日本フラメンコ協会名誉会長 小島章司フラメンコ舞踊団主宰 エストゥディオコジマ主宰 小島章司さん「踊る男」
銀座ロイヤルサロン1週目
目次
フラメンコを始めたきっかけ
由結:さあ、本日の素敵なゲストをご紹介いたします。日本フラメンコ協会名誉会長、小島章司フラメンコ舞踊団主宰、エストゥディオコジマ主宰、小島章司先生です。本日はフラメンコ界のレジェンドの先生をお迎えしております。お忙しい中お越し頂き、嬉しく思っております。よろしくお願いいたします。
小島:よろしくお願いします。
由結:小島先生はこのフラメンコの世界に入られて長く、そして日本のみならず世界中でご活躍でいらっしゃいますけれども、どんなきっかけで始められたのでしょうか。
小島:フラメンコに到達するまではだいぶ時間がかかったと思いますけれども、中学高校時代から音楽に目覚めてピアノ弾いたり、いろんな音楽大学を受験するべく和声、楽理やピアノ、それから声楽一般などをやってました。そして、ようやく大学に入って声楽を始めて、イタリアのルネサンス時代の歌をやったり、ドイツではシューベルトやシューマン、そういうロマン派の時代の歌曲をいろいろとやっていたんです。ちょうどそのとき、イタリアオペラがずーっときまして、素晴らしい日本の歴史に残るようなオペラシーンがありました。それでマリオ・デル・モナコ、レナータ・デバルディ、ジュリエッタ・シミオナートとか、素晴らしい世界に冠たる人たちの舞台に接して、圧倒されて打ちのめされたのが始まりです。
由結:その圧倒された感覚をもって、そのあと開花されるわけですね。
小島:そうですね。それで、そういう世界の超一流の人たちと自分を比較するというのはおこがましいのでそういうことはできなかったんですけど、自分が声楽の道を続けていくっていうことに見切りをつけて音楽から舞踊のほうにシフトしていったっていうのが自分の始まりですね。
由結:かなり決断としては大変なものだったと思うんですが、そのくらい舞踊に魅力を感じられたということですか。
小島:そうですね。元々両方やってたんですけれども、やっぱりバレエをやったりモダンバレエをやったりいろいろしてるうちに、ちょうど1960年にピラール・ロペスっていう方が当時一番華やかに活動してた男性舞踊手のアントニオ・ガデスっていう人を引き連れてやってきたんです。そういうことがきっかけで自分が最終的にフラメンコにたどり着いて、決心が生まれたっていうような感じでした。
由結:そのときが一つの人生の転機だったと思うんですけれども、先生は徳島県ご出身でいらっしゃいますよね。その中で学ばれて、そしてフラメンコに目覚められて、実際にスペインに渡られることになるんですよね。そのときの様子を聞かせていただけますか。
小島:徳島はよしこの阿波踊りがにぎやかなところであるのと同時に、義太夫浄瑠璃の盛んな街で、若いうちはそういうものにも触発されましたけど、それが歌舞伎狂いになりました。大学時代は毎月変わる度に歌舞伎座に通ったりするような時代もありました。けれども、結局オペラ、声楽家の道を諦めて、いろいろと友だちとディスカッションするうちに、「文化はヨーロッパだ」という結論に至って、ある友だちはパリへ絵のお勉強に行くとか、ある友だちは舞踊評論だからアメリカに行くだとか、それぞれの道が友だちの間で話題になることが多かったんです。その友だちの「文化はヨーロッパだ」という言葉に触発されて、私も確たるスペインにフラメンコを習いにいくというのが決心できました。大学が終わって東京オリンピックがあったころですね。
由結:オリンピックが一つのきっかけといいますか、ターニングポイントなんですね。
小島:ターニングポイントですね。もう世界中の人種のるつぼっていうか、人間のそういう営みを見たんです。自分は引っ込み思案だったんですけれども、そういうときに、初めて、自分もどこ行ってもいいって、自分でもそうしてみようっていう、小さな決心みたいなものが芽生えたんです。
文学や絵画、芸術に触発された学生時代
由結:先生は引っ込み思案でいらしたんですか。
小島:どこかしらありましたね。ちょっとだけやはり恐れを感じていたんでしょうね。
由結:でも今なさってるのは人前に出て表現するというようなところだと思うんですが、そのころと今では何が変わったのでしょうか。
小島:若いころから私が一番私淑して教えを請いにいった、当時芸大の教授だった畑中良輔先生という方がいらして、その先生のレッスン室に書庫がありまして、私の文化のるつぼみたいに、書庫の本の様子をいつも伺っていたんです。それでその中で自分で気になった文学書や詩集などを求めてまた丸善に行って、それでまたその先生が体験されたことをまた自分で実感していって…それを繰り返し、全ての芸術的なものに目覚めていくというプロセスを経験しました。
由結:先生の舞台をご覧になったスペインの舞踊評論家の方、スペインの方などもそうですが、「フラメンコを超えた芸術だ」とおっしゃって大絶賛していらっしゃいますね。きっとその時代のご経験も大きかったのでしょうね。
小島:私は徳島時代、お遍路さんが来て街全体が空海の香りが残っていて、そういうものにも触発されていましたし、畑中先生の書庫で始まって、私の大学時代はちょうど実存主義でしたから、ジャン=ポール・サルトルの作品なんか全部読みあさっていました。文学とか詩とか絵画とかそういうものにすごく触発された記憶があります。その時代に自分の人間形成がされていったと思っています。そういうことも全て含めて、普通にただフラメンコだけやっているという人との違いがそこにあるのかもしれませんね。
由結:なるほど。その時代に培ってこられた豊かさ、それを蓄積してこられたんですね。
小島:そうですね。音楽学校ですから、本当につたないけれどもラテン語だとかドイツ語だとかフランス語とかイタリア語とか、自分がフラメンコに接してからはスペイン語を習ったりしました。そういうことを通して入ってくる知識。そういうものが自分のフラメンコ踊っていく上で、蓄積されたものが自分の中で発酵してきて、今の自分の舞台づくりの中でも如実に表れているのかなと思います。
由結:そうですね。先生の舞台を見てたくさんの方が感動なさっていると思うんですけれども、長年フラメンコという異国の地で生まれた文化のものを日本人として表現するというのはいろいろ困難もあったんではないかなと想像します。その点はいかがですか。
小島:それは今、多様性って、今とくにここ1~2年叫ばれてますけれども、私の時代はまだそういうものではなくて、人によっては、日本人なんか日本へ帰れみたいな、そういうような風潮もありました。でも、幸いなことに歓迎してくれて、遠くの国から来てくれた人として大事にしてくれた人もいました。両方あったと思うんですね。でも今はもう全ての多様性みたいなものが開かれてきて、今度のヘレスのテーマでも人間の多様性とかインターナショナリゼーションとか、そういうことがテーマで、それは僕を通して始まるっていうようなことを言われてきたので、それはとっても光栄なことだと思います。
由結:素晴らしいですね。実は先生の今後ろにある、これは市旗ですね。これは実はヘレス市の市長様から寄贈されたものだそうですね。
小島:そうですね。数年前にヘレス市から日本でのヘレス市のフラメンコ特使ということで、「フラメンコを広めてくれてありがとう」
みたいな感じでヘレス市にお招きをいただいて、市長さんからこういういろんなものをいただいたんです。
由結:このようなお話を伺うと、日本人としての誇りを感じます。本当に素晴らしいことだと思います。
小島:私自身も何十年もフラメンコに携わってきて、本当嬉しい瞬間でした。
由結:そうですね。先生が2023年舞台に立たれるということで、この海外公演なんですけれども、第27回フェスティバル・デ・ヘレス招聘作品「トダ・ウナ・ヒダ~一生涯~」こちらを先生が原案を出されて作られているんですね。
小島:ええ。昨日あたりに照明の方とか舞台監督が決まって、大体の出演者と舞台スタッフが決定して、今進行してる最中です。
由結:そうなんですね。ご準備もお忙しい中、本日はお越しいただいたんですけれども、この小島章司シリーズともいえる第27回のフェスティバルは来年3月の公演ですよね。
小島:私が踊るのは3月1日です。
由結:ぜひこちらもウェブページなどチェックをしていただければと思いますので、皆様、よろしくお願いします。
さあ、先生、来週もまたご登場いただけるということですので、お待ちしております。よろしくお願いいたします。
小島:はい。ありがとうございます。
由結:ありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン2週目
日々の努力を大切に
由結:さあ、本日の素敵なゲストをご紹介いたします。日本フラメンコ協会名誉会長、小島章司フラメンコ舞踊団主宰、エストゥディオコジマ主宰、小島章司先生です。2週目ご登場いただいております。よろしくお願いいたします。
小島:よろしくお願いします。
由結:先日、先生のお稽古場に行かせていただいたときに、本当に素敵な西麻布のお稽古場だったんですけれども、そこに素敵な絵が飾ってあってかなり魅了されてしまったんですけれども、あの絵というのは先生のお若いころの絵だそうですね。
小島:そうですね。毎年定期的にという会があって、そこに出展するための作品で、私がスペインに立つ前の数年間、2~3年ほどモデルやったんです。
由結:モデルをなさってたんですか。
小島:はい。バレエのレッスンに通いながら、スペイン立つ前ギリギリまでやっておりました。
由結:そうでしたか。一つ上の先輩が画家をやっていらっしゃってということですね。
小島:そうですね。その当時の私はミュージカルに魅せられた部分もあったし、フラメンコに魅せられた部分があって、いろいろと友だち集まって口角に泡を飛ばしながらディスカッションした記憶があるんですけど、そのとき彼が「文化はヨーロッパだよ
みたいなサジェッションがあって、お互いヨーロッパ行くようなことになったんです。
由結:その一言が影響があったということなんですね。
小島:そういうことですね。
由結:フラメンコ界の巨匠と言われる小島先生ですのでお弟子様もたくさんいらっしゃって、そして皆さんが独立して活躍していらっしゃるということなんですが、その秘訣を今日は伺っていきたいと思っております。
まず先生の手掛けられる舞台って本当にたくさんありますよね。ちょうど8月に公演が行われたものも拝見させていただいたんですが、もう本当に圧倒されました。先生が出てきたときに舞台が、情景がバーッと変わって見えたんですけれども、ああいった世界観は自覚して出しているというよりは自然にできているものだと思うのですが、どういう点に工夫して舞台には取り組まれてらっしゃるんですか。
小島:それは、ボクサーが走り込んだり階段登ったり降りたり、それに準じるような、日々の努力ですよね。いわゆる踊り手っていうのは肉体と精神と両方でしょう。そうすると、やっぱりスポーツ選手、アスリートと同じような鍛え方と、それから限りなくアスリートと違った精神的にも肉体的にもしなやかさ。舞台っていう、アスリートの肉体のトレーニングをしながらも、やっぱり哲学的な部分とか思策的なこと、そういう要素を培っていくっていう、そういう日々の努力。素晴らしい絵と(時を)過ごす。素晴らしい詩の世界に入り込む。絵画の世界に入り込むとか、そういうあらゆること、いわゆる夢想の世界も含めて、そういう時の過ごし方が必要だと思います。
由結:なるほど。先生は一日の中でそういう時間を必ず持ってらっしゃるということですね。
小島:そうですね。今も稽古場に入って踊る以外に、やっぱりフィットネスクラブ行って軽いウエイトトレーニングやったりとか、それとかヨガのような呼吸法とか、そういういろんなことをしています。三日間はフィットネスクラブに通う。それから自分のベッドの中でヨガみたいなことをやる。稽古場に下りていって弟子たちに教える日もあるし、自分のためにやっぱり1時間とか2時間とか踊りまくってる時間もあります。それの組み合わせで一日がやっぱり成り立ってるっていうことです。
小島章司先生へのオマージュ
由結:そうなんですね。先ほど詩というふうにおっしゃったのですが、小島章司先生へのオマージュということで、大岡信先生ですとか、小海永二先生ですとか、その素晴らしい詩人の先生方がこういった詩集を出していらっしゃいますよね。お見せしたいと思いますけれども、このようないわゆる芸術家の先生方の心をも動かしてしまうという先生の舞踊はどこから来ているのでしょうか。
小島:長い時を経て培ってきたものが、スペインで10年間頑張って努力して帰ってきて帰国公演のチャンスを頂きました。それから10年間スペインにいたっていうことで、相当日本のマスコミで話題になったりして、それから何年か日本の舞踊、劇場社会に入り込んでいくという作業は、なかなか自分としては相当努力したことでした。
それから文化庁からの協力助成金とか、もろもろ立体的なことが自分の中でシンクロして、やっと1000人も入るような劇場で2日間3日間という公演ができるようになってきたんです。それで何十年かやってきて、毎年毎年考えて白い紙の中にいろいろ埋めていって、断片ノートをいっぱい作っていった。その後半年経ち、1年に2回ぐらい、4月ごろと10月11月ぐらいに1回ずつ必ず公演して、それを何十年も繰り返してきましたね。
そして、いろいろなことをサジェッションしてくださる友好関係も大きかったですね。詩人や絵描き、作家。そういう自分を触発してくださるような交友関係もとても大事なことだと思います。
由結:そうですよね。その方々の言葉なり視線なまなざし。そういったものにインスパイアされて、作品が生まれるのですね。
小島:そうですね。お互いの行ったり来たりっていうか、こういう空気の交換っていうか、人生の交換とか、ただ言葉の交換だけじゃない、そういう人と人とのつながりですよね。そういうことが自分を豊かにしてくれることにつながっていくんじゃないかと思います。
自分を大切にすること
由結:そうですね。先生が人生の中で大切にされてらっしゃることというのはどういうことですか。
小島:やはり人を大事にしていくっていうことはとっても大事だと思います。私は最初のころはスペイン中駆け巡ってた時期もありました。今はフラメンコの発祥地であるヘレスやセビリア、グラナダなどに限定して、特にヘレスのほうはコロナ前は毎年のように行っていたんです。今はコロナで丸々2年間ご無沙汰してしまっていますけど。
そういうことで、逆に言えばそういう自分がいろいろと教えていただいたところを、自分の作品や諸々一緒に共演する人たちとまた高めあって、スペイン・ヘレスの劇場の中で、それ発表することで、また違った人たち、若い人たちやレッスン生たちを自分がリードしていくっていうシチュエーションも作っていける。そういう幸福で幸運な時期を迎えてるのかもしれません。
由結:素敵ですね。人とのつながりを本当に大切になさっているんですね。一つの公演があるときに、キャスティングや、そのときにご縁があった方、長年活躍してらっしゃる方をまた日本に招いたり、そういうこともあるわけですね。
小島:そうですね。毎年秋の公演なんかだと、多いときは14~5人も来たり、少ないときは10人前後で3週間4週間の契約で、自分の稽古場ではそれは足りなくって、新宿村とかみたいに大きな稽古場を3週間借りてきて、もう舞台もそこの中に貸し切りでつくる。そうやっていろいろとテーブルや階段を作って作品を作り上げていくという、そういうようなことまでやりました。
常にアンテナを張って心豊かに
由結:錚々たる方々がお集まりになる舞台を毎回手掛けてらっしゃるということですので、今後がまた楽しみです。先生はこのフラメンコという世界をしっかりお持ちなんですけれども、それを超越してしまっているような、そんな印象を受けます。こういった高い視座で物事をとらえる秘訣を教えていただけますか。
小島:それはやはり日々アンテナを張るということですね。日々の自分の目とか耳とか鼻、五感に入ってくる全ての情報源を自分の中でどかして、全ての事柄を自分の中に蓄積して、それを自分の言葉で日々一つのプロットとして、自分の文章として書き残していく。それが一つの舞台にして、そういう現象があるとき、パブロ・カザルスのバッハの曲だとか、それから、あのときのゴヤの絵を思い出したりとか、ベラスケスの絵を思いだしたり、ルーベンスの絵画を思いだしたり、オランダ行ったときのいろいろ『夜景(レンブラントの傑作)』のあの絵のイメージだったり。そして、レニングラードに行ったときのエルミタージュ美術館で見た素晴らしい絵だとか…。それぞれの断片ですよね。みんなそれぞれそういうことが全部一つの人間として自分が豊かでいなければ豊かでいられるかいられないか。そういうことにつながっていくのかなと思います。三島由紀夫さんじゃないけど、豊饒っていうことが大事かな。
由結:なるほど。先ほど書き残すっておっしゃったんですけれども、先生はそういう何か感動したことがあったり、これだなって思うことがあったら、書きとめていらっしゃるんですか。
小島:ええ。未だに私は全然毎日は読めないんですけど新聞も今三つ取っていて、新聞の中でもやっぱりとっても感動したことなんかは、僕の一番気に入ってるのはオレンジ色なので、オレンジ色のマーカーでいろいろこうやって、気になった言葉は必ず切り取ったりとかしています。それが自分で整理できないからもうこんなにたくさんになっています(笑)。
由結:そうなんですね。常にアンテナを張って情報収集もして、心豊かになさっているということですね。
小島:そうですね。ただ、今は戦争のお話がちょっとつらいんです。私がまだスペイン着いた1966年のっていうのは、1930年代に起きたスペインの内戦のあとが色濃く残ってて、いろんな意味で今の街の様子と全然違いましたよね。
由結:なるほど。大変興味深いお話ですので、この続きを来週の声診断コーナーでもぜひ聞かせていただきたいと思っております。本当に素敵なお話をありがとうございました。
小島:ありがとうございます。
由結:ありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン3週目
声診断コーナー
由結:さあ、本日は声診断コーナーです。クォンタムヴォイスアカデミー稲井英人学長が担当するコーナー。これまでに25000人以上の臨床データのある声解析・声診断ソフトにより、ゲストの方の声の波形を読み取り、その方の個性と能力をひも解いていきます。本日のゲストは日本フラメンコ協会名誉会長、小島章司フラメンコ舞踊団主宰、エストゥディオコジマ主宰の小島章司先生です。よろしくお願いいたします。
小島:よろしくお願いします。
由結:それでは、稲井学長進めてください。お願いいたします。
稲井:はい。それでは、小島先生、よろしくお願いいたします。
小島:はい。よろしくお願いします。
稲井:先週先々週と聞かせていただいたんですが、やはりアーティストの極みといいますか、いろんなものに触れてこられた、一つの象徴として先生がいらっしゃるような気がしましたね。語る言葉の一つ一つがもうキラキラと輝いていました。
さあ、今からお声を録らせていただくんですが、先週先々週とこのように番組に出られて、ご感想を簡単にお聞かせ頂けますか。
小島:はい。ラジオ出演っていうのは本当に久しぶりだったので、なんだかこれでいいのかわかりません。
稲井:はい。ありがとうございます。あと、先生から今後、これから本来の文化、そしてアートといったものを、今後若い方々に対しても、何か魂を伝えていきたいといった思いなどもあると思うんですけども、後輩に対するメッセージなどはありますか。
小島:そうですね。芸術家っていう言葉がありますけれども、踊りは踊りなんですけれども、踊りだけじゃない、あらゆる事柄に触れて、より広くより深く、そして時には世阿弥が言ってるように『秘すれば花』みたいなところもないといけないと思います。
マグマのようなパワーのレッド
稲井:なるほど。ありがとうございます。先生が語られた言葉が、このように実は12色と色と波形で出てくるんですね。今たくさん録らせていただいたんですが。
小島:すごいいっぱい。
稲井:はい。これをどんどん絞っていくって表現するんですけど、先生の特徴の一つがやはりこのレッドの声っていうのが、こちらにものすごく出てますよね。静かな状態なんですが、これが行動するとか存在のエネルギーのパワー、マグマのようなパワーが、ものすごくエネルギーになってます。
これは表のエネルギーなんですが、深層心理、下意識、それから潜在意識もわかるんですね。すると、この上側のブルー系、青いところは「観る」という領域です。そしてグリーンが「聴く」、レッド・オレンジ系が「感じる」領域なんですが、先生のお声は感じるという領域がものすごく出ています。体で表現するのもピッタリですね。改めて、天命、天職だと思います。本当にすごいですね。
特に最後のメッセージでは「他の方に言葉を伝えていこう」というところはレッドばかり出てきてるでしょう。すごいなと思います。今もう日本人全体がエネルギーがずいぶん下がってきてるので、先生のように一つの道をずっと掘り進めてきた方々は、このように静かに語ってるのに、これだけエネルギーが高い。ちょっと感動しております。
そして、あとこのオレンジの部分が丹田なんですね。へその下5センチ。ここがグッと腹に自分の天命、使命みたいなものはこのゴールドがありまして、その内側にこのオレンジが出てくるんですね。このあたりがもう先生の軸と言いますか、もう魂をそのまま内側に秘めて、それを踊るということ。舞うということで表現してるような気がしますね。この体験、体から発せられる言葉、これだけ静かなのにレッドがこれだけ出るんですね。すごいなと思います。まだまだいけますよ。このエネルギーは半端ではない。
小島:そうですか(笑)。
稲井:はい。だから本当に背中を見せていただくのが一番いいと思いますね。今度もまた海外でもご公演されるみたいですが、それに対する思いというか、今の気持ちはどういうものがありますか。
小島:そうですね。私の場合は、いつも考えていたことなんですけど、世界のどこにもないような作品を創造する、創作するっていうことが一番の願いですね。だから誰の真似でもない小島章司でありたい。フラメンコやりたいっていうのとまた違うと。それはあるんですけど、根底にはありますけど、やっぱり人がやらなくっても自分でやる。禁じ手でもやるかもわからないし、こうしちゃいけないよっていうことも自分ではやるかもわからない。そういうどこにもない、誰もやらないっていうようなこともやるかもわかりません。その中には。
喜びのオレンジとゴールド
稲井:はい。最後のをまたごらんください。オレンジとゴールド。まさに喜び。これだけ静かにしゃべるのに喜びがもう渦巻いてますね。いやーすごいですね。腹にもう重心軸が全部本当に定まっておられるので、この状態で動かれると本当に周りが動いてしまうんです。もっと声の深い部分で見ますと、マゼンタピンクって言いまして、これはもう全てオールオッケー。なんでもオッケー。全て受け入れるよ。来なさい。本当に。やっぱりそれだけやられてこられて極められると、ある意味本当に悟りというか、これからの我々日本人の次につながっていく人たちの一つの憧れの一つのスタイルじゃないかなと思いましたね。
小島:ありがとうございます。
稲井:これはちょっと一生残させていただきますね。本当に素敵な声診断させていただきました。ありがとうございました。
由結:小島先生、本当にありがとうございました。3週に渡りご登場いただきましたが、まさにどこにもない、誰もやらないことをこれからも作っていかれるということですね。
稲井:それが喜びのオレンジで出てました。ワクワク、いきいき、ドキドキ。
小島:日本の古典芸能の能なんかで、私も能の先生の後藤得三先生の90歳の舞は見せていただいたことがあるんです。だいぶ昔ですけどね。だけども、由結さん、この前ご覧になったじゃないですか。私のように、フラメンコでああいうふうに83歳で踊ってる人は多分いないんじゃないかと思んです。でも別に「いる、いない」
の問題じゃなくて、私の踊り方っていうのはああいう踊り方なんで、あれができなくなったときはどうなってるか、自分でもわかりません。
由結:素敵ですね。本当にお言葉の一言一言がしみわたりますよね。多くの方にこのお話を聴いていただきたいですね。小島先生、本当にありがとうございました。ぜひまたスタジオにも遊びにいらしてください。
小島:はい。いつでもどうぞ。お声かけください。
由結:感激です。ありがとうございました。
稲井:ありがとうございました。
小島:ありがとうございます。
2023年3月1日、小島章司先生が第27回フェスティバル・デ・ヘレスに参加し、『トダ・ウナ・ビダ ~一生涯~』を世界初演なさいました。
Compañía Internacional de Flamenco Shoji Kojima from Festival de Jerez Televisión on Vimeo.
小島章司先生のプロフィール |
武蔵野音楽大学声楽科卒。声楽とピアノ、クラシックバレエ、モダンダンスを学び、フラメンコに出会う。 これまで数々の劇場作品を発表し、文化庁芸術祭賞、芸術選奨文部大臣賞など受賞歴多数。2000年 スペイン国王よりイサベル女王勲章オフィシアル十字型章を受章、2003年 紫綬褒章を受章、2009年 スペイン国王より文民功労勲章エンコミエンダ章を受章、2009年 文化功労者に選ばれる、など数々の勲章を授与される。 |