白石 眞弓さん 武蔵野美術大学 特別講師 白石眞弓染色アート学院 学院長「”色ノ泉・色ノ花” 染色アートの世界」
銀座ロイヤルサロン1週目
2018年9月5日(木)放送
由結:さぁ、それでは本日も素敵なゲストをご紹介致します。白石眞弓染色アート学院学院長、武蔵野市教育委員会主催、染色工芸色ノ泉代表、そして武蔵野美術大学特別講師でいらっしゃいます、白石眞弓先生です。よろしくお願い致します。
白石:よろしくお願い致します。
由結:白石先生は顔料を使用した”友禅染”を中心に本友禅からテキスタイルアートまでの指導を行っていらっしゃると言うことなのですが、今現在の活動は具体的にどんなことをなさってるんでしょうか?
白石:そうですね、教室は東京に生徒さんが沢山いらっしゃいますし、大阪とあと長崎県の対馬ですね。そちらでもお教室をしていますが、あとの時間で自分の作品制作をしています。
由結:たくさんのファンの方がいらっしゃると思うのですけれども、大学でも講師をなさっていると言うことなのですが、学生の皆さんは先生のお着物姿を楽しみにしていらっしゃるそうですね。
白石:そうですね、ありがたいです。本当に着物と言うのは日本人の体形にとても合うんだと思うのですね。しぐさとか歩き方にしても、着物を着ることでとてもエレガントに女性らしくなるのではないかと思います。
由結:はい。今スタジオでお召しになっているこのお着物なのですけども、素晴らしい染料で染めてらっしゃると思うのですが、これはどのようにして染められたのですか?
桜の着物
白石:これは元々、喪服なのです。喪服は今はもうお召しにならない方が沢山いらっしゃるので、新品のまま箪笥に眠っていると思いますが、勿体ないですよね。喪服の黒は三度染と言って、素晴らしい黒の色なのです。黒にも100色ぐらい色があるのですが、中でも喪服の黒は最高級の黒ですので、そのまま眠らせるのは勿体なくて。それに柄を入れて訪問着や、付け下げふうに着れるようにしています。
由結:実際に生徒さんも先生を見習って作られると思うのですけども、「難しそう」と思うのですが、どのように制作していくのでしょうか?
型染めの工程
白石:お教室には型染めコースと手描きコースがあります。型染めコースでしたら絵心がないかたでも型がありますので、お子様でも大丈夫です。現在お教室に二歳のお子様や小学生のお子さんも来られているんですね。「本当に私は絵は描けません」と言われるかたが多いのですが、絵心は練習次第で身につくものなので、少しでも体験して頂きますとその世界が分かってきます。是非体験して頂きたいなと思います。
由結:お着物はもちろん染めることができますし、お着物以外の物でも可能なのでしょうか。
白石:はい。Tシャツから、バッグ、ブーツ、日傘。なんでも出来ます。
日傘
由結:まぁ、楽しい世界ですね。そこからまた皆さんお着物、和文化に興味を持たれるかたも多いんでしょうね。
白石:そうですね。
由結:生徒さんは指導員として活躍することもできるんですか?
白石:そうです。当学院では指導員、講師のお免許も取れますので、指導員を取ればお教室を開くことも出来ます。
由結:そうですか。白石先生が”友禅”を始めたキッカケは何ですか?
白石:元々母が良く着物を着ておりまして、着物に憧れがありました。それもあり武蔵野美術大学に行きテキスタイルを専攻致しました。しかし大学には私がしたかった手描きコースと言うのがなくて。卒業と同時にアメリカに行く機会がありまして、渡米。最初は楽しかったのです、刺激も沢山あり、アメリカの大きなパワーに凄く魅力を感じていたのですが、一年経った頃に感動が薄れてきました。
由結:まあ!
白石:「え?何だろう、この物足りなさは」と思った時に、やはり色数が少ないということに気が付いたのです。日本だと侘び錆びの色とか、曖昧な「色」と言うのでしょうか、そういう奥の深い”禅の世界の色”・・そういうのが無いことに気が付いて、日本に帰ってきてから友禅の勉強を始めました。
由結:外から見た日本、そして日本の良さを見出して、そして帰って来られて決断をされたのですね。友禅を始められた時、この伝統を受け継いでいくことや、これから先新しいものを作って行くことに対してワクワクなさいましたか?
白石:そうです。若かったのでよくわからないまま友禅の世界に入ってしまいました。ですからその頃は京都の先生と東京の先生の両方につきまして、勉強しながらだんだん自分の友禅の世界を作ってきた様な気がします。
工房の写真
由結:白石先生にとって”友禅”とはどんなものでしょうか?
白石:友禅は日本の誇りだと思っています。日本人の”器用さ”や”感性の豊かさ”、そういう才能は伝統文化に現れていると思います。ですから”友禅”と言うのは日本人の魂の文化だと言えるのではないでしょうか。
由結:なるほど。日本人は色の識別能力が優れていると言うことなのですか?
白石:そうなのです。友禅は元々”友禅斎”という扇の絵師の名前を取って”友禅”と呼ばれる様になりました。江戸時代に友禅という染色技法が出来たのですが、その頃に幕府が「庶民もお金持ちも贅沢をしてはいけない」というお布令を出しました。使える色は三色と限られていたのです。それが茶色と灰色と青色です。江戸時代は草木染めですから茶色と灰色というのは何を使っても出る色なのです。例えば鉄分の多い川で洗うとほとんど同じような色になってしまいます。青は藍染ですね。
そういう時でもやはり日本人の凄さと言うのは限られた中でも生活を豊かにしようとする知恵と器用さなのです。茶色や灰色、青色、その限られた色の中で、「この色が今年の流行ですよ」という感じで楽しんでいったわけですね。するとその一つ一つの色に名前が付くわけです。それでその頃にできた言葉が”四十八茶に百鼠”です。“四十八種類の茶色”に”百種類の鼠色”。実際はもっとあるのですけれども。そしてそれに一つ一つ色の名前がついたのです。色数が多いほど文化が高いと言われていますが、日本ほど色数の多い国はありません。私は色に関しては世界一だと思っています。
工房の写真
由結:素晴らしい能力が日本人のDNAの中にあった、と。
白石:そうなのです。凄いと思いませんか。例えば100色の灰色があって、名前がついていて。お客様が「この色にして頂戴」と言うと職人さんはその色を作ることが出来たのですよ。
由結:凄いことですね。
白石:凄いでしょ?そんな国どこにもないですよね。
由結:なるほど。そこに価値を見出されて。「これはぜ是非とも広めなければ」と思われたのですね?
白石 : そうです。
由結:そう言ったことを先生の学院ではお勉強させて頂けるんですね。
白石:はい、当学院では白、黒は別としまして色を作るのに赤・青・黄色の三原色しか使わないんですね。
> 同じ緑でも皆さん調合で全く違う緑になりますし、一人として同じ色は出来ませんので、そこで個性が出てきます。
由結:そうですね。ここに先生をはじめ、そして生徒さんらの作品があるんですけれども、少し拝見させて頂きますと、こちらは…素晴らしいですね。
白石:有り難うございます。こちらは”SNOW MOON”というタイトルです。私は2000年からずっと月をシリーズに作品を作っています、これは”雪の月”です。月を表現するのに白い鳥を媒体にしているのですが、月の生命力だったり、優しさだったり力強さだったり。
SNOW MOON
由結:優しさと力強さが両方が感じられます。雪の結晶がまた細かい作業だと思うのですけれども、これもその型紙の様な物を使うのですか?
白石:はい、型と手描きの両方で。
由結 : お着物に実際に染めてらっしゃる例と言うのもありますよね。
白石:はい、これも喪服に染めております。
雪の着物
由結:喪服に美しい雪の結晶がありますけれども、こういうふうに帯とそれからお着物そのものにおそろいの柄を自分のお好みで染めることができるわけですね。
白石:バックや草履や小物まで、全部トータルで染めることが出来ます。
由結:お着物好きの方にはたまらないでしょうね。パーティーへも着て行かれると凄く話題になるんじゃないかなと思います。先生のこの”染織工芸、「色ノ泉・色ノ花」展”と言うのが今度開催されますよね。こちら、少しご説明頂けますか?
白石:色ノ泉と言うのは私のグループでして、色ノ花と言うのは娘のグループです。どちらかと言いますと私のほうが伝統工芸の着物が多くて、娘のほうは現代的な作品が中心となっています。
展覧会
由結:はい。これがもう盛大に開かれると言うことですよね。
白石:武蔵野市の教育委員会主催で、今年三十回目を迎えます。毎日、画家で主人の番洋、娘と私も皆会場におりますので。是非お越しください。
由結:はい。会場は武蔵野市民文化会館で行われております。是非皆様、足を運んでみてください。
白石:よろしくお願い致します。
由結:それでは先生、来週も出て頂けると言うことですので、楽しみにお待ちしております。
白石:はい、よろしくお願い致します。
由結:ありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン2週目
2018年9月12日(木)放送
由結:さぁそれでは本日も素敵なゲストをご紹介致します。白石眞弓染色アート学院学院長、武蔵野市教育委員会主催、染織工芸色ノ泉代表、そして武蔵野美術大学特別講師でいらっしゃいます、白石眞弓先生です。よろしくお願い致します。
白石:よろしくお願い致します。
由結:白石先生には二週目ご登場頂いております。本日も素敵なお着物をお召しなのですけれども。先生は”友禅”と言うものに特化をして、そして顔料を使った友禅染を中心に本友禅からテキスタイルアートまでの指導もなさっていらっしゃいます。前回も本当にたくさん作品も見せて頂いたのですけれども、先生は生徒さんに接する時と言うのはどういうことを気を付けながらご指導なさってるんですか?
白石:そうですね。生徒さん皆さんが幸せいっぱいでお教室に来られているのではなく、お仕事で疲れている方、親の介護をしている方、ご自分が病気を持っている方。いろいろな方が来られています。ですから、癒しの場にしたいと思いまして、”色”をみて幸せになって頂きたい。疲れた心を癒して頂きたいということをいつも思いながらご指導させて頂いています。
お教室
由結:私も先生の三鷹のお教室、行かせて頂いたことあるんですけれども、凄く入った瞬間からまさに癒しの空間。しかも皆様、ご自分のお着物や帯に一生懸命染色されているので、真剣なのですけれども、熱中してる時は、皆さん”いいエネルギー”が出てますよね。
白石:そう、無心になれるんですね。
由結:お子様も参加できるそうで。アンパンマンなんかも描けるんですよね(笑)。
白石:そうそう。二歳の子が来ていますが、とっても可愛くて(笑)。その子はお母さんのお腹の中にいた時からお教室に来ていまして。
由結:えー!そうなのですか。
白石:はい。生まれてからもずっと毎月来ています。お母さんとお父さんと一緒に。
由結:素敵ですね。色んなかたが来て、本当にそこの場所でエネルギーを頂いてると思うのですけれども、 実は先生の教室は他にもありまして、東京を中心としているんですけれども、大阪でもアトリエがあったりして、そしてまた対馬のほうにもあるんですよね。
白石:そうなのです。二年前にご縁がございまして、対馬にアトリエを持っております。
対馬の門
由結:この対馬も素晴らしい、特別な邸宅ですね。
白石:はい。室町時代から神様を祀ってきた家で二十五年前に総檜で建て替えされた家です。襖がたくさんありましたので、主人と娘と三人で絵を描きました。
襖絵
由結:先生のご主人様はあの有名な画家の番洋先生ですよね。
白石:そうです。
由結:この襖は素晴らしい絵が描かれているんですけれども、もともとあった襖だそうですね?
白石:そうです。襖は二十五年前のままで破れてもいませんし、ただ糊のシミがかなり酷かったものですから、変えるには勿体ないし、「じゃあ絵でも描きましょう」となり、一年ぐらいかけて完成致しました。
由結:白石先生も、大作を描いていらっしゃいますが、こちらは青枢展でグランプリを受賞なさった時の絵ですよね。
白石:はい。グランプリを頂きました。
由結:これはちなみにですけれども、制作はどのぐらいかかられたのでしょうか?
白石:そうですね。やはり半年はかかっていますね。2000年に入ってから月をテーマに描き続けておりますが、こちらは”White Moonの誕生”というタイトルで、”月が生まれた時”です。その月の中にいろいろな顔の表情の鳥がいると思うのですが、鳥と言うのは月の命を表現しています。月が生まれた時にこの中心にいる子が、これからの人生の中で辛いこと・悲しいこと・楽しいこと、いろいろなことがあると思うのですが、それを周りのものが暖かく見守っていると言う…。
”あなたは一人では無い“というメッセージの作品です。
由結:ストーリーがあるのですね。
白石:いつもテーマを持って制作しています。
由結:先生がこういった絵のヒントと言いますか、思い付く場所はどんな所なのですか?
白石:大体お風呂の中です。
由結:まぁ、お風呂の中で!
白石:はい、私はぬるま湯の長湯なのですよ。時々「体が溶けてるんじゃない?」と言われるぐらい、若い時は一時間二時間ぐらい平気で浸かっていたのですが、その中で急にイメージが降りてくるんです。そのイメージをひたすら作品にするという感じです。
由結:そういう時…筆が止まらない感じになるのでしょうか?
白石:そうですね。もう一気に描きたくなって。
由結:ちなみにご主人の番先生はそういう時傍らにいらしたりすることもあるんですか?
カプリチオシリーズ 番 洋 作
世界遺産 高野山での「ふたり展」
白石:はい。ご飯を作ってくれたり。
由結:素敵ですね!
白石:もう本当によく助けてくれます。
由結:何か作品に関してコメントもなさるのでしょうか?
白石:そうですね。長い時間描いていると私の中で一瞬筆が止まる時があるんですね。「この後どうしたらいいかな?」とか自分の想いを表現はしているのですが、作品としてやはり完成度の高い作品でないと駄目ですから、そういう時に番が一言アドバイスをしてくれたり。
由結:素敵ですね。お嬢様の麻衣さんもこの道をどんどん進んで活躍なさってらっしゃいますよね。
白石:そうですね。娘も武蔵野美術大学で金属を勉強しましてジュエリーや指輪の世界に一度入りました。それでも私の仕事を生まれた時から見ていましたので、「ママを手伝いたい」と言って私の世界に入ってくれました。
由結:素晴らしいですね!一家で皆さんでこのアートの世界に親しんでいらっしゃって、それをまた周りのかたに普及してらっしゃるということですね。
白石:はい。お陰様で生徒さんが年々増えていまして有難いです。
由結:そうですか。こういったお着物にも染色すると言うことで先生としてはこの時代ともに変化する伝統文化に対してご意見はおありでしょうか?
白石:最初に”友禅”ができた江戸時代というのは、化学染料はありませんでしたので、草木染めですよね。でも草木染めの文化がずっと今の時代まで続いて、じゃあそれがいいかと言いますと、やはり今の化学染料を使ったほうが良いものもあります。あとは筆や様々な道具にしましても、昔の物はもう無くなっているものも多いですね。筆毛にしても動物の毛を使うのですが、その動物がいないとか、職人さんがいないと言う問題もありまして、やはり今の作家さんもそれなりに工夫しながら伝統というものを繋げています。
由結:様々な現状があると思いますが、先生としては日本の若いかたに伝えたいことはおありでしょうか?
白石:まず日本の伝統文化を少しだけでも知って頂きたい。そして外国に行くと日本がどんなに素晴らしい国かということを知ることが出来ると思います。
由結:外を見ることも大事ですけども、その前にこの自分の足元と言いますか、土台を知ると言うことですね。
白石:そうです。
由結:なるほど。こういったことをご講義ですとか、皆さんにお伝えになってると思うのですが、皆さんの反応は如何でしょうか?
白石:最近の若い子は簡単に情報が入ってきますので、それなりに興味を持っている子も増えてきています。着物を着ている子も増えてきています。
工房の写真
先日嬉しい事がありまして、学校の先生が受ける更新講習という授業がありまして、先生も十年置きに授業を受けないと免許更新が出来ないというものです。北海道から沖縄まで全国から来られるのですね。その授業の時私は着物を着てご指導しているのですが、以前その授業を受けられた方のご主人もまた教師で、数年後私の授業を受けられたのですね。その時ご主人から「白石先生に感化されて妻が着物を着るようになりました。」とお話しを伺い、私はそれがとても嬉しかったです。
由結:良い影響がどんどん広がっているのですね。しかも女性だけでなく、男性の方もたくさんお聞きになって。これからの日本が楽しみですね。
Blue Moon
白石:本当に嬉しい事です。私は若い子にいつも話すのが、「貴方たちは素晴らしいDNAを持っているのですよ」と。日本人が識別能力では世界最高だと言うことを私はいつも説明します。だから「自分にもっと誇りを持って意識をしなさい」と。「自分がどういう人間か、どういう才能を持ってるかと意識することで自分が変わってくるから、世界に目を向けるのもいいけれども、自分の中の能力を信じて自分を成長させてから外国に目をやりなさい」と伝えております。
由結:素晴らしいですね。まず自分を信じるということですよね。
白石:そうです。自分の能力をもっと開花させて欲しい、眠っている能力がいっぱいあると思うのです。それはやはり日本の伝統文化を学ぶことで開花すると思うのです。
由結:先生の素晴らしい教えを感じる機会がありますよね。近々に。ご紹介させて頂いてよろしいですか?
白石:よろしくお願い致します。
由結:染織工芸「色ノ泉」、そしてこれはお嬢様が主催なさっている「色ノ花」。「色ノ泉・色ノ花」展が近々ございます。10月12日(金曜日)~15日(月曜日)まで。時間は10時~18時30分、最終日は17時となっています。場所が武蔵野市民文化会館にてですがどのような展示がなされていますか。
白石:毎年展覧会をさせて頂いていますが、番も私も大作を出しています。あとは着物、今回は30回記念ということで今までの全国大会で受賞しました作品も沢山展示されます。今までの思い入れのある作品を主に展示したいと思っております。
作品
由結:本当に数々の賞を受賞なさっている先生方の作品が沢山見られますので、是非足を運んでみてください。
白石:よろしくお願い致します。
由結:はい。それでは最後にリスナーのかたに向けてメッセージを一言頂けますでしょうか?
白石:そうですね。私は本当に”友禅”を勉強して良かったなと思います。日本人に生まれてよかったとしみじみ感じます。こんなに感性豊かな国で四季があり、美しい国で、食文化も素晴らしい。だからもっと日本を大切にして頂きたいといつも思います。
Diamond Moon 180×650cm
壮大なスケールを作り出す感性と理性
17枚続きの大作である。これらの組み合わせを変えることによって、作品は幾つもの表情に変化する。この作品は複雑な色彩と共に銀箔などの素材も用いられ、非常に見応えのあるものである。布という柔らかい質感ばかりでなく、金属質が混ざることによって作品が緩慢にならず、緊張感が生み出されるのである。細長のユニットを単位とするが、その中に黒色のパネルを効果的に挟み込んでいる。これは一連の流れに空白を作り出すことになり、結果として描き出された空間は、より大きな印象を獲得するのである。
感性豊かな作品でありながら、非常に理知的な部分も光り、強い作品を作り出す総合力を感じさせる作品である。この作品を見詰めていると、壮大なスケールに導かれて、日常の小さな悩みが掻き消される感覚になる。ここではない何処かへ、我々を導いてゆくような力を持った作品である。
(文 パトリック・オペール)
由結:リスナーの皆さんも、心に刻んで頂きたいと思います。
白石:はい、全てが有難い気持ちです。
由結:それでは白石先生、二週に渡りましてありがとうございました。
白石:ありがとうございました。
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