株式会社玉寿司 代表取締役社長 中野里陽平さん「凡事徹底 過去から未来へ」
銀座ロイヤルサロン1週目
目次
暖簾(のれん)と社員を守るという決断の中での船出
由結:さあ、それでは本日の素敵なゲストをご紹介いたします。株式会社玉寿司 代表取締役 中野里陽平さんです。よろしくお願いいたします。
中野里:よろしくお願いします。
由結:本日はお忙しい中駆けつけていただきました。ありがとうございます。
中野里:こちらこそありがとうございます。
由結:築地玉寿司さんといえば、心地良い心のこもったサービス、そして間違いのないおいしいお寿司が食べられることで有名。大正13年創業、2023年の3月に創業100年を迎えるという老舗でいらっしゃいますよね。4代目社長として、どのような心境でいらっしゃいますか。
中野里:私が引き継いで19年目になるんですけども、19年振り返れば長いなというふうに思うんですよね。今回のコロナもそうですけど、リーマンショックや地震など、いろんなことがありました。でもこの少なくとも5倍、いろんなことがあって、創業から乗り越えてきて来年100年目を迎えるっていうのは、これはとても大変なことなんだなという感覚ですかね。「有難うございます」という気持ちしかありませんね。
由結:なるほど。本当にお店に行かせていただく度に気持ちよいおもてなしをいただいて、何よりお寿司がおいしくて素晴らしいと思います。これもたゆまぬ企業努力なのでしょうね。
中野里:海の幸をおいしく、海の幸を通してお客様に幸せになっていただくこと。それがうちの一貫した存在価値だっていうことを社員とも共有していますので、新鮮な魚介を新鮮なうちに、基本としては熱いものは熱く、冷たいものは冷たくという、おいしいというものの基本は愚直にきちっと守っていこうと思ってます。そこに手間暇はかかるんですけど、手間暇をかけておいしいものを提供しようという、凡事徹底。それはずっとぶれずにやってきたかなと思います。
由結:なるほど。当たり前のことを当たり前に貫いているということですね。中野里社長は4代目。ご祖父様から始まり、ご祖母様が2代目、そしてお父様が3代目ということで引き継がれたということなのですが、継承なさったときというのはどういう状況だったのでしょうか。
中野里:ちょうど私が32歳のときに引き継ぎましたけど、その瞬間は実はいろいろと大変厳しい状況でした。バブルという時代が崩壊してちょうど10年以上経ったころなんですけども、うちもバブルという時代で結果的にバブル崩壊と共に大きな負債を背負ってしまったんです。その負債をどうにかしなきゃいけないということで、もう本当に親族命をかけて、一時的には親族として資産を全部手放しながら、暖簾を守っていく、社員さんを守っていくという決断をしました。そういう船出だったので、もう後がなかったんです。もう駅伝の第四走者ですから、絶対このレースに負けるわけにいかないっていう感じでしたね。
自分を磨く、意識を変えるために行動した学生時代
由結:そもそも中野里社長はアメリカに留学をされているという経験がありますが、どういう経緯でアメリカに留学されたのでしょうか。
中野里:元々、日本の大学に通ってた頃に自分のうちも食べ物商売ですから、飲食店で少しでも経験をしたいと思い、体育会の少林寺拳法部に入りながら、傍らでアルバイトをしたんですよね。ところが、洗い場だとかいろいろやっているうちに、残念なことにあまりにも人使いが荒い部分がありまして、飲食店という世界がすっかり嫌いになっちゃったんですよ。一生の自分の仕事にするのに嫌いっていう感情を持ってるなんてことは、これは本当に最悪だなと思い、これはなんとかしなきゃいけない、なんとかその意識変えたいという中で、出会った情報の中にアメリカにもレストランという学問があり、すごくそれは進んでるということで興味を持って調べたらすごい良い勉強かもしれない、自分の意識を変えるにはここに行くしかないと思いまして、それでアメリカ行きを決断しました。英語が好きだったわけでもなんでもないんです。むしろ英語は大嫌いだったので。
由結:飲食業界を好きになりたいという一心だった、と。先ほど少林寺拳法をされていたと伺いましたが、武道がお得意でいらっしゃるんですね。
中野里:そうですね。ブルース・リーが好きで憧れて、そこから武道というものをやりたいと思ってたんです。高校から空手をやり始めまして、大学時代はいわゆるキャンパスで同じ世代の仲間と一緒に本気でやりたいなと。その当時、一番活気があってバリバリやってたのが少林寺拳法部だったので、よし、これに入部しようということで入部をしまして、目標二つ立てました。一つはやるなら主将になること。二つ目は武道館で全国からいわゆる学生が集まってやる大会があるんですけど、何か賞を取ること。この二つを掲げました。
由結:素晴らしい目標を持たれたのですね。結果はどうだったのでしょうか。
中野里:結果は、言い続けると達成するって本当そうだなと思いますけど、おかげさまで達成しまして、主将をやり、また武道館でやった関東学生大会で優秀賞をいうのを取ることができたんです。よかったです。
由結:素晴らしいことですね。ここで培った礎といいますか、土台の部分が今にも通じているんじゃないかなと思うのですが。
中野里:そうですね。裏を返せば自分に自信がなかったんですよ。リーダーシップとか、当時も社員さんかなりいましたけども、生活を守るとか経営責任ってそういうことだよって周りから言われれば言われるほど、すごく憂鬱になったんですよね。そんなことできるのかなと。少なくとも今の自分にはそれを自信もってイエスとは言えないから、何かしら自分の自信つけたかったんですね。目の前にあったのが武道の世界であり、じゃあここで部内のメンバーをまとめるという役を積極的にそこで経験して、自分を磨こうという、そんな思いでしたね。
人材育成について
由結:そうですか。今も築地玉寿司さんはよく会議をなさっていたり、非常に人材教育にご熱心な会社だとお聞きしていますが。
中野里:ええ。もうずっと力を入れてきました。これも企業は人なりという教えがありますけれども、すごく厳しかったとき、まだまだ今のように余裕のあるような事業、いわゆる体質じゃなかったころに、それでも何に一番投資をしていくべきかっていったら、やっぱり人だと。ということは、社員さん、アルバイトさん、パートさんの教育。こういうことを手を抜いたらやっぱり事業っていうのは永続しないんだなと思いまして、例えば、商品開発にしてもマネジメントについてでも、接客研修にしてもいち早く作っていったわけですね。
由結:そうなんですね。具体的にどんなことをなさっているんですか。
中野里:よくこれは玉寿司の個性的な機会だなと思うのは、「全店一斉朝礼」
というのをやります。今30店舗ありますが、北海道から名古屋までのお店が、週に1回、全部オンラインでつながって、元気朝礼というのをやるんです。その元気朝礼の中では、もちろん理念唱和もあるんですけど、みんなにとってすごくいいなと思う時間は、まずお客様からお褒めいただいた言葉を共有するんです。それはどこのお店であろうと、例えば自分のお店じゃなくても、そういうシーンでお客様に「本当によかった。ありがとう」って言われるんだとか、あるいはネットで「さすがですね」という風に喜ばれているというのは、全店にこの仕事に携わってるスタッフにとって励みになるんですね。
そういうことが一つと、もう一つは、例えば北海道の洗い場さんの日々の小さな努力、こういうふうに気を付けているっていうのを名古屋のお店の洗い場さんが共感してくれたりするんです。お店は違うし、もしかしたらほとんどリアルで会うことはないであろう、そんなスタッフさんたちが、このオンラインの朝礼によって実はものすごく深い共感を得て、我が事のように喜びあえるっていう、そういう場ですね。
由結:だから、どのお店に行っても気持ちのいいサービスが受けられるということが起こっているんですね。
中野里:そうですね。ありがとうございます。
由結:このように人材を大切にしてらっしゃる会社なので、離職率も非常に低いというふうにお聞きしています。
中野里:はい。おかげさまで、先日も50年以上勤めてくれた板前さんの大番頭、うちは永年勤続っていう表彰を毎年やるので、お手紙と共にお渡ししましたけども、なかなか20年30年勤めてくれる方が多いんですよね。辞める離職率もゼロではないですけども、業界平均からすると圧倒的に低いんです。それは自分自身もなんでかなって考えると、職人さんの世界で彼らが言うのは、長く勤めるならやっぱり玉寿司だと。それを突き詰めると、やはり人間関係だと思います。
由結:やはり人なんですね。
中野里:そうですね。ここで言っておきますが、給料は別に悪くないですけど、とくに良くもありません(笑)。
由結:人間関係は本当に重要ですね。例えば、人の教育や人の見極めなど、人としっかりと向き合っていくことは大変なことだと思うんですけれども、その中でも大切にしてらっしゃる評価基準がありましたら教えてください。
中野里:技術に関しては、非常に技術が高い人もちょっと不器用な人も、それは受け入れます。それは入ってから習熟していただければいいし、フォローもできますけれども、必ず最初に正社員になっていただくときに、まだ正社員じゃないときに宿題を出します。それは何かというと、私は経営理念に込めた思いっていう、自分はこの理念にどういう思いを込めているかっていうのを書いた30ページ近くの文章があるんですね。「それについて、自分がどう感じたかの作文を必ず僕にください 」
ということをやっています。
由結:30ページ!文章に想いを綴って頂くのですね。
中野里:そうですね。そこで重要視するのは、素直に共感してくれているかどうか、ということ。玉寿司が大事にしている、海の幸を通してお客様に幸せになっていただくってことは、「ただ腕が良ければいいんでしょ」
ではない、と。もちろん腕も必要だけど、それ以上にお客様に喜んでいただきたいっていう素直な思いとか、一緒に働く仲間と共に仲良くちゃんとやっていこうとか、そういうことが大事なんですよね。
由結:なるほど。文章の中に見て取れるわけですね。
中野里:はい、そこははっきりと書いてあります。そこに対して、やっぱり素直に私もそう思いますって方は仲間として大歓迎ですけども、ちょっと偏屈な方は多分うちじゃ最も長続きしないと思いますね。
由結:なるほど。そこが見るポイントですね。評価するにも労力や時間がかかると思いますが、お一人お一人に真摯に向き合ってらっしゃるんですね。
中野里:そうですね。やっぱりスタッフさん一人一人の命の努力のおかげで今があるというふうにいつも思っていますし、そういう話も社内の研修でも言うんですよ。ですから、なるべく一人一人の方を把握していきたいというのはあります。
今後の事業継承について
由結:素晴らしいですね。4代目ということでずっと過去から継承してきたもの、これをまた今後も継承していくわけですが、今後の事業継承について、どのようにお考えでしょうか。
中野里:私が引き継いで気付けばもう19年20年と経ちますから、折り返し地点ぐらいに来ちゃったのかなと思うんですよね。次のというと5代目ということになると思うんですけれども、誰がなるかはまだ決めてません。私、長男がいますから、普通で言ったら、一族でやるんであれば長男という流れがいわゆる一般的には当たり前なのかなと思いますけども、事業後継者に求めることは、お客様に本当に喜んでいただきたいという心。この事業に対してどれだけ価値や魅力を感じてくれるかということですね。それから、もう一つは我々で100年、4代にわたっていろんな時代の変遷、あるいは逆境を乗り越えてきた歴史があるんですけど、このことを素直にこのことにやっぱりリスペクトしてくれる思いがあるかどうか。これは極めて重要だと思っています。
由結:なるほど。リスペクトの気持ちがあるかどうかなのですね。
中野里:リスペクトですね。やはりどういう逆境を乗り越えてきたかということを素直に理解していない人が事業継承すると、大体会社の短所とか欠点とか問題しか見えないので、そこから着手するんですよ。そうすると強みも壊しちゃうんですね。結局強みを失ってしまった会社が崩れていくという、そういうケースは僕も何度か見てきています。ですから、どの企業だって絶対に完ぺきはなくて、蓋を開ければ問題・課題は間違いなく存在していて、それから時代に合わなくなってきた部分とか、不器用な部分とかあるんですよね。でもそれがありながら、その先にあるダイヤモンドのように光ってるその会社の強み・長所を見れるかどうかは、リスペクトの気持ちがないと駄目なんですよね。それがないと、「何やってんだ、先代たちは。もう全然駄目な会社じゃないか」にしか見えない…。
由結:批判だけになってしまう。
中野里:そう、批判だけになっちゃうんですよね。批判からメス入れた企業改善は、僕は絶対うまくいかないと思っています。
由結:なるほど。大変勉強になりました。このラジオはビジネスパーソンの方もたくさんお聞きになっているのですが、皆に当てはまることなのではないかと思いました。有難うございました。社長にはまた来週もご出演いただきまして、この話の続きを伺っていきたいと思っております。
築地玉寿司さんから、実はプレゼントがあるということでご紹介させていただきます。築地玉寿司全店共通お食事券3000円分を10名様にプレゼントしてくださるということですね。本当においしくておもてなしも素晴らしい築地玉寿司さんでお食事ができる券ということですので、ぜひご希望の方はウェブ上で『銀座ロイヤルサロン』で検索をしていただきまして、お問い合わせフォームより『築地玉寿司全店共通お食事券希望』と書いてお送りください。番組への感想も添えていただけますと嬉しく思います。9月26日の締め切りです。当選の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。
さあ、それでは中野里社長、本当に素晴らしいお話ありがとうございました。また来週もよろしくお願いいたします。
中野里:ありがとうございました。よろしくお願いします。
銀座ロイヤルサロン2週目
4つの力を磨き続ける
由結:さあ、それでは本日の素敵なゲストを株式会社玉寿司 代表取締役 中野里陽平さんです。よろしくお願いいたします。
中野里:よろしくお願いします。
由結:2週目ご登場いただいております。本日もよろしくお願いいたします。
中野里:こちらこそお願いします。
由結:本日は既存店にはない新コンセプトでたくさんのお店を運営してらっしゃるという御社のお話を伺っていきたいと思っております。例えば、マイカウンター、食べ放題、寿司握り体験など、これまで数々の珍しいサービスを提供されてこられましたが、数々のアイデアは社長が発案されたものなんですか。
中野里:そうですね。週に1回、幹部が集まっての会議をやるんですが、実は「4つの力 」
を磨き続けようという大きな戦略がありまして、「商品力 」 と「接客力 」 と「店舗空間力 」 と、そして最後に「企画表現力」というのがあるんです。企画表現力というのは、“寿司で何ができるか”。「寿司プラスアルファの価値ってなんだろう」というのを考えたときに、お寿司を握って提供するというのはもちろん当然なんですけど、それだけじゃないよねと。
例えば、今コロナですけど、コロナが起きる前はたくさん海外からの観光客が日本に押し寄せてきました。そのとき彼らは何を望んでいるかというJTBの調査を見ると、異文化体験が圧倒的に1位なんですよね。では、江戸前寿司店で提供できる異文化体験って何かあるのかなっていう話をしたときに、板前さんと同じように法被(はっぴ)を着て、寿司職人の聖域であるカウンターの中に入って、親切丁寧にお寿司を教えてもらえたら嬉しい。築地でこんな体験できたら…逆に築地だからこその価値があるよねということで、生まれたのが握り体験だったんですね。もちろん、僕が言い出しっぺは多いですけども、よく社員も一緒に、「じゃあこうしよう、ああしよう」と、アイデアを出してくれますね。
由結:なるほど。企画・アイデアは重要ですね。お寿司に関しての考え方として、「これだけは譲れない 」
というものはありますか。
中野里:そうですね。いわゆるお寿司といえば、もちろん回転寿司もありますし、パックでテイクアウトのお寿司もあります。それぞれお寿司の業態なんですけれども、我々がやっぱりこだわってきたのは、いわゆる「回らない寿司屋 」
。寿司職人が目の前で握って提供するってことは譲れないといいますか、こだわってやっているところですね。
由結:なるほど。AIの時代が来ると言われて久しいですが、職人さんが握ってくださることに価値がある、と。実際にそれを今後も継続していくために、どんなことをお考えですか。
中野里:そうですね。やはりロボットをはじめシステムで回したほうがよっぽど効率がいいっていうことはたくさんあるんですよね。でも、例えば我々が生ライブを見に行きたいとか、学園祭に参加してみたいとかいうふうに思う動機って、やっぱりそこに人がいて、リアルな人がいろいろ汗を流して頑張るから楽しいのであって、価値があると感じると思うんですよね。ですから、そこでもしライブに行ったのに、最初から収録された映像が流れてたら楽しくないわけですよね。
お寿司屋さんも両方使い分けあると思います。さっと食べたいならテイクアウトのお寿司を買ったら一番簡単なんですね。そういう意味では玉寿司に来たら握る時間も待ってなきゃいけないです。でも、玉寿司に来たときの価値は「いらっしゃいませ」って活気をまず感じて、そして板前さんと会話をしながら、「こういうおいしいものありますよ」とか「何がお好きですか」とか、そういう会話の中で自分のためだけに握ってもらえるような、そういう価値がやはり玉寿司の中にあります。僕はそれをどんなにロボット化が進んでも生身の人が人に提供できる価値というのをぶれずに、むしろ深く磨いていこうと思っています。ロボットが巷に社会に増えれば増えるほど、生身の人間が提供する価値は、逆に僕はもっと貴重で光り輝くんじゃないかと思うので、今からそういうふうに意識しようと考えています。
由結:そうですね。「玉寿司大学」では寿司職人の方を養成する学校もありますけれども、そこでは基軸として大事に教えてらっしゃることはどんなことなんでしょうか。
中野里:今言ったような、恐らくもしかしたらロボットが握りを握り始める時代が来るかもしれないんですよね。寿司ロボットもありますから。そんなときに、玉寿司大学で一生懸命修行している今の若き社員さんたちは、目の前のお客様に心から喜んでいただきたいという「フォーユー 」
の気持ちで料理を提供していくと。この贅沢は時代が進めば進むほど僕は価値が高まっていくと思っているので、本当にただお寿司を早くポンポンと握るっていうことに固執するんじゃなくて、目の前のお客様に心から喜んでいただくために、自分はどんな技術でどんなおもてなしの心で、それを総合力を持って喜ばせるのと、それをずっと問い続けさせてますね。
無農薬の自然栽培米『ささしぐれ』とのコラボ
由結:表参道ヒルズにささしぐれさんというお店が入っているということなんですけれども、『奇跡のリンゴ』で有名な木村秋則さんが一緒に考えたコンセプトでやられているそうですね。
中野里:そうですね。木村さんはお米以外にもあらゆる農作物で農薬を一切使わないということに特化して木村式を開発してるんですけど、ご縁がありまして、木村秋則さんの手掛けられている、完全無農薬自然栽培米を扱ってくれないかということでした。
確かに食べたら非常においしい生命力の強さを感じるお米なんですが、しかし、これはまず値段が倍以上する。その上で生産量もなかなか増やせないので全店では扱える量は作れないと。「難しいな、どうしよう 」
って思ってたときに、またこれも私不思議なご縁で、タイミング良く表参道ヒルズからの出店依頼がありまして、例えば表参道にいらっしゃるお客様の層であれば、美容や健康など非常にアンテナが高い方たち多いですし、このお米の値段が倍以上しても価値を感じていただけるんじゃないだろうかと思いました。
それで、「よし、じゃあ使います」と言ったんですけど、それでも農家の方たちが躊躇してるわけですね。困ったなと思いました。なんで躊躇してるかって言ったら、突然、私たちが1年かけて生産しても、「いや、もうやっぱり取引しないから」って言われたら、我々は生活破綻する。「信用できるんですか 」
って言われたわけです。
「じゃあ、わかりました 」
と。店名に『ささしぐれ 築地玉寿司』って、『ささしぐれ』をつけちゃったんです。ささしぐれっていうのはお米の名前で、ささにしきの親米をささしぐれというんです。そのささしぐれというお米の名前を店名の上にもう冠のようにつけているってことは、もうささしぐれを使わざるを得ない状況で、僕はもう逃げ道ないですよね。僕は自分でもうやりますからと言って、それで生産農家さんが本気になってくれて、あの店の使用量も業務用ですからまあまあありますから、それで合うような生産体制を整えてくれたというお話です。
由結:いや~すごいお話ですね。やはり情熱というものは伝わるということなんですね。
中野里:そうですね。信頼してもらえた、覚悟を感じてもらえたと思います。
おもてなしの心を大事に
由結:これから先、新しい時代に突入するにあたりまして、今までの経営と今後の経営に関して、中野里社長のお考えを教えていただけますでしょうか。
中野里:はい。今までの経営というのは、もちろん職人さんがいるお寿司屋さんとして。その中で時代は、コンビニもどんどんおいしいものを出しますし、回転寿司もどんどん進化していきます。どうしたって我々はコンビニエンスストアや回転寿司ほど効率良くは出せないんですよね。では、「効率的じゃないことの価値はなんなのか」
っていうところに注目したときに、最後に行きつくところはおもてなしの心だなと。
由結:なるほど。さらに、もう一点お聞きしたいのが内装についてです。各店舗の内装が素晴らしいなと思います。実は、社長のご経験やアイデアも加わっているそうですね?
中野里:そうですね。私がアメリカに行ったときに、この一点だけ学べただけでも、全アメリカ留学費用の元をとったなって思えた教えがあります。それは「自然のマテリアル、いわゆる素材を上手に使ったお店は長生きする傾向がある。人工的な素材を使ったお店は格好いいんだけれども10年の経営で見ると陳腐化しやすいんだ。だから長く愛されるんだったら上手に自然の素材を使ったお店を作ったほうがいいんだ」ということ。何気なく教授が言った一言だったんですけど、ものすごく衝撃が走りまして、確かに言われてみたらそうだなと思いました。
日本に戻ってきて、じゃあ自分が手掛けるお店はスタイリッシュで格好いいではなく、オーソドックスかもしれないけれども、木とか竹とか緑とか石とか、そういったもので作って行こうと思いました。先代は結構先鋭的な方で、鏡とかガラスとか結構好きだったんですが、自然のマテリアルじゃないんですよね。だから僕の代になってから、ガラッと店のテイストは変わっていったんですけども、でも今思うとおかげさまで10年経っても20年経ってもやっぱり確かにその通りで、自然の素材を使ったお店は陳腐化しないですね。
由結:いや~素晴らしい教えですね。学んできてすぐに実践された、と。
中野里:そうですね。まあ、1店舗目は少しステンレスの、ニューヨークなどを見てきてかっこいいなと思っちゃって、そんなテイストも入れたんです。27歳のときに手掛けた店はそんなテイストでつくりましたら、やはり10年でなくなりました(笑)。
由結:まあ~そうですか。実証してしまったという感じなんですね。
中野里:はい。実証してしまったんです(笑)。
リスナーへのメッセージ
由結:なるほど。いやー感動しました。先見の明があり、学んできたことをどんどん形にしてらっしゃる中野里社長ですので、今後の展開がますます楽しみです!最後にリスナーの方に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
中野里:はい。もう来年で100年企業になりまして、このコロナ禍ですから飲食店経営している私も決して楽ではないんですけど、でもやっぱり僕は自分たちの存在する価値、この社会に築地玉寿司という寿司屋が存在する価値はどこにあるのかっていう問いを社員にも投げかけたし自分自身も投げかけて、それで一つの答えを作っていったんです。この作業はとてもよかったです。このコロナ禍で、例えば旅行、あるいはイベント業も非常に厳しいということ聞きますけど、もし厳しい状況、あおりを受けてる方がいたら、「自分の事業の本質はどこにあるのか」という問いを一度深くされると、見えるものがあるかなと思いますね。
由結:なるほど。こういうときだからこそ、本質なんですね。
中野里:本質です。だから僕はあえて新たな新事業をやらないできています。
由結:素敵なメッセージをありがとうございます。この築地玉寿司さんから全店共通お食事券3000円分を、なんと10名様にプレゼントしてくださるということですので、ぜひご希望の方はウェブ上で『銀座ロイヤルサロン』で検索をなさっていただき、お問い合わせフォームより、「築地玉寿司全店共通お食事券希望」と書いてお送りください。9月26日締め切りです。当選の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。
それでは、2週にわたりまして、素敵なお話ありがとうございました。3週目もありまして、今度は声診断の回でご登場いただきたいと思っております。それでは、本当にありがとうございました。
中野里:ありがとうございました。
銀座ロイヤルサロン3週目
声診断コーナー
由結:さあ、それでは本日は声解析・声診断コーナーです。クォンタムヴォイスアカデミー稲井英人学長が担当するコーナー。これまでに25000人以上の臨床データのある声診断ソフトにより、ゲストの方の声の波形を読み取り、その方の個性と能力をひも解いていきます。それでは、稲井学長、よろしくお願いいたします。
稲井:はい。
由結:そして、本日のゲストは、株式会社玉寿司 代表取締役 中野里陽平さんです。よろしくお願いいたします。
中野里:はい。よろしくお願いします。
稲井:よろしくお願いします。
中野里:お願いします。
稲井:はい。さあ、中野里社長、やはり腹が据わってる。お話ずっとお聞きしましても、なかなかだなと思いましたね。どのような波形が出るのは非常に楽しみです。普通にしゃべっていただきまして、声を録らせていただきます。12色の色と波形で出るんですが、個性・特徴、人に与えてる影響とか、能力・才能なんかも出てきます。
中野里:ドキドキします。
稲井:さあ、12秒ずっと録りますので、しゃべっていただけたらと思います。今日の一通りしゃべっていただきましたが、ご感想などをお聞かせ願います。いかがでしたか。
中野里:はい。いや、もう僕自身が楽しくこのラジオの出演楽しんでるなと思いました。やっぱりパーソナリティの方に質問を的確にしていただいてるんで、改めて質問によって、自分が普段言葉にしていない部分の思いなんかも自分が答えることで言葉にして、自分はこんなこと考えるなっていうことを再確認できました。ありがとうございます。
稲井:ありがとうございます。中野里社長は様々なご講演もされてますが、ご自分の中でその前にご準備とかテーマに合わせていろいろされると思うんですが、一番心掛けてることっていうのは一体どういうことですかね。
中野里:自分の実体験から来ることをきちっと話すということですよね。受け売りの知識とかを話すんではなくて、あくまでの私どもはリアルに闘っている経営者の一人ですので、自分の経験から出た、あるいは気付いたことをお伝えするように心がけています。
レッド・コーラルレッド・オレンジ-現場型/人と調和を図るグリーン
稲井:なるほど。ありがとうございます。このソフトは、人のしゃべり声をドレミファソラシドに置き換えるんですね。この波形っていうのはどういうものかといいますと、実は見る・聞く・感じるという動きです。社長の場合は、さっきおっしゃった通り、“感じる”。
やはり現場型ですね。経験・体験を伝えるっておっしゃいましたね。ここの部分が波形がやっぱり強いので、そのご自分の実体験を元にやる方なんですね。
例えば、ちょっと波形を大きくしますと、
これがブルーの部分が見る・分析・解析。研究したり先見力とか直観力を使って先を読むとか考える方はここが出ます。このグリーンの部分が出る方はコミュニケーションとか人とのつながり、そういったものを重視をするんですね。このレッドの部分が、大体の波形がやっぱり強いですので、やはり現場で経験から学んでいくという方のようですね。
こんなふうに言われていかがですか、ご自分では。
中野里:そうなんですね。いや、意識はしてなかったんですけども、でも確かに自分がいろいろ話すことはやっぱり自分が感じたことって、僕は必ず日記に書くようにもしてるんですけど、そこにこそ真実あると思ってますので、確かにそれがまさか声に出るんだっていう、ちょっとびっくりですけど。
ご先祖様に守られて―ヴァイオレット
稲井:はい。今のお声録らせていただいたんですが、今度はヴァイオレットが出てきています。
紫の部分ですね。これは何かと言いますと、ちょっと精神面の話になりますけども、天とつながるというか、本来の自分とつながるというか、もっと言うと大いなるものから守られてるというか、そういう感覚を実はお持ちみたいです。だからご自身の人生の中で、ピンチのときにバトンをもらう人っていうのは、私の感覚ですが、ある意味選ばれし人だと思います。このヴァイオレットというのは、実は物事を解決に導く声なんです。
その前のこのネイビーブルーって言うんですけども、第三の目、ここの部分なんです。これは直観力、この第三の目で物事を見抜く。正しい・間違い。真実を見るっていうところなんですが、ヴァイオレットというのはそれすら超えていく。つまり正しい・間違いだっていうので終わってしまうと対立を生みますよね。正しいも間違いも、それぞれの側から見た判断ですから、それを超えていくという領域がこのヴァイオレットなんですよ。今のお話の中ではこのヴァイオレットが出てきましたね。だからやっぱり今の会社をある意味次のステージに導き上げるような、そういうお役割かもしれません。
中野里:私が引き継ぐときに、父親の3代目から「お前、後継者にならないか」と言われたその瞬間っていうのは、非常にどっちかっていうと順調なときというよりは逆境だったわけですよね。でもそれを「はい。受けます」って言った瞬間があるんです。その瞬間に丹田からワッとエネルギーが上がってきて、第四走者としてこれから駅伝走るというときに、第一走者から第三走者までずっと命がけで走ってきて、「次頼むよ」ってみんなのその過去に携わってくれた先代、先々代含めて関わってきた人たちがみんな応援してくれてるような感覚に襲われたんですよね。これは非常に不思議な感覚で、今でもこれはっきり覚えてるんですけど、だからなんか先祖といいますか、何か大きなもので応援はしてくれてるんだろうなとは思います。
ミッション・使命のゴールド
稲井:はい。まさしくそれですね。
一番最後の声は、今度は黄色、ゴールドが出てきましたね。やはり自分がやる。もう自分に集中したとき、こういう声になります。とくにゴールドは自分のミッション・使命の部分を表します。もう軸というか、コマも軸がしっかりしないと回らないじゃないですか。ある意味でご自身の会社の次のステージの軸となったということですね。それと同時に、このグリーンの部分も非常に今までよりも一番強く出てきましたよね。これは人とのつながり、コミュニケーション、一体感を表しています。
要するにしゃべったときにこの体の反応、体の部位、場所とも対応してまして、オレンジ色が丹田、イエローが胃のあたり、グリーンが胸のあたり。実は声でこの体の中の響きが変わってくるんです。ということは、朝礼もされてるみたいですが、従業員の方々に向かってつながりを求めていくときは、このグリーン、胸のあたりの声でしゃべればいいんです。恐らく無意識にやってます。
そして元気、パワーのときはこのレッド。あと丹田はオレンジの部分なんですが、そこの部分のときはワッとわき上がる。もし会社でもいろんなトラブルがあったときに叱る場合はこのレッドが出てくるんですけど、その声っていうのは、人間の声は楽器ですから、その声、つまり演奏によって従業員さんにどういう響きで届くかというのがこの色と波形でわかるんです。
中野里:なるほど。人間の体は楽器っていうのは、すごい、ハッと思いましたね。
稲井:はい。だから何を伝えてるか、何をしゃべったかが重要ではなくて、何が伝わったのか。つまり伝わり方がこれでわかるんですね。ご講演の模様を声録ってみたいですね。本当に。
由結:本当にそうですね。先週と先々週とお話させていただいて、社長の前に座らせていただくとスッと軸が整う感じがするんです。スッと胸のあたりがつながったような感じなどいろんな感覚を覚えたんですが、今日の診断でその理由がよくわかりました。何より元気を頂きました。ありがとうございます。
中野里:ありがとうございます。
稲井:いやー素晴らしい。いろいろな声の響きができる方ですね。非常に多才な方です。
由結:そして、ご先祖様に守られてらっしゃるんですね、
中野里:そうですね。ありがたいです。
稲井:素晴らしいです。いい波形を録らせていただきました。ありがとうございました。
由結:ありがとうございました。
中野里:ありがとうございました。
由結:3週にわたりまして、中野里社長にご登場いただきました。そして、視聴者プレゼントということで、築地玉寿司さんより全店共通お食事券3000円分をなんと10名様にプレゼントさせていただきます。ウェブ上で『銀座ロイヤルサロン』で検索。お問い合わせフォームより『築地玉寿司全店共通お食事券希望』と書いてお送りください。9月26日締め切りです。当選の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。
さあ、それでは社長、3週にわたりまして、本当にありがとうございました。
中野里:はい。ありがとうございました。
稲井:ありがとうございました。
中野里陽平さんのプロフィール |
株式会社玉寿司 代表取締役社長(四代目) 入社翌年の平成12年5月 太老樹築地店オープン。既存店にはない新コンセプトのもと設計された店づくりが話題に。多くのメディアに取り上げられる。 |