
由結:そういった死と隣り合わせの状況が続く冒険!阿部さんの何がそれを続けさせているんでしょうか。
阿部:小さいころからの憧れですかね。子どものころ、10歳のころに母親が買ってくれた冒険家・探検家の本を読んで憧れて、この人たちみたいな生き方をしたいっていうところできてるので、だから僕は個人的なものとしては、本当に子どものころ憧れた生き方をしたくて、それをやっているうちに応援してくださる皆様が増えてきたんです。自分のためであり、そして応援してくれてる人たちのためでもあるっていうふうには変わってきましたが。
由結:そうですか。冒険で歩いている最中、誰とも口を聞いてない状況で、応援してくださっている方、それからこれまでの思い出みたいなものがよぎったりすることっていうのはあるんですか。
阿部:そうですね。やっぱり一人で歩いてるときとか、もう本当に命からがらのときなんかは、自分だけでは頑張れないとき、やっぱり応援してくださる皆様のことがよぎったりすると、やっぱり頑張らなきゃいけないなっていうふうに思ったりはしますよね。
由結:そうですか。なんでも小さいころは体が弱かったり、ハンデもおありだったとか。
阿部:はい。小さいときは結構体が弱くていじめられっ子気質だったところがあって、夜に熱あげて夜間病院によく母親に連れて行かれてましたし、学校とかでもクラスで先生が「自由に班を作ってください」って言うと一人だけ余るタイプだったんです。
由結:切ないですね。そんな阿部さんが冒険家になる!その当時から頭の中にあったんですか。
阿部:一つの憧れですね。結構男の子って冒険とか探検に憧れるもので、そのみんなが憧れるものと近いような感じだった。ただ、僕の場合は、それが大学生とかになってもその憧れがずっと残ってたっていう。
“冒険家”に対する日本と欧米諸国の違い
由結:なるほど。こうやって夢を実現化させてらっしゃるの素晴らしいなと思います。この冒険家という職業の扱いについて、日本ではどうなんでしょうか。
阿部:欧米とはだいぶ違うなと思うことはありますね。例えば、僕がアメリカとかに行ったとかして自分が冒険家だって話をしたりすると、日本とまた違う反応が返ってくるんですよね。これは日本がいい悪いって話をするわけじゃないんですが、自分が冒険家ということをしてると言うと、まず一番はじめに言われるのが、「仕事してるんですか?」って言われるんですよ。
今でこそ職業になってますけども、「お金とかどうしてるんですか?」とか、そういうこととか言われるんですが、あとは家族とか「結婚してるの?」とかっていうところから入ってくるんですけども、これが欧米諸国であれば、一番はじめに冒険家ということをやってると言うと、まずはじめに「おめでとう」という言葉を投げかけられることが多くて、やっぱりその自分の夢を実現して、そうやって生きてるのは素晴らしいよねと。
そこから結局同じように「仕事になってるの?」とか「お金どうしてるの?」って聞かれるんですけど、やっぱりそういった部分の違いはあるかなっていう。ポジティブから入ってくるのと、どっちかっていうとネガティブとは言いませんがそっちから入るのでは、これは正直なところ、日本と欧米の国家としての発展の仕方の違いからくるものかなと思っています。
欧米諸国というのはある意味、大航海時代とかいろんな国の領土獲得、もしくは探検・冒険に行くことで国家が発展してきた側面が大きいので、国家の発展にどこか冒険や探検が必要であるというのが根付いているわけですね。ただ、日本というのはそういう国ではないですから、やっぱりそういった長年の歴史というのも関係してくるんじゃないかなと思います。
由結:なるほど。もうこれはずっと培われてきたものなので、恐らく仕方がないことと言えるのかもしれませんね。
阿部:そうですね。例えば今100年前の探検家、白瀬矗南極探検隊の足跡を追っているんですが、当時三つの国が史上初の南極点到達を目指していたんですが、ノルウェーとイギリス、そして日本の三つだったんですね。ノルウェーとイギリスはもう国の大々的なバックアップを受けたんですが、この白瀬さんというのは、国からのバックアップは結局受けられず、民間の人たちのカンパであったりとか、そういった一人一人のお気持ちで南極に行ったんですね。これは恐らく昔から変わらないものですし、僕は日本人なので、そこと欧米諸国を比べてもあまり意味がないなと思っているので、それでも日本人として、この日本のやり方でやっていくしかないんじゃないかなと思います。
南極点単独徒歩到達にチャレンジ―憧れた人の夢を受け継いで
由結:阿部さんはこの白瀬矗さんを大変尊敬していらっしゃるとか。この白瀬さんのルートを辿っていくということをやっていらっしゃるわけですね。
阿部:そうですね。今からちょうど110年前、明治末期、大正元年ですね。この白瀬さんが隊長を務めて、そのころに南極を探検したんですが、南極点まではたどり着けず途中で撤退したんですよね。僕自身はその撤退したポイントまで飛行機をチャーターしていって、そこから100年前の先人の夢を継ぐ。この白瀬さんという方は、僕が10歳のときに母が買ってくれた本で読んで憧れた人で、子どものころの憧れた人ができなかった夢を、100年以上経った今受け継いでやるということをやっていますね。
由結:素敵ですね!この話を聞いたら、多分子どもたちですとかいろんな方が目をキラキラさせてお聞きになるんじゃないかなと思います。この白瀬さんの白瀬ルート南極点単独徒歩到達にチャレンジされるわけですね。
阿部:そうですね。南極点単独徒歩到達ですから、南極点まで犬とかじゃなくて、完全に自分だけで、僕は人力で何カ月分もの食料を積んだソリを引っ張って、南極点まで歩いて到達するという。
由結:ソリの重さはどのぐらいあるんでしょうか。
阿部:ソリの重さが130キロぐらいありまして、それを引っ張って2カ月間ほど歩くという、非常に体力的な部分の側面も大きい冒険ですね。
由結:日々トレーニングはされているんですか。
阿部:日本にいるときもジムに行ったりとか、南極冒険が近づくとタイヤ引っ張ってソリに見立てて何時間も歩いたりとかしています。そもそも年に100~130日間ぐらい、どこかフィールド、山を歩きに行ったりとか、外国の冒険に出たりとかしているので、そもそも自分のライフスタイル自体が体力維持及び体力増強にはなっていますね。
由結:なるほど。阿部さんのお話聞いているとエネルギーがものすごく伝わってくるのと、それから先ほども写真撮影なんかしてたときも一緒にいるだけでこちらが本当に元気をいただけるという感じなんですけれども、それがこのお一人でずっと黙々と歩き続けたり、夢を諦めないというところにあるんだなというふうに感じさせていただきました。ちょっと唐突な質問ですが、地球滞在期間、つまり生きている間に、阿部さんが世の中や人々に伝えたいこと、どんなことがありますか。
阿部:一度しかない人生なんで、人生の冒険をせっかくだったら楽しみたいですね。
由結:冒険を楽しむ。なるほど。過酷であっても、阿部さんはとにかく楽しんでらっしゃるということなんですね。
阿部:そうです。そうありたいですよね。でも、多かれ少なかれ、人生って誰にでも過酷ですよね。冒険っていうのは定義が二つあって、一つ目が主体性があることです。これは自分が決めてやるということ。二つ目が自分が知らない世界へ一歩踏み出すこと。これが冒険の定義なんですが、これって別に冒険家だけではないんですよね。例えば、結婚をする、新しい職場に行く、例えば新しい知らないイベントに行くでもいいですよ。飲み会でもいいですが、それってもう知らない世界だから自分にとっては冒険なんですね。子どものはじめてのおつかいだってあれは大冒険ですし、それって自分で決めてみんな行ってるわけですから、みんな人生を冒険してると思うんです。
由結:なるほど。身近なところに冒険があったということなんですね。
阿部:実は。
由結:ありがとうございます。阿部さんには実は来週もご登場いただきまして、このお話の続きを伺っていきたいと思います。本日は素敵なお話をありがとうございました。
阿部:ありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン2週目
冒険家として必要な資質トップ3
由結:それでは本日の素敵なゲストをご紹介いたします。プロ冒険家の阿部雅龍さんです。よろしくお願いいたします。
阿部:よろしくお願いします。
由結:2週目ご登場いただいております。先週も本当に感動のストーリー、聞かせていただきまして、本当に勉強になりました。ありがとうございました。本日は阿部さんにいきなりの質問なんですけれども、阿部さんが考える冒険家として必要な資質トップ3ぐらいあげていただけると嬉しいなと思ってるんですが。
阿部:トップ3。3番目からいきます?
由結:はい。お願いします。
阿部:3番目からいくとすると、3番目は体力。2番目が忍耐力。1番がコミュニケーション能力。
由結:ありがとうございます。体力・忍耐力というのはなんとなくわかる気がしたんですけれども、1位にコミュニケーション力というのがくるんですね。
阿部:そうですね。コミュニケーション能力、いわゆるコミュ力がなければ冒険は成り立たないかなと思いますね。
由結:そうですか。なるほど。お相手の地に足を踏み入れるわけですから、いろいろな人とやり取りが必要になってくるということでしょうか。
阿部:そうですね。例えばイヌイット先住民の村とかに行って、そこで現地の人と仲良くなってどういうところが危なくてこのへんの地形がどうなってるかとか、なにかあったときには僕をサポートしてくれるっていう雰囲気づくりをしなければいけなくて、これってもうコミュニケーション能力で、僕が今やってる南極冒険とかになってくると、一人ではできないんですね。冒険という行為自体は一人なんですが、そこに手伝ってくれる人、試験的なところをやってくれる人、交渉をやってくれる人、いろんな人がいなければいけないんですが、そこをみんなを味方につけるためにはやっぱりコミュニケーション能力というのが非常に大事になります。
由結:確かに、その方が信頼をおけるなとか好感が持てるなっていう方のことは応援したくなりますけれども、最初に嫌われてしまったら、誰も手伝ってくださいませんよね。コミュニケーション能力を高めるために、なにか工夫してらっしゃることやその現地に行かれたときにやられていることってありますか。
阿部:ベースとなるのは同じ釜の飯を食べることです。もっと心理学的な用語を使えばミラーリングですね。
由結:なるほど!ミラーリングをするんですね。
阿部:基本ミラーリングですね。
由結:これは言語も宗教も関係なく、使える手法ということでしょうか。
阿部:やっぱり同じ価値観を持ったりする人に対して好印象を持つのはどの世界も一緒で、イヌイットの村に行ったときに、アザラシの生肉とかシロクマの肉とか、あと生きたままの鳥を食べたりする風習があるんです。それを出されたときに喜んで食べることはすごく大事で、例えおいしいと思わなくても、もう笑顔で「おいしい」っていう。あとは食べる瞬間に躊躇しない。
由結:なるほど。きっと、内心はどうですか。でもその生のですとか…。
阿部:内心はやっぱり驚きますよね。ただそのときに躊躇なく食べることによって、相手の価値観を肯定する。そのときに「食べたくない」とか「気持ち悪い」って言ってしまうと、相手が大事にしてる文化を否定してしまうことになってしまって、そうすると、相手は国も違うし人種も違うからいいよって思うかもしれないけど、少なからず嫌なわけですよ。僕らも嫌じゃないですか。例えば納豆とかを外国の方に出したときに、僕たちすごい好きなのに「気持ち悪い」って言われたら、いいんだけどちょっと嫌じゃないですか。
由結:わかります。そうですよね。自分自身を否定されたような気持ちになりますものね。おっしゃったようなことを、冒険をはじめてから、ずっと心掛けてやられてるということでしょうか。
阿部:そうなってきたって感じですかね。経験で知っていったっていうところと、やはり先人の冒険家の人たちの本とかを読んで、どうやってコミュニティに溶け込んでいったのかっていう、やっぱり例は知ってるわけですよね。実際に自分で体感をして、やっぱりそうなんだなっていう。そういう知識を入れてないとそもそも使えないでしょうね。
由結:今までに例えば生肉おいしそうに食べたりした瞬間に相手の態度が変わったりですとか、そういう変化というのがあるんですか。
阿部:やっぱり食べると相手が若干ニヤッとする感じはあるんですよね。
由結:ニヤッと?
阿部:絶対相手もどういう反応するかなって思って出してるわけです。多分僕らだってそうじゃないですか。自分の地元料理を誰か人に出すときにどういう反応するか、期待するわけじゃないですか。
由結:仲間になった感じに変わるわけですかね。
阿部:そうですね。そういうふうに感じてもらうことが大事ですよね。結局のところ、冒険なんて偉そうなこと言ったって一人じゃできないので、そこに応援してくれる人や理解してくれる人がいてできる。かつ、プロジェクトが大きくなればなるほど、自分一人だけじゃなんてできるわけがないので、そこで冒険をしながらも自分の弱さを知って、同時に自分の強さも知りながら強み弱みを知って、それで一個一個やっていく。
由結:そうですね。この冒険家として培ったコミュニケーションスキルは、おそらく日本に帰ってきてもあらゆるところで使えると思うんですけど、いかがですか。
阿部:使えますね。結局のところ、僕は冒険で得たものを応用して普段生きてるので。
由結:そうなんですね。例えば普段の生活でこれって応用できてるなっていうところってありますか。
阿部:とにかく笑顔でいるとかね。
由結:わかります。打ち合わせのときに阿部さんお越しくださったとき、ものすごく素敵な笑顔で颯爽と現れてくださったので、こちらも自然に笑顔になれました。
阿部:ありがとうございます。言語が通じないところとかも行ったりするので、ごく一部笑顔が駄目な国とかあったりしますけど、普通はそうじゃないので、やっぱり言語通じないところでどうするかっていうとニコニコしたりとか感じがいい雰囲気を出しますね。
由結:なるほど。雰囲気づくり、場づくりも大事だということですよね。阿部さんは元々人力車のお仕事をされてたということで、きっとお客様ともたくさんコミュニケーションは取られてたと思うんですけれども、そのときにはいかがでしたか。ご自分のコミュニケーション力結構あるなって思われてました?
阿部:はじめはそうじゃなくて、結構人見知りだったので、僕が人力車の仕事始めたのは体力づくりもあるんですけど、元々それもコミュニケーション能力上げるためだったんですよ。
由結:まあ、そうなんですか。
阿部:あれって歩いてる人たちに声掛けをして説明をして乗ってもらうので、お客さん乗せないと食っていけないんです。
由結:そうですよね。しかもやはりいい感じ、好印象がないと難しいでしょうね。
阿部:そうですね。だから人力車やりながら若いころから始めて、そこでトライアンドエラーでちょっとずつ修正していって今があるみたいな。
由結:そうなんですか。じゃあまさに経験を通して、今の理論というかできあがったということなんですね。
阿部:そうですね。
由結:やはり先ほども応援という言葉がありましたけれども、飛行機チャーターして行くといっても、信じられないぐらいの金額かかりますよね。そこに支援してくださる方、そして周りの方々の思いを乗せているとすると、ものすごく重い重責みたいなものがいつも肩に乗ってるんじゃないかなって想像するんですが、その点はいかがですか。
阿部:そうですね。プレッシャーは常にありますね。もう自分だけじゃなくなってますし、皆様に協力してもらってるので。ただそこをプレッシャーと考えるよりは背中を教えていただいてると考えるようにはしてますね。
由結:なるほど。背中を押してくださっていると。
阿部:そこはだからやる人自身、つまり僕だったら僕自身が強くならないといけないですね。みんな応援したいと思ってやってくれてるわけですから、それをプレッシャーと感じるのはプレイヤーとしてはお門違いかなと。
由結:さすがですね。なるほど。この心構えですね。
阿部:そうですね。ただそこも精神が健全じゃないとプレッシャーに感じることもあるので、そこは自分を律するように、健全な心でいれるようにはしなきゃ駄目ですね。
由結:健全な心身を常に保つという、そういうきっとご努力なさってるんでしょうね。
もう一点お聞きしたいのが、現代の日本人についてです。世界から日本に帰ってこられたときに、日本人に対して感じるところってありますでしょうか。例えば良い点、改善すべき点、いろいろあると思うんですけれども。
阿部:シャイな人が多いなって感じがしますね。人のことをすごい気遣って見てるんだけど、なかなか声をかけないパターンが多いので。
由結:ちょっと周りの様子を伺ってる…みたいな。
阿部:そうそう。そこはなんかこう、もっともっと声をかけていって、少しその心のままに従ったほうがいいかなと思うことはありますし、ただその静観するっていう姿勢も良さなのかなと思う部分があったりします。
由結:良さでもあり、ちょっと改善したほうがいいかなという、両方なんですね。
阿部:ケースバイケースの適応をするっていうのは大事なんじゃないかな。冒険もケースバイケースでその場に適応してやり方とか変えていかないと危機的状況になっちゃうので。
由結:そうですね。適応力、臨機応変さというのが必要なんですね。
阿部:そうですね。
三陸海岸を100キロ歩く冒険ウォークについて
由結:阿部さんはお子様を連れてのワークショップみたいなこともされてるんですよね。
阿部:そうですね。今は夏休み期間中に小学生の子どもたち、10歳~12歳の子どもたちと三陸海岸を100キロ歩くっていう冒険ウォークというのをやっています。
由結:それは小学生ぐらいの方が対象ですか。
阿部:そうですね。10歳~12歳の男女で、今年もチャレンジはしてますね。
由結:そうですか。そういうときにお子さんに必ずこういう声かけをしてるというのはありますか。
阿部:僕がやってるのは自分で判断することですね。おんぶにだっこっていう感じはないので、自分で判断してそれで動くことをとか、僕に頼るにしても、人に頼る子とを覚えるっていうのは、自分で決断して自分で言うっていうこと。ただそれを言ってもらうために、こっちとしてはみんなが達成するために自分はいるんだからしっかり頼ってほしいということはお伝えします。
由結:なるほど。この深い部分を理解した上で、まず自分自身で決断するということですね。
南極点単独徒歩到達チャレンジについて
由結:阿部さんにお話を伺っていると、精悍な感じとともに強い意志を感じます。ご自分をすごく律してらっしゃって、目標に向かって進んでいく強さが伝わってきます。
今後の挑戦のひとつにある、人類未踏の白瀬ルートによる南極点単独徒歩到達にチャレンジ。ちょうどこの放送をやっているときにクラウドファンディングが立ち上がっていますよね。
阿部:そうですね。次の南極に向けてのですね。
由結:そうですね。ぜひどうやったらこの情報取れるのかというのを教えていただきたいんですが。
阿部:そうですね。『夢を追う男』で検索していただきますと、僕のホームページが出てきますので、そこに全部情報紐づけされてますので、そちらからご覧になっていただくとシンプルじゃないかなと思います。
由結:『夢を追う男』で検索をなさってみてください。それでは、最後にリスナーの方に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
リスナーに向けてメッセージ
阿部:僕の冒険の師匠の言葉なんですが、夢を叶えたいとか自分の思いを叶えたかったら、手を挙げていきなさいって言われたんですよ。なぜかといえば、人間はみんな違う存在だから人のことを完全に理解することはできない。だから自分で手を挙げて自分は何をしたいのか、自分がこういう人間だっていうのを伝えなければ決して人はわかってくれない。それによって人に批判されることも嫌われることももしかしたらあるかもしれない。でも言わないとわかってもらえないですよっていうのを師匠に言ってもらったことがあったんです。すごい駆け出しの21とかの本当に若者時代なんですが、実際に僕はそうやって発言をしていろいろあったけど夢を叶え続けてきたし、応援してくださる方もたくさんいるので、恥ずかしかったり否定されるのも嫌だと思いますが、ぜひとも手を挙げて歩いてほしいなと思います。
由結:素敵なメッセージ有難うございます。阿部さん、2週にわたりまして、本当に素敵なお話ありがとうございました。来週は声診断ということで、また登場していただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
阿部:ありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン3週目
声解析・声診断コーナー
由結:本日は声解析・声診断コーナーです。クォンタムヴォイスアカデミー稲井英人学長が担当するコーナー。これまでに25000人以上の臨床データのある声診断ソフトにより、ゲストの方の声の波形を読み取り、その方の個性や能力をひも解いていきます。本日のゲストはプロ冒険家の阿部雅龍さんです。よろしくお願いいたします。
阿部:よろしくお願いします。
由結:それでは稲井学長、進めていただきたいと思います。
稲井:はい。よろしくお願いします。さあ、先ほども素晴らしいお話聞かせていただいたんですが、今からはご自分の心の冒険をしていただきたいと思います。
阿部:いいですね。心の冒険。これは初めての冒険です。
稲井:はい。今からしゃべっていただくことをドレミファソラシドにしゃべりを置き換えるんですね。そして色と波形にして見ていきますので、普段通りのしゃべりをしていただいて、12秒ごとに色と波形が出てきますんで、このセッティングだけちょっと準備をお願いしますね。
阿部:どんな結果が出るか非常に楽しみです。
稲井:オッケーです。じゃあ普段の会話しながらいきますんで。さあ、阿部さんもいろいろこういうラジオとか例えばテレビとかいろんなもの出たことあると思うんですが、緊張とか全然しないタイプなんですか。
阿部:緊張はしますよ。
稲井:本当ですか。
阿部:常に緊張はしてて、でもその緊張する感じがまたいいなと思ってるんですけど、完全にリラックスしてたらそれはそれでダルッとした雰囲気になっちゃうので、だから結構講演会とかは今でも手足震えますけど、それがいいですね。
稲井:なるほど。緊張の場って大好きですか。
阿部:そんなに好きじゃないけど、でもそのやっぱり緊張感は持って生きるっていうことはやっぱり張り詰めるからゆるっとしたときの良さもわかりますし、なんか人生って冒険もそうで全部波みたいなものだと思ってて、冒険で危険な思いをしたりとかなかなか食べられない思いをするから、日常にきたときにいかに幸せかがわかる。いわゆる昔の言葉でいうと足るを知るみたいなもので、なんか緊張してるから悪いってことじゃないかなと思いますけどね。
稲井:なるほど。…こういう形で色と波形でこうやって出てくるんですね。
阿部:おー!出てますね。
稲井:なるほど。
阿部:なるほどなんですか。
稲井:はい(笑)。またもうちょっと録っていきたいんですが、今は次のプロジェクトに向かって動いてると思うんですが、今準備状況とかどんな感じですか。
阿部:毎年毎回そうなんですが、楽じゃないなと思いますね。やっぱり資金的なところもそうなんですが、準備も大変ですし、そしてトレーニングもありという中で、大変だなって毎年毎年思いながら、でもそれでもやっぱりやりたくて続けていくという感じで、ただそのできるかわからない夢だからこそ冒険できて楽しいなと思いますね。冒険家ってすごく不思議な生き物で、できるわかってるものはやりたくなくなっちゃうんですよね。これが不器用にしか生きれない感じですね。
稲井:なるほど。いい言葉が出てきましたね。そこがやっぱりかっこよさでしょうね。
阿部:よく考えはしますね。なので自分がこういう思考で自己分析じゃないんですが、なぜ自分がこれをやってるかっていうのを深く掘り下げる。それはとくに僕は冒険で1カ月2カ月とか完全に一人で、場合によっては半年間、たまに人に会うけど一人っていう自然の中が多いので、考える時間はある。そのときにもっと自分を深く知れるようになるなと思いますね。
稲井:なるほど。ありがとうございます。こういう形で出てくるんですけども、基本的に、これ12色の色と波形で出てくるんですね。
阿部:面白いですね。
信念の道を行く―ゴールドの声
稲井:はい。とくにご自身のこのオレンジ色のところとかがわりと深いところで出るんですが、これが感じるという領域。やっぱりゴールドの部分とか、これが結構信念の部分を表すんですね。イエローのところもそうなんですが、いい意味で頑固。
阿部:頑固でしょうね。
稲井:僕はここだよって、やっぱりその信念がないとできませんもんね。
阿部:そうですね。頑固一徹じゃないとこの生き方にならないですよね(笑)。
稲井:そうだと思います(笑)。そこがやっぱりかっこよさでしょうね。このゴールドの声が出る方っていうのは、僕が憧れてるイチローさんの声なんかもゴールドの声なんですよ。信念の道を行くみたいな。
阿部:急になんか好きになってきました(笑)。
稲井:(笑)。
阿部:現金だなっていう(笑)。
コミュニケーション能力を表すグリーン、人とつながるアクアブルー
稲井:いや、素敵ですね。そしてやっぱりコミュニケーション能力はこのグリーンのところなんですよ。やっぱり誰とでもつながってオープンハートで、しかもこのアクアブルーというところが人とつながるし、しかも人の気持ちが一瞬でわかる。それがないと、とくに言葉が通じなかったりしたら、本当に味方にしていく。一瞬で相手の方を虜にしていくとか、そういうのものがないと、なかなか僕しゃべりが苦手でとか自分を出せないって言ってたら、さっきおっしゃってた通りで、本当に命に関わりますもんね。
阿部:そうですね。本当に。
稲井:この右脳的な感性は非常に素晴らしいと思いますね。だから誰とでも会話ができる方です。
由結:いや、さすがですね。もう阿部さんの魅力というのが声にしっかり出てたということがよくわかりました。
稲井:いや、本当です。全ての波形で出てきます。
由結:この内容につきましては、ぜひこのインタビューページに詳しく掲載しておりますので、ごらんいただければと思っております。
稲井:そうですね。
由結:阿部さん、3週にわたりましてご登場いただきましてありがとうございました。それでは、稲井学長、ありがとうございました。
稲井:ありがとうございました。
由結:それではまたお会いしましょう。ありがとうございました。
稲井:ありがとうございました。
阿部:ありがとうございました。
阿部雅龍さんのプロフィール |
1982年生まれ。秋田県出身。秋田大学在校中21歳から冒険活動を開始。同郷の明治期の探検家白瀬矗南極探検隊長の足跡を延ばしての単独徒歩による南極点徒歩到達を目指す。 基本的なテーマは単独と人力。あらゆる手段で北極・南極・アマゾン川など世界を冒険する。冒険を通して“挑戦する楽しさ”を伝える事がミッション。 執筆・講演・メディア出演の他に東京・浅草で人力車阿部屋を営む。 南極後は冒険学校を創立しリーダーシップのある人材育成をする夢がある。小学生たちとの夏の三陸海岸みちのく潮風トレイル冒険ウォーク100km主催。東京都板橋区で本気の夢を持つ若者がコストゼロで住めるTokiwa-Sou運営補佐。 2019年日本初メスナールートによる南極点単独徒歩到達(918km)を達成。 2022年1月 日本人初の南極探検家・白瀬矗氏の足跡を延ばしての南極点到達に挑むも途中撤退(54日間780km)。 受賞歴:2019年 板橋区文化特別栄誉賞。2022年 第26回植村直己冒険賞 メディア出演:よゐこの無人島0円生活、シューイチ、日本経済新聞、月間致知など多数。 著書:学校推薦図書『次の夢への一歩』角川書店。 講演DVD:日本人・百年の夢「人類未踏の冒険へ」日本経営合理化協会 |